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2012年9月7日金曜日

ヤマ場を向ける欧州債務危機と期待されるECBの役割

 毎月催されている欧州中央銀行の理事会で、南欧諸国の国債を無制限で購入することが大筋で合意されました。これを受けて、欧米各国の株式相場が大きく上昇、特に、2012年9月6日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均が続伸し、約4年8ヵ月ぶりにリーマン・ショック後の高値を更新しました。このダウ平均の上昇の背景には、8月の非農業部門の民間雇用者数が前月比20万1,000人増加、予想を上回る内容であったことがあります。これまで足を引っ張っていた雇用関連の指数が持ち直しつつあるものと判断もあり、投資心理が徐々に改善しているようです。
 右図は、6日から7日にかけての世界の金融市場の変化についてのフローチャートで示したものです。ECBの発表を受けて、市場がそれを好感し、南欧諸国の国債利回りが低下(価格は上昇)するとともに、欧米の株式相場が大幅に上昇しました。一方で、これまで、買われ過ぎとも言われていた米国やドイツなど格付けの高い国債が売られ、利回りが上昇(価格は下落)する状況となりました。翌日のアジアの株式市場は、ユーロ、米ドル高、そして欧米の株式市場の高騰を好感して、大きく価格を上げるという相場となり、特に、8月、9月の日経平均株価の下落幅は大きく、株式市場は錯綜していたところにやっと底値がみえてきた感が出てきました。やはり、米国は着実に回復している中で、ポイントとなるのは、欧州の債務危機の回避に向けたスキームがどのように合意できるかであり、この問題の早期解決こそが、今後の世界経済を決めるといっても過言ではないでしょう。

 とろこが、このブログの書いている最中に、米雇用統計が発表された旨のNHK報道がありました。2012年9月7日付日経新聞夕刊では、雇用統計が予想を上回ったという内容だったのですが、NHKの午後9時のニュースでは、思わしくない米雇用統計が発表されたというものです。同報道によると、8月の米国の失業率は8.1%と前月と比べて0.2ポイントの改善にとどまったこと、景気の動向を示す重要な指標である非農業部門の就業者数は9万6,000人となり、市場予測の13万人程度の市場予測を大きく下回ったとのことです。そして、来週にも開かれる米FRBのFOMC(公開市場委員会)で追加の金融緩和が決定されるのではないかとの思惑が出てきており、2012年9月7日午後9時50分時点で78円台前半へと円高、ドル安方向へと一挙に動きました。そして、記事と報道の内容をチェックしていると、日経新聞夕刊の雇用統計は、米雇用サービス会社オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)のものであり、米労働省発表のデータでないことが判明しました。同種の雇用統計なのに、全く違う結果となっていることに驚きを感じるとともに、これに市場関係者が確実に反応しているという事実は、統計データとは一体何であるかという疑問を持ってしまう結果です。

 ECBの理事会に関する記事が、2012年9月7日付読売新聞朝刊に掲載されてしましたので紹介します。記事の題目は『ECB、危機回避へ山場。金利据え置き、国債購入策も発表』です。以下引用文。
 『欧州中央銀行(ECB)は6日の理事会で、ユーロ17カ国に適用する政策金利を過去最低の0.75%に据え置くことを決めた。一方、理事会後の記者会見で、ドラギ総裁は新たな国債購入策を発表する見込みで、ユーロ圏はスペイン危機を回避できるか、大きな山場を迎えている。
 ECBは2010年5月以降、市場からギリシャなどの国債を買い入れてきた。8月末時点の保有残高は約2085億ユーロ(20兆6000億円)に上る。
 しかし、ユーロ圏の一部の政府や中央銀行からは、①通貨を無制限に刷って国債を購入すれば、ユーロの信認を損ねる②保有国債が債務不履行に陥ればECBの財務が痛み、ユーロの信頼が揺らぐ③購入対象国の財政再建努力が緩む、などの批判を受け、3月半ば以降は購入を休止している。
 ECBが新たな購入策を発表するのは、購入に一定の条件を設けることにより、購入対象国にも自助努力を求めるとともにECBのリスクを減らし、こうした批判をかわす狙いがある。購入再開に反対しているドイツ連邦銀行(中央銀行)に理解を求めたい考えだ』

