8月2日、ECB(欧州中央銀行)の理事会で、南欧諸国の国債買い取りについて即時実施が見送られる形となり、それに反応してか、日本や米国の株式市場が下落しました。会見では、ドラギECB総裁は、EFSF(欧州金融安定化基金)やESM(欧州安定メカニズム)などを使って国債の買い取りを実施するべきだと指摘しています。しかし、これが実施された場合、財政再建に向けた厳しい監視を受けることにつながることから、スペイン、イタリアなどの抵抗が強い一方で、資金を出す側であるドイツが難色を示しているとのことです。支援される側、支援する側の板挟みになる格好で、ECBが妥協、国債購入再開を含む新たな危機対応策を数週間以内に策定するという中途半端な決定となりました。この決定は、危機克服のためには「何でもする」という覚悟を表明していたドラギ総裁のメンツをつぶすものであり、欧州債務危機へのドイツ、南欧諸国の危機意識のなさを印象づける結果となりました。
これを受けてか、8月2日のNYダウ工業株30種平均は、前日と比べて97ドル、0.74%下落しました。一方、翌日の8月3日の東京市場では、ダウ平均の下落を嫌気し、株価が軟調となり、日経平均株価が前日と比べて98.07円、1.13%下落しました。つまり、日経平均株価の方が、NYダウよりも下落率が大きいのです。そして、8月3日のNYダウは、前日比で217.29ドル、1.69%の大幅な上昇へと転じています。逆に米国の債券の利回りは、10年債で0.09ポイントの上昇で1.56%、30年債で同じく0.09ポイントの上昇で2.64%となり、債券相場は下落するという結果となりました。上図は、2012年4月以降の日経平均株価とNYダウの推移を示したものです。3月末と比べて、日経平均株価が15%下落しているのに対して、NYダウは6月前半を底に上昇、3月末とほぼ同水準にまで戻しているのが分かります。日本企業の収益も減少へと向かい、米企業も、今後は減収に向かうという懸念が出でおり、企業収益についてはどちらの同様の傾向を示しています。しかし、この株価の変動の差はいったい何なんでしょうか。
ならば、ユーロ安に伴う米企業の収益悪化も考えられるところです。輸入では中国の依存が大きいものの、ヨーロッパ諸国は米国にとって最大の輸出市場です。また、長年の直接投資と進出企業も多いことから、投資リターンの減少も米企業収益に影響を与えている可能性はあります。そこで、ユーロの対円、対ドル相場をチェックしてみたのが右図です。ユーロ相場は、対円、対ドルでも同じように下落しています。円高というよりも、ユーロの独歩安というのが実情です。日本企業のユーロ安への対応が遅れている可能性があります。ユーロ安に対して抵抗力があるのが日産です。現地生産化が進み、部品の現地調達比率が高いことから、ユーロ安が与える同社の営業利益の減少はないそうです。これは、仏ルノーとの提携が大きいのでしょう。
日本企業の国際化は、円高が定着する中でかなりの水準になったと思われます。しかし、ヨーロッパ諸国への依存が日本以上に高い米国企業はさほど影響を受けていない気がします。この状況から考えて、日本企業の国際化、現地化はまだまだなのかもしれませんね。スペイン、イタリアがギリシャのように駄々をこねて、ドイツが"NO"と言えば、ユーロの下落は必至です。政策金利も0.75%とまだ引き下げの余地があります。今回の数週間以内に準備するという合意が覆された場合、1ユーロ=80円台へと突入する可能性が市場関係者から示唆されています。日本企業にとって、ユーロ急落に備えた対策が急を要する課題となってきました。
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