2012年8月29日水曜日

エジプト、IMFに48億ドルの融資要請

 エジプトは、中東の大国であり、今後の中東和平のカギを握る国の一つであるといえます。そのエジプトが、経済再建に向けて、IMFに融資を要請したようです。先ほど行われた大統領選の結果、エジプトの第5代大統領となったモルシ氏は、モスリム同胞団が母体となって設立されたイスラム教系「自由と公正党」の党首(注)であったことから、イスラエルへの対応が気になりました。同国の政策如何で中東和平へのステップが頓挫する可能性もあり、今後の動向に注視されます。
 2012年8月23日付読売新聞朝刊に、エジプトによるIMFに対する支援要請の記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『エジプト、財政赤字など深刻化。IMFに48億ドル融資要請』です。以下引用文。
 『【カイロ=貞広貴志】エジプトのモルシ大統領は22日、カイロで国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事と初会談した。ロイター通信によると大統領は、喫緊の課題であるエジプト経済の再建に向け、総額48億ドル(約3800億円)の融資を要請した。
 エジプト経済は昨年2月の政変以降、海外からの投資や観光収入が落ち込み、財政赤字の拡大や外貨準備高減といった問題が深刻化している。今年6月までエジプト暫定統治した軍政は、32億ドル規模の融資についてIMFと交渉してきたが、モルシ政権は今回、50%の積み増しを求めた』
 ここでエジプトの経済について興味を持ちましたので、ジェトロホームページに掲載のデータから、同国の名目GDPと失業率のグラフを作成してみました。右図がそれです。残念なのですが、2010年までのデータしかないものの、順調に名目GDPが増加していることがわかります。一方、失業率は、2008年に8.7%まで改善したものの、リーマンショックの影響と思われますが、2009年には9.4%まで悪化しています。2010年には、再び9.0%へと低下したことから、同ショックからは立ち直った姿が見えてきます。しかし、2010年から2011年にかけて発生した「アラブの春」により国内の治安が悪化、主な収入源である観光収入が減少、2011年以降は失業率の悪化が予想されます。もっとも、私が感じたのは、膨大な人口を抱えるエジプトにしては、失業率は意外と低いということです。
そして、右図は、エジプトの外貨準備高、貿易収支、経常収支の推移を示しています。貿易収支が赤字であることは予想されたのですが、経常収支の赤字幅がさほど大きくないことに驚きました。これも期近のデータがないので残念です。しかし、注目すべきは、2009年から2010年にかけて外貨準備高が328億ドルから235億ドルへ急減、減少幅93億ドルは、2010年の経常収支の赤字27億ドルを大きく上回っています。これまでは、同国の外貨準備高が海外からの投資により順調に増加したことが伺える一方で、政治が不安定化する中で、外資が国外へと逃避した結果、外貨準備高の急減につながったことが考えられます。IMFに対する融資要請は、この穴を埋めるためのものであり、エジプト経済が決して盤石ではないこと物語っています。
 同国経済が立ち行かなくなった場合、中東情勢が不安定化する可能性もあります。この中で、IMFによる融資が実行されたのならば、IMFに多額の資金を拠出している各国の思惑もありますが、エジプトを国際経済につなぎ止めることができるという意味でプラスであると思います。
(注)大統領当選に伴いモスリム同胞団及び「自由と公正党」から脱退したとのこと。

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