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2012年10月13日土曜日

IMFが警鐘、邦銀の国債大量保有による増大するリスク

 私は、元々、国内銀行による過剰な国債保有は否定的な見解でいます。第1の理由は明確であり、金融機関などにより国債が集中投資された結果、国債の利回りが極端に低下することで、国の財政規律を失わせることです。利払い費が減少することで財政秩序がなくなっており、政府による財政赤字の垂れ流しに歯止めが掛からなくなっています。
 第2の理由は、国債利回りが低い水準にとどまっている中で、何らかの外的なショックが発生、市場参加者のスタンスの変化によりなどにより国債利回りが急上昇すれば、国債保有者は多額の損失を出す可能性があることです。そして、利回りが低ければ低いほど、その損失は比例的増大するのです。これは、いわゆる「流動性の罠」といわれる現象に関連するもので、国債利回りが一定水準にまで低下すれば、通常ならば国債の価格変動リスクを嫌い、投資家は流動性の高い資産を選好し、一定水準以下には国債利回りは低下しないことになります。もっとも、わが国の場合、中央銀行である日本銀行が国債を積極的に購入することにより、さらなる低下をもたらし、現在の10年物の国債利回りは0.7%台で推移しています。

 こうした国債の利回りの低下は、国債の大口保有者である銀行などのリスク許容度を低下されるばかりでなく、年金基金などの運用利回りを低下させることで、昨今起こっている年金詐欺事件を誘発する原因ともなっています。そして、今でも、金融の知識が乏しい一般の人々が、投資詐欺事件に巻き込まれるケースが多発しています。これらの人々は、本来は安定した運用先である国債等で運用することが望まれますが、余りに低い国債の利回りはやはり危険を伴うこととなります。円高をどうしも阻止したという政府・中央銀行の思惑もありますが、国内外で様々な歪みを生じさせる原因ともなっており、過度な利回りの低下をもたらすであろう要因を一つ一つ排除する時期が訪れている気がします。
 この流れの中で、国際通貨基金(IMF)が10日に発表した「国際金融安定性報告書」で、邦銀による国債保有残高の増大に対して懸念が示されました。これに関する記事が2012年10月11日付読売新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『邦銀の国債大量保有、懸念。IMF報告、地銀再編など要求』です。以下引用文。
 『国際通貨基金(IMF)は10日発表した世界の金融システムに関する報告書で、日本の銀行が日本国債を大量保有していることに懸念を示した。国債の金利が上昇(国債価格が下落)すれば、銀行の損失が膨らみ、経済危機を招きかねない。欧州危機では、財政悪化と金融システム不安が連鎖的に拡大した経緯があり、日本でも対策が求められそうだ。
 報告書は、日本の銀行の保有資産に占める日本国債の割合が2011年は24%で、17年には30%まで高まると予測する。
 長引く景気低迷の影響で企業側に資金需要が乏しく、銀行による貸し出しは伸び悩んでいる。リスクが高い資産を持つと不利になる厳しい資本規制もあって、銀行は手持ちの資金を、安全資金とされる日本国債に振り向けざるを得ないのが実情だ。
 日本の国と地方の債務(借金)残高は、13年末には対国内総生産(GDP)比で245%に達する見通しで、借金依存度は先進国の中でも最も深刻だ。それでも、金利が安定的に低いのは、大量発行される国債の多くを日本国内の投資家が引き受けているためだ。
 ただ、「国内頼み」の状態がいつまで維持できるかは分からない。日本銀行によると、6月末の海外投資家による日本国債保有比率は8.7%で、1年前より1ポイント上昇し、過去最高を更新した。日本の財政状況を不安視する海外投資家が国債を売却し、金利が急上昇するという可能性が少しずつ高まっている』
 上図は、スペインなど南欧諸国で、現在進行形で起こっている事態です。幸い、日本では国内に潤沢な資金があり、日本国債のほとんどが国内投資家により保有されており、負の循環には陥ってません。しかし、いつ外的ショックが発生するとも限りません。例えば、格付け機関による日本国債の格付けの引き下げが実施された場合です。度重なる格下げを嫌気した海外投資家が保有する日本国債のほとんどを一挙に売却するなどのケースなどが考えられます。特に、海外投資家が保有する国債は、短期の国債が中心であり、利回り上昇による価格下落幅は小さいのです。この小ささから、むしろ売却が容易であることが推測され、逃げ足の速い資金ともいえます。備えあれば憂いなしです。政府、日銀、日本の金融機関の間で、真剣な協議を進めた上で、国内銀行による日本国債の過度な保有を是正する対策が早急に求められているのです。

