中国の高齢化が進んでいます。中国は、1979年から人口抑制を目的とした「一人っ子政策」を導入、世界最大の人口を抱える国としてはやむを得ない選択であったと思われます。原因ははっきりしませんが、地球温暖化などにより、昨今、気候変動が激しくなっており、将来の食料供給に不安があるのが世界の食料事情です。現に、今年は、米国、ロシア、ウクライナ、ブラジル、インドなどの国々で相次ぎ農作物が不作となっており、穀物相場が急騰しています。中国が人口抑制的な政策をうたなかったのならば、世界の食料事情は既に切迫していたと推測されます。
しかし、経済の活性化の点では、やはり若い人々が多い方がプラスですが、インドのように人口抑制に失敗した場合、マイナスに作用するケースもあります。中国では、国民全体の所得に増加傾向がみられる一方で、インドでは億人単位での貧困層が依然として存在しており、ひどい労働環境からススギの工場での暴動が起こった一因があるといえます。今年、インドは干ばつによる農作物の不作が報じられており、不測の事態が発生する恐れもあります。上図、国際連合による中位年齢の2050年までの推計を示しています。中国は2020年当たりで米国と逆転する一方で、インドは中位年齢がかなり低い水準にとどまることが予測されています。結果、2020年当たりにインドが世界最大の人口となり、2050年頃には17億人程度まで増加します。若い人々が多いことで、経済が活性化するよりは、むしろ貧困層が増大し、社会が不安定化する可能性も十分にあると考えています。最悪のケースは、インドで飢餓が発生し、大量の難民が周辺国へと流れ込む事態でしょう。インドの人口問題は、世界にとってのリスク要因となるかもしれません。
こうした中で、中国の若年人口の減少に関する記事が、2012年8月22日付日本経済新聞夕刊に掲載されていました。住居費や教育費の高騰から「一人っ子政策」からさらに進んだ子供をつくらない共稼ぎの夫婦「ディンクス」が増えており、若年人口の減少に拍車を掛けているとようです。記事の題目は『中国、しぼむ若年人口。子供いない共稼ぎ夫婦、都市部で急増』です。
『中国国家統計局が今秋の指導部交代を前に人口状況の報告書をまとめ、10年前と比較した。0歳〜14歳の「年少人口」は10年前から6610万人減り、全人口に占める割合は10年前の22.4%から2011年末に16.5%に急低下。65歳以上の「老年人口」は2911万人増えた。中国は人口抑制を狙い1979年から一組の夫婦につき子ども一人に限る「一人っ子政策」を導入しており若年人口の減少は織り込み済み。ただ65歳以上の人口の比率9.1%は日本と比べればなお低いものの、少子化は予想以上のペースで進んでいる。原因はあえて子どもをつくらない夫婦が増えていることだ』
中国の家庭当たりの平均人数は、1982年に4.41人であったものが、11年には3.02人まで減少、都市部では3人を下回っているそうです。11年は都市人口が農村人口を上回っており、この傾向に拍車がかかる可能性があります。右図は、国連発表の中国における年齢別の将来人口の中位推計を示しています。この推計によれば、中国の人口のピークは2030年当たりの14億弱の水準で、15歳以上65歳未満の人口の比率が最も高くなるのが、2010年となっています。一方で、65歳以上の人口比率は、2020年12.0%、2030年16.5%、2040年23.3%、2050年25.6%と上昇、2010年時点の日本の23.0%を上回ることとなります。中国の高齢化率の上昇ペースは、日本よりも速いのではという指摘があります。実際には、日本の高齢化率は、1980年に9.1%であったものが、30年たった2010年に23.0%となっています。実は、日本の方が中国よりも高齢化率の上昇ペースが速いのです。これは驚きの事実です。中国の人口は、政策的に歪められたという要因がありますが、日本にはそのような事実はありません。人口動態には都市化、経済動向、文化など様々な要素が影響を与えます。日本の高齢化率の上昇は、他国にみられないペースであり、これが潜在成長率の低下を反映したものなのかは不明ですが、将来の財政にとってはマイナス要因であることは確かです。
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