そして、今度は、インドでの暴動事件です。暴動が発生したのは、ススギが54.2%出資するインドの現地法人、マルチ・ススギインディア社で、1人が死亡、100人以上が負傷するという大惨事となりました。同社は、1981年に設立されたインド政府との合弁会社『マルチ・ウドヨグ』を前身に、出資比率の上昇に伴い社名を変更、現在に至った会社です。四輪車における南アジア最大の生産規模を有し、インドでのススギの躍進に貢献しました。このほか、ススギは、インドに二輪車を生産するススギモーターサイクルインディア社(2006年設立、100%出資)、エンジンを生産するススギパワートレインインディア社(2006年設立、100%出資)などの現地法人があります。この暴動は、進出して30年以上も経ち、現地での経験を積んでいるはずの企業でのトラブルであり、インドでの生産の難しさを物語っています。これは、進出相手国の文化・宗教・政治に関わる教訓であり、タイでの大洪水より、海外進出において直面しやすく、かつ解決には時間を要する問題であるといえます。
今回のインドでの暴動には、カースト制度特有の問題があるとの指摘が多いものの、『日経ビジネス』2012年7月30日号の記事は、様々な要因が背景にあると示唆しています。記事の題目は『ススギ、インド暴動の波紋』です。以下引用文。
『労働者の給与への不満が今回の暴動の一因だろう。ほかの新興国と同様、インドでも格差が広がっている。もともと農村だった場所に工場が建ち、商業が発展して物価が上がると、賃金が追いつかなくなるケースもある。同記事は、給与の問題のほか、政治色の強い労働組合の存在、労働組合間の勢力争い、経営陣のマネジメントミス、従業員の過度の権利意識があるとしています。今後、有望な市場であるインドなくして、アジアの市場の開拓はありません。ススギの今後の対応が注目されるところです。
インド進出企業にとって、人件費は頭の痛い問題だ。インフレだけでなく、目下、インド・ルピーは歴史的な安値圏にある。輸入依存度が高まっているガソリンなどが高騰し、国民の不満は小さくない。企業にとっても部材の輸入コストが上昇しており、どんどん賃上げできる状況ではない』
今日は、初めてススギについて取り上げましたので、ススギの世界における生産・販売のデータを追ってみます。まずは、四輪車・二輪車の国内生産・海外生産の推移をみてみます。上図は、ススギのホームページに掲載されたデータをもとに作成したグラフです。四輪車の世界生産が比較的順調なのに対して、二輪車は2007年度をピークに減少傾向にあることが読み取れます。また、海外生産比率では、二輪車が9割を超えるまでになっているのに対して、急速に伸びているとはいえ四輪車は7割にとどまっています。四輪車に軽四が含まれている可能性があり、国内生産の比率が高い一因となったことが推測されます。
次のデータは、ススギの世界販売の地域別シェア(2010年度)です。これもススギのホームページ記載のデータから作成したものです。図からは四輪車が西アジアでの販売が圧倒的に多いにの対して、二輪車は東アジアが主力市場であることが分かります。四輪車に関しては、西アジア、つまりインドでの販売が影響しているものと考えられ、二輪車に関しては、競争相手であるホンダやヤマハなどの販売シェアと比べて考察する必要があります。しかし、二輪車の販売が好調なインドネシアがどちらのアジアに属するのかが重要であり、東アジアが圧倒していることから、インドネシアは東アジアに分類されていることが推測されます。
自動車を取り上げるとしたら、まずトヨタ自動車、次にホンダになりがちです。しかし、ススギという競争力のある日系の自動車メーカーがあることを忘れてはなりません。奇しくも、インドでの暴動がススギの注目度アップにつながりました。同社は競争力のある日本の会社であり、今後は継続的にレビューしていきたいと思っています。
(注)製造した商品が、消費者まで届くまでの一連の工程(プロセス)を指す。
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