2012年8月29日水曜日

エジプト、IMFに48億ドルの融資要請

 エジプトは、中東の大国であり、今後の中東和平のカギを握る国の一つであるといえます。そのエジプトが、経済再建に向けて、IMFに融資を要請したようです。先ほど行われた大統領選の結果、エジプトの第5代大統領となったモルシ氏は、モスリム同胞団が母体となって設立されたイスラム教系「自由と公正党」の党首(注)であったことから、イスラエルへの対応が気になりました。同国の政策如何で中東和平へのステップが頓挫する可能性もあり、今後の動向に注視されます。
 2012年8月23日付読売新聞朝刊に、エジプトによるIMFに対する支援要請の記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『エジプト、財政赤字など深刻化。IMFに48億ドル融資要請』です。以下引用文。
 『【カイロ=貞広貴志】エジプトのモルシ大統領は22日、カイロで国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事と初会談した。ロイター通信によると大統領は、喫緊の課題であるエジプト経済の再建に向け、総額48億ドル(約3800億円)の融資を要請した。
 エジプト経済は昨年2月の政変以降、海外からの投資や観光収入が落ち込み、財政赤字の拡大や外貨準備高減といった問題が深刻化している。今年6月までエジプト暫定統治した軍政は、32億ドル規模の融資についてIMFと交渉してきたが、モルシ政権は今回、50%の積み増しを求めた』
 ここでエジプトの経済について興味を持ちましたので、ジェトロホームページに掲載のデータから、同国の名目GDPと失業率のグラフを作成してみました。右図がそれです。残念なのですが、2010年までのデータしかないものの、順調に名目GDPが増加していることがわかります。一方、失業率は、2008年に8.7%まで改善したものの、リーマンショックの影響と思われますが、2009年には9.4%まで悪化しています。2010年には、再び9.0%へと低下したことから、同ショックからは立ち直った姿が見えてきます。しかし、2010年から2011年にかけて発生した「アラブの春」により国内の治安が悪化、主な収入源である観光収入が減少、2011年以降は失業率の悪化が予想されます。もっとも、私が感じたのは、膨大な人口を抱えるエジプトにしては、失業率は意外と低いということです。
そして、右図は、エジプトの外貨準備高、貿易収支、経常収支の推移を示しています。貿易収支が赤字であることは予想されたのですが、経常収支の赤字幅がさほど大きくないことに驚きました。これも期近のデータがないので残念です。しかし、注目すべきは、2009年から2010年にかけて外貨準備高が328億ドルから235億ドルへ急減、減少幅93億ドルは、2010年の経常収支の赤字27億ドルを大きく上回っています。これまでは、同国の外貨準備高が海外からの投資により順調に増加したことが伺える一方で、政治が不安定化する中で、外資が国外へと逃避した結果、外貨準備高の急減につながったことが考えられます。IMFに対する融資要請は、この穴を埋めるためのものであり、エジプト経済が決して盤石ではないこと物語っています。
 同国経済が立ち行かなくなった場合、中東情勢が不安定化する可能性もあります。この中で、IMFによる融資が実行されたのならば、IMFに多額の資金を拠出している各国の思惑もありますが、エジプトを国際経済につなぎ止めることができるという意味でプラスであると思います。
(注)大統領当選に伴いモスリム同胞団及び「自由と公正党」から脱退したとのこと。

2012年4月24日火曜日

決定したIMFの資金基盤強化

G20の合意がなされ、IMFの資金基盤強化が決定されました。欧州債務危機は、次ぎのターゲットはスペインだとも指摘されており、早急な合意が求められるところでした。欧州債務危機の再燃は、世界経済の下方へとシフトさせる要因であり、現時点における最大のリスクファクターであると、私は考えており、早々に日本経済新聞、読売新聞、朝日新聞の3誌を購入し、全てを読んでみました。内容は、ほぼ同一であったものの、それぞれに特徴のある図表を用意し、読者に理解しやすくする努力していることがよく分かりました。しかし、読売新聞だけが、重要なポイントを適切に表現していましたので、このIMFの問題に関しては2012年4月22日付読売新聞朝刊を引用させていただきます。以下引用文。
『20日に閉幕した主要20か国・地域財務相・中央銀行総裁会議は、欧州危機の拡大を防ぐため、国際通貨基金(IMF)の資金基盤を増強することで合意した。その裏では、当初の目標を大幅に引き下げて「合意」の形を整えるなど、薄氷を踏むような駆け引きがあった。(中略)
IMFは当初、危機に陥った国に「融資できる金額を5,000億ドル」増やす目標を掲げていた。
ここでいう「融資できる金額」は、今回合意した4,300億ドルの「拠出総額」とは意味が異なる。IMFは各国からお金を集めても、内部ルールで約8割しか融資に使えないからだ。5,000億ドル融資するには、6,000億ドル以上集める必要があった』
上記の記述に従えば、現時点での融資可能額は3,800億ドルであるので、4,300億ドルの拠出額の上乗せは、4,300億ドル×0.8=約3,400億ドルとなり、合計で7,200億ドルの融資が可能となることを意味します。一方、日本経済新聞では、3,800億ドル+4,300億ドル=8,100億ドルという表現となっています。私は、IMFの仕組みを詳しく知っている訳ではありませんので、どちらが正しいかは現時点では分かりません。しかし、一般的に考えて、拠出額の全てを融資に回せるかといえば、そうではないというのが事実でしょう。私の見逃しかもしれませんが、この点に注意しなければ、記事を読んでいて混乱しますので注意していただければと思っています。右表は、今回のIMFへの国別の拠出額を示したものです。米国が1兆ドルもの財政赤字を抱えていることから、消極的な姿勢をとっていた反面、わが国は一国としては他国を圧倒する600億ドルの拠出となっています。久しぶりのリーダーシップともいえる行動であり、評価するべきと思います。しかし、CDSなど保証債務を通じて、最大の打撃を被るのは米国ですし、ギリシャ政府に不正会計を吹聴したのも、悪名高きゴールドマン・サックスといわれています。欧州債務危機の根本的な原因を招いたのは、米国であもあり、今回の拠出への消極的な姿勢は論外ともいえる対応です。

