2012年9月24日月曜日

米国の軍事費と航空・防衛産業の事業統合

 オバマ大統領が当選した場合、米国の国防費は今後一層削減されることが予想されます。一方で、ロムニー氏が大統領となった場合、「強いアメリカ」を訴えていることから、国防費の削減は進まず、やっとのことで実現した国民皆保険の制度が見直される可能性が高まります。住宅バブル、そして2つの戦争というブッシュ前政権が起こした災いの火消しのため、財政赤字が膨れ上がった米国は、「世界の警察」であり続ける力は既になく、今後は同盟国などに相応の負担を求めてくることが考えられます。普天間の問題が長引いており、財政的な負担もこれ以上求めることができない日本に対して、米国はいつまでもついてきてくれるでしょうか。速やかな問題解決が、今の日本の政治に求められているのです。
 しかし、2012年9月20日朝日新聞朝刊に世界の軍事費に関する記事が掲載されていました。その中に、主要国の軍事費を比較するグラフが掲載されていました。中国の軍事費が増えたことが最近では話題になっており、空母の建造まで着手した同国は、米国にとって最大のライバル国になろうとしています。もっとも、現時点では、米国の国防費は、他を圧倒しており、中国の10倍の規模があります。しかし、中国の軍事費はよくわからない不明な部分があり、かつ意図的に自国通貨安へと導くという政策があります。その結果、購買力平価でみた軍事費は、さすがに今の米国には及ばないものの、数年後には拮抗する可能性は十分にあります。特に、米国政府の債務残高が、名目GDPとほぼ同水準となっていることから、大幅に増額することは到底考えられず、同じ比率がかなり低い中国は、軍事費を大幅に増やす余地があるのは事実です。

 軍事費に関連して、航空・防衛産業の経営統合に関する記事が、2012年9月13日付日本経済新聞夕刊に掲載されていましたので紹介します。航空・防衛産業といえば、統合と吸収の歴史です。現在の米ボーイング社も、マクドネル・ダグラス社を吸収したもので、マクドネル・ダグラスそのものもマクドネル・エアクラフトとダグラス・エアクラフトの統合の結果生まれた会社です。記事の題目は『欧州のBAEとEADS、合併交渉。航空・防衛、最大手めざす。軍事費削減に対応』です。以下引用文。

 『【ロンドン=松崎雄典】欧州の防衛最大手のBAEシステムズと旅客機最大手のEADSは12日、合併交渉を進めていると発表した。政治判断も介在しかねず交渉の行方には予断を許さないが、実現すれば航空・防衛の世界最大手、米ボーイングを上回る売上高になる。欧米の防衛費削減に対応しコスト競争力を高める。
 BAEシステムズは軍用機など防衛で米ロッキード・マーチンに次ぐ規模。EADS傘下のエアバスは旅客機でボーイングと並ぶ最大手だ。両社合計の売上高(2011年ベース)は約990億ドル(約7兆7千億円)と、ボーイングの687億ドルを大きく上回る。
 交渉は途中だが、米国や欧州各国、サウジアラビアなど防衛部門の顧客となっている各国の政府とも、合併の影響などについて協議を始めた』
 オバマ政権も軍事費を削減、欧州諸国は債務危機でそれどころではない状況です。今後は、一層の需要減少が予想される中での防衛産業から強い要求があったのではないかと思われます。ならば、米国でもボーイングとロッキード・マーチンが合併すればいいのではという考えが浮かびます。これをすると、米国で戦闘機を製造するメーカーが一社になってしまうことから、リスクが大きいと思われます。因みに、日本の次期支援戦闘機に決定したのはF-35で、ロッキード・マーチンが製造元です。そして、史上最強といわれるF-22もロッキード・マーチンが製造元のようです。海軍が導入を進めているF/A-18はボーイングが製造元です。ボーイングとロッキード・マーチンが統合すれば、F-22、F-35、そしてF/A-18の製造が一社により独占されることとなります。ややリスク大という印象を受けるところです。

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