2012年8月25日土曜日

アップルの勝利、サムスンの敗北

 泥沼の様相を呈していたアップルとサムソン電子の訴訟に判決が出ました。結果は、アップルの勝利で、サムスン電子の敗北となり、サムスン電子はアップルに対して約10億5千万ドルの賠償金を支払うことを命じられました。アップルとグーグルの代理戦争といわれた、一連の訴訟合戦はアップル側に有利になったともいえますが、世界各国で行われた判決が異なること、仮に販売差し止めとなった場合でも既に販売されている旧型モデルに限定されることから、影響は限られるものと考えています。日本でも31日にも評決され、日本での結果が待ち望まれるところです。因みに、韓国の裁判所は、アップルとサムスン電子双方が相互の特許は侵害し、一部製品の販売差し止めという評決となりました。同様の裁判は、世界10カ国で約50件も行われており、「特許をめぐる史上最大の裁判」ともいわれています。
 一連の裁判で最も注目されるのは、やはり米国での結果です。この裁判の評決に関する記事が2012年8月25日付日本経済新聞夕刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『サムスンが特許侵害、地裁陪審評決、830億円賠償命令。アップル米訴訟』です。以下引用文。

 『【シリコンバレー=岡田信行】米アップルと韓国サムスン電子がスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)「iPhone(アイフォーン)」などの特許やデザインを巡って争っている訴訟で、米カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所(サンノゼ市)の陪審は24日、サムスンがアップルの一部特許を侵害したとの評決を言い渡した。アップルの損害を約10億5千万ドル(約830億円)と認定、サムスン電子に支払いを命じた。

 今回の陪審評決を踏まえ、判事が製品販売の差し止めも含めた最終的な命令(判決)を出す。特許を侵害した製品の米国内での販売が差し止められる可能性が高い。(中略)
 アップルは2011年4月、サムスンが自社の特許を侵害したと米連邦地裁に訴え、その後、サムスンが逆提訴。両社は世界各地で訴訟合戦を繰り広げている。アップルは、サムスンが採用している米グーグルの携帯端末用OS「アンドロイド」を「アップルの技術を盗んだ」(故スティーブ・ジョブス前会長)ものと主張している。
 今回の訴訟は7月末に審理が始まった。大市場の米国での裁判というだけでなく、アップルとグーグルが本社を置くシリコンバレーの裁判所での審理ということもあり、アップルの主要幹部も出廷、審理で飛び出す証言や証拠、両社の主張も大きな注目を集めた』
 アップルのiPhone用の次期OSの発表が間近です。iOS6では、今まではプリインストールされていたグーグルの地図アプリが外され、アップルが独自開発した地図アプリが導入されます。アップルの脱グーグルは進んでいるものの、現在のグーグルの地図アプリには非常に満足しているところもあり、アップルは同様の機能のアプリを準備できるか注目されています。同様に、YouTubeも外されるとのことですが、グーグルは、iOS用の地図及びYouTubeのアプリを準備するといわれており、影響はさほどないと思われます。
 2012年4〜6月のスマートフォンの世界シェア(注)は、サムスン電子が32.6%であるのに対して、アップルは16.9%にとどまっています。これは、サムスン電子のGalaxyの方が人気があるというよりは、9月12日にiPhone5の発表を控え、やや買い控えが起こっていることが背景にあると考えています。iPhoneを使用している私にとって、この判決には複雑な印象を受けます。それは、消費者の選択肢が減るという事態は是が非とも避けたいということからきています。もっとも、シェアからみれば、アップルよりもサムスン電子が市場を席巻、さらなるシェア拡大に歯止めがかかるという見方もできます。
 販売店などに圧力をかけるなど、アップルは過去にも独占禁止法違反などで罰さられています。判決に勝訴したアップルが、(現状では考えられませんが)スマホの分野でガリバー的な存在になれば、この市場の発展は歪んだものとなりかねません。アップル、グーグル、そしてマイクロソフトなどの様々な企業が参入し、激しい競争を展開する中で技術進歩が起こり、消費者はメリットを享受することができます。米企業、韓国企業ばかりが目立つスマホ市場です。先進性では決して負けていない日本企業も国内の過当な競争市場から脱し、今後は世界市場へとチャレンジすることが期待されています。
(注)米IDCの統計によるもの。

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