 私は、ECBで購入が決定したものと思い込み、このブログを作成しました。しかし、新しい情報、詳しい記事の内容のチェックをしているうちに、買い入れ策を発表しただけで、まだ、決定事項ではないということが分かりました。よく「市場が判断する」といった類いの言葉が、金融市場の分析では使われます。上述の通り、雇用統計の一つをとっても全く違う結果となるということが、よく理解できるとともに、相場の結果が全く違うことになる可能性は十分にあります。リアルタイムで市場動向に関して書くことは難しい作業だと感じました。因に、上図は、上記の読売新聞記事に掲載された図表を元に作成した、スペイン救済のフローチャートです。これは、決定事項ではなく、ドイツ政府やドイツ連邦銀行の強い反対を受けて、頓挫する可能性が十分にあります。今後のECB、スペイン、ドイツの動向に注視したいと思います。

2012年8月5日日曜日

ECBによる国債買取見送りに失望、日経平均とNYダウの動き

 8月2日、ECB(欧州中央銀行)の理事会で、南欧諸国の国債買い取りについて即時実施が見送られる形となり、それに反応してか、日本や米国の株式市場が下落しました。会見では、ドラギECB総裁は、EFSF(欧州金融安定化基金)やESM(欧州安定メカニズム)などを使って国債の買い取りを実施するべきだと指摘しています。しかし、これが実施された場合、財政再建に向けた厳しい監視を受けることにつながることから、スペイン、イタリアなどの抵抗が強い一方で、資金を出す側であるドイツが難色を示しているとのことです。支援される側、支援する側の板挟みになる格好で、ECBが妥協、国債購入再開を含む新たな危機対応策を数週間以内に策定するという中途半端な決定となりました。この決定は、危機克服のためには「何でもする」という覚悟を表明していたドラギ総裁のメンツをつぶすものであり、欧州債務危機へのドイツ、南欧諸国の危機意識のなさを印象づける結果となりました。
 これを受けてか、8月2日のNYダウ工業株30種平均は、前日と比べて97ドル、0.74%下落しました。一方、翌日の8月3日の東京市場では、ダウ平均の下落を嫌気し、株価が軟調となり、日経平均株価が前日と比べて98.07円、1.13%下落しました。つまり、日経平均株価の方が、NYダウよりも下落率が大きいのです。そして、8月3日のNYダウは、前日比で217.29ドル、1.69%の大幅な上昇へと転じています。逆に米国の債券の利回りは、10年債で0.09ポイントの上昇で1.56%、30年債で同じく0.09ポイントの上昇で2.64%となり、債券相場は下落するという結果となりました。上図は、2012年4月以降の日経平均株価とNYダウの推移を示したものです。3月末と比べて、日経平均株価が15%下落しているのに対して、NYダウは6月前半を底に上昇、3月末とほぼ同水準にまで戻しているのが分かります。日本企業の収益も減少へと向かい、米企業も、今後は減収に向かうという懸念が出でおり、企業収益についてはどちらの同様の傾向を示しています。しかし、この株価の変動の差はいったい何なんでしょうか。
 ならば、ユーロ安に伴う米企業の収益悪化も考えられるところです。輸入では中国の依存が大きいものの、ヨーロッパ諸国は米国にとって最大の輸出市場です。また、長年の直接投資と進出企業も多いことから、投資リターンの減少も米企業収益に影響を与えている可能性はあります。そこで、ユーロの対円、対ドル相場をチェックしてみたのが右図です。ユーロ相場は、対円、対ドルでも同じように下落しています。円高というよりも、ユーロの独歩安というのが実情です。日本企業のユーロ安への対応が遅れている可能性があります。ユーロ安に対して抵抗力があるのが日産です。現地生産化が進み、部品の現地調達比率が高いことから、ユーロ安が与える同社の営業利益の減少はないそうです。これは、仏ルノーとの提携が大きいのでしょう。

 日本企業の国際化は、円高が定着する中でかなりの水準になったと思われます。しかし、ヨーロッパ諸国への依存が日本以上に高い米国企業はさほど影響を受けていない気がします。この状況から考えて、日本企業の国際化、現地化はまだまだなのかもしれませんね。スペイン、イタリアがギリシャのように駄々をこねて、ドイツが"NO"と言えば、ユーロの下落は必至です。政策金利も0.75%とまだ引き下げの余地があります。今回の数週間以内に準備するという合意が覆された場合、1ユーロ=80円台へと突入する可能性が市場関係者から示唆されています。日本企業にとって、ユーロ急落に備えた対策が急を要する課題となってきました。

