今日は、経常収支の赤字をさらに拡大させる要因として考えられる、インドの電力事情と農業生産について言及します。まずは、電力です。2012年8月2日付読売新聞朝刊の記事を読むまで知らなかったのですが、7月30、31日にインドで世界最大規模の停電が発生したそうです。記事の題目は『インド大停電、復旧。発電能力不足、再発の可能性も』です。以下引用文。
『【バンコク=新居益】7月30、31日に世界最大規模とされる停電が発生したインド北部は1日、電力供給が回復した。今回の停電で、発電能力不足などの長年の課題が解決していないことを露呈した。再発の可能性も排除できず、脆弱な電力事情は、新興国の代表格とされるインド経済の成長に暗い影を落とすことになりそうだ。(中略)他の新興国と同様に、インドの電力事情は厳しく、電力の需要に供給が追いついていないという実態があり、この背景には同国の発電の約57%を占める石炭による火力発電に問題があるようです。注目すべきは、国内での発電設備は着実に整備されているものの、国内産石炭の増産がそれに追いついていないということです。ならば、海外から石炭の輸入ということになりますが、石炭の輸入は、経常収支の赤字をさらに拡大されることに加え、さらなるインド・ルピー安を生み、国内のインフレを加速させる懸念があります。ススギの工場での暴動も物価上昇に賃上げが追いついていないことが原因の一つに挙げられています。インド政府としても、これ以上の通貨安は避けたいところです。
政府は調査委員会を設置して原因を究明する方針だが、北部の特定の州が割り当て以上の電力を取り込んだため、電力不足に陥った北部が東部の電力システムから、東部が北東部のシステムから無理に電力を取り込もうとし、連鎖的にダウンしたのが直接の原因との見方が有力だ。
ただ、背景には、経済成長に伴って増大する需要に、供給力の増加が一向に追いつかないという根本的な問題がある。電力省によると、電力需要に対する供給不足は、2003年度の7.1%から09年度の10.1%へと悪化している』
次は、農業です。現在、米国の干ばつが問題となっています。トウモロコシ、大豆の生産が壊滅的な打撃を受け、世界的な供給不足が発生する懸念が出ています。トウモロコシ、大豆相場は既に上昇しており、これに引っ張られる形で穀物相場全般が高騰する可能性もあり、予断を許さない状況になっています。これに加えて、インドで干ばつが発生し、食糧生産が減少することが予想されています。2012年8月2日付朝日新聞朝刊に『インド小雨、農業に打撃。穀物価格に影響の可能性も』の題目の記事が掲載されていましたので紹介します。以下引用文。
『インドで小雨が続き、深刻な干ばつに陥る恐れが出てきた。北部の穀倉地帯などが不作になれば国内の食品価格が急騰しかねない。米国でも干ばつが広がる中、世界的な食糧インフレが加速する可能性もある。インドにおける干ばつは、農産物の輸出制限又は輸入拡大をもたらすことを意味し、経常収支の赤字につながります。特に、国際価格高騰の中での輸入拡大は、事態をさらに悪化させます。食品価格を中心に物価の上昇をもたらし、インフレ率を加速させることとなを意味します。そうでなくても、労働争議に悩まされている同国にとって、今年は、工場での生産活動どころではないのが実情でしょう。
インドの雨期は6〜9月。地方によっては例年より3〜5割も降水量が減り、コメや豆類など初冬に収穫する農産物の作付けが減っている。パワル農業省は「現時点で(過去40年間で最悪の干ばつだった)2009年より状況は悪い」と発言。野村インドは、今年度の穀物生産が前年度より8%減ると予測する。インドが農産物輸出を制限したり輸入を増やしたりすれば、国際価格を押し上げるおそれがある』
安定した電力と食糧の供給は、経済成長にとっての基本的な要素です。わが国も電力供給の将来ビジョンが描けないばかりか、食料自給率は先進国の中で最低の40%程度です。しかし、インドほど厳しくないのは、わが国は通貨高に悩まされていることです。購買力を高める自国通貨高は、食料やエネルギーの大半を海外に依存する日本とって、決してマイナスではないことが理解できます。
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