2012年2月23日木曜日

ユーロ相場の本格的回復になるか

21日に、ギリシャの追加支援策がやっと合意されました。それを受けてか、円に対するユーロ相場がやや持ち直しています。22日には一時的かもしれませんが、1ユーロは106円台へと突入しています。このユーロ高は、追加の金融緩和を決めた円の独歩安ではなく、ドルに対してもユーロは上昇しています。
 右図は、今年に入ってからのユーロの対円、対ドル相場を示したものです。東京市場の終値ベースですが、1月16日に記録した対円では97.22円、対ドルでは1.2661ドルを底に大幅反転しています。一時は、悲観的な観測が強く、1ユーロ=90円程度まで下落する可能性も示唆されたのですが、ようやく落ち着きを取り戻したようです。
 今回の合意は、EU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)の間で取り交わされたもので、これで昨年10月に続く2度目のギリシャへの金融支援となります。これで、各国政府や民間の債権者は、前回の合意内容よりも、大きな負担を強いられることとなります。この合意には、ギリシャの債務危機の抜本的な解決はできないという判断が背景にあります。合意形成の過程で、ギリシャの政府債務の名目GDP比率は、2020年時点で129%にとどまるとの推計があり、さらなる負担増を求め、交渉が難航したことが伺えます。
 右表が、ギリシャ向け第2次金融支援の主な内容です。名目GDPに対する比率は、現時点で160%とされており、それを120%するための労力が如何に大きいかがよくわかります。これだけのことをしたとしても、依然として120%です。イタリアの同比率119.6%を上回っていることに驚きを感じます。ギリシャの債務残高は、2011年第3四半期時点で3,472億ユーロ(ユーロ統計局発表)で、1ユーロ=106円として日本円換算すると36兆8千億円です。この規模の債務の処理で、これだけの問題が発生しているのですから、1,000兆円にものぼる日本の債務残高は処理不可能な水準であるといえます。幸い、日本の場合、現時点では国際的なスキームを組む必要はなく、債権者である国内の投資家に負担してもらうだけですから、国際問題へと発展することは極力回避できます。わが国政府によるすみやかな対応が求められるとろこですね。
 因みに、2012年2月22日付日本経済新聞の記事には、私が知らなかったデータがありました。それは、民間債権者が保有しているギリシャ国債の額面ベースでの保有額です。記事によれば、保有額は約2,000億ユーロにも達し、実にギリシャの政府債務の6割弱にも及ぶことです。債務危機が発生してから、中央銀行によるギリシャ国債の購入があったことから、当初の割合はもっと大きかったことが推測されます。今回の合意により、50%から53.5%へと負担率がアップされたことにより、民間の負担は1,000億ユーロから1,070億ユーロへと拡大したことになります。要は、ギリシャの債務危機は、そもそもは民間の問題であって、それに巻き込まれる形で、EU、ECBなどが対応に迫られているのが実情なのでしょう。ギリシャ政府による不正な会計処理があったという事実はありますが、リスクを考えず、ギリシャのような国に無節操に投資を続けた民間債権者のモラルハザードこそが、ギリシャ債務危機の根本的な問題だったといえます。
 この合意で、3月20日に145億ユーロの国債償還を控えるギリシャの債務不履行(デフォルト)は避けられると予想されています。しかし、第3次の支援はないというのが、ドイツの本音です。第3次支援が必要という話となれば、ギリシャのユーロ離脱、そしてギリシャのデフォルトが現実味を帯びてきます。