2012年7月17日火曜日

ECB、政策金利の引き下げで進むユーロ安

私は、ユーロのMMFを少しばかり持っています。実は、外国為替の相場感、各国の金利の水準などを頭に常に入れておく必要性から、米ドル、カナダドル、英ポンド、豪ドル、ニュージーランドドルのMMFも保有しています。どの通貨もほぼ均等な割合で持っていることから、マイナス幅が大きい通貨は安く、そうでない通貨は高いということが、私のMMFのポートフォリオをみれば一目で理解できるようになっています。そした中で、ユーロのMMFのマイナス幅が大きくなるばかりで、やや打撃を受けているという印象を持っています。2012年7月16日午後8時47分現在(日本時間)で、ユーロの対円相場は、1ユーロ=96円32銭です。やや持ち直しているものの、一時は96円割れという事態も十分に予想されました。
 このユーロ安の進行は、ECB(欧州中央銀行)が、政策金利を0.25%引き下げ、過去最低の0.75%となったことを受けてのものです。同日、銀行の中央銀行に対する預け金の金利も引き下げられ、ゼロとなりました。しかし、英ポンド、米国、そして日本も金融緩和を拡大させており、欧州債務危機を背景としたユーロの独歩安という感は否めないところがあります。逆の意味で、今こそがユーロの投資のベストタイミングであるともいえますが、ユーロ相場が底割れする可能性も否定できないため、大きな投資は控えた方が望ましいと判断しています。私が想定している底割れの水準とは1ユーロ=90円であり、月に2度開かれる理事会で、ECBが政策金利の引き下げを継続的に行った場合、日本円との金利差の縮小から十分にあり得ると考えています。ユーロ諸国の物価水準が分かる詳細なデータがあれば、どの程度の水準でもってユーロ相場が底なのかは分かりますが、米国とは異なり、現時点では情報が極めて少なく、決定に至るには材料が少ないのが実情です。
右図は、対円ユーロ相場とECBの政策金利を推移を示しています。日本の政策金利はゼロを続けていることから、ECBの政策金利の上げ下げとユーロの相場は見事に一致しているのが図から読み取ることができます。2012年7月6日付日本経済新聞朝刊に、このECBの利下げに関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『欧州利下げ、最低の0.75%に、銀行の預け入れ0%、景気下支え』です。以下引用文。
『欧州中央銀行(ECB)は5日、政策金利である市場調節金利を0.25%引き下げ、過去最低の0.75%とすることを決めた。後退局面に入ったユーロ圏経済を下支えする。中国人民銀行や英中銀イングランド銀行も同日、金融緩和に踏み切った。世界経済の減速感が強まるなか、財政出動の余力は乏しく、低金利政策で景気のテコ入れを狙う。
【フランクフルト=赤川省吾】ECBのドラギ総裁は5日の理事会後の記者会見で、利下げについて「景気悪化のリスクが現実になったため」と説明。欧州景気を下支えする考えを示した。「適時、果断に行動する」とも語り、追加緩和に含みを持たせた』
仕方のない決断ではあると思います。しかし、日本の経験からいって、金融政策は引き上げ時に効果があって、引き下げ時には余り効果はありません。利下げは、景気浮揚の必要条件であっても、十分条件ではないからです。銀行の預け金の金利(預金ファシリティー金利)をゼロにしたことから、むしろ銀行救済を目的とした金融緩和ともとらえることができます。もっとも、互いに信頼がない状況では、銀行はインターバンク市場で資金を融通しません。同金利をゼロにしたところ、銀行は喜んで中央銀行に資金を預けると思います。もっとも、これは、ECBによる融資拡大の原資にもなるため、スペイン、イタリアなど南欧諸国への資金融通にはプラスに作用することになります。
 ドイツの毅然とした財政政策には感嘆するところがありますが、経済主体の期待心理が冷え込んでいる中で、景気浮揚にもっとも効果があるのは財政支出であって、金融政策ではありません。右図は、少し古いかもしれませんが、IS-LM曲線による説明です。縦軸を利子率r、横軸を所得Yとした場合、金融緩和(LM曲線の下方へのシフト)より財政支出の拡大(IS曲線の上方へのシフト)の方が、所得Yの増加幅が大きいことを図示しています。特に、国債利回りが低下している時こそがチャンスであり、ドイツの取り得る政策としては、もちろん適切なものへと投資されていることが前提となりますが、より積極的な財政政策をした方が妥当ではないかと感じています。失業率が低水準である中では、雇用情勢が逼迫しているかもしれませんが、南欧諸国からの労働者の受け入れを積極的に進めれば、それも可能です。
 日本のように、不要な道路や橋に多額の投資をする無節操な財政支出はせず、ここは再生可能エネルギーに限って、投資は抑制しないという施策を打つことはできます。ドイツは、既に原発の廃炉を決定しています。隣国の原子力大国であるフランスから電力を購入する方法もありますが、どうしても新たなエネルギー源が必要となってきています。ならば、この分野での公共事業にはある程度の賛同を得られるはずであり、将来の持続可能な成長にもつながることから市場による否定的な行動も限られるのではないかと考えています。ここはドイツの奮起に期待したいところです。