2012年8月10日金曜日

インテル、次世代半導体露光装置の開発でニコンに資金協力

 ニコンは、カメラメーカーであるという印象が強いです。しかし、半導体製造装置、特に半導体露光装置の分野では蘭ASMLに次ぐ2位を維持しており、半導体製造装置製造も、同社の主力事業の一つとなっています。半導体露光装置は、レンズを通した光で半導体部材のウエハーに電子回路の原図を焼き付けるというもので、半導体製造の前工程の分野に該当します。インテルが製造するCPUの配線幅は、Sandy Bridgeの32nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)から最新のIvy Bridgeでは22nmにまで狭くなり、次は14nm、そして10nmへと順次精密さが高まるとことが予想されています。
 この精密さの向上とともに、コストの低下に直結する300mmサイズの半導体ウエハーから450mmサイズのものに対応する露光装置の開発を半導体製造の各社から求められています。この次世代の露光装置の開発費が莫大になることから、このたびインテルが、ニコンに資金の面で協力することになりました。右図はニコンのホームページ掲載の『アニュアルレポート』から作成したセグメント別の売上高です。半導体製造装置は精機事業に分類され、2010年を底に急回復していることが分かります。因に、インストルメンツとは、顕微鏡などの製造が該当、バイオサイエンス分野と産業機器分野に分けられ、半導体製造に関するものとしては半導体検査装置があります。半導体検査装置とは、半導体デバイスに電気を流し正常に動作するかテストする装置を指し、ニコンがどちらの製品を提供しているか不明ですが、ウェハーベースで行われる前工程とパッケージ後に行われる後工程のものがあるそうです。
 2012年8月8日付日本経済新聞朝刊にニコンに関する記事が掲載されていましたので紹介します。インテルは蘭ASMLに出資するとともに、ニコンに資金協力です。インテルは2つの企業を競争させる狙いがあり、半導体分野での競争の激しさを物語っています。記事の題目は『ニコン、インテルと共同開発。半導体・装置、連合作り進む』です。以下引用文。
 『ニコンが米インテルから資金協力を得る背景には、ウエハーの大型化や微細化に対応する装置開発に数千億円の巨額資金が必要となっており、単独での開発が難しいことがある。半導体メーカーと装置メーカーが連合を組み、次世代半導体の開発力を強化する動きが広がってきた。
 露光装置最大手のオランダASMLは半導体各社から合計で最大25%の出資を受け入れる方針を示しており、インテルなどが資金協力を表明した。8月には台湾積体電路製造(TSMC)も出資と開発費など合わせて約1080億円を支援すると発表。韓国サムスン電子も出資を検討中といわれている。
 ASMLを軸に巨大な企業連合が形成されつつあり、露光装置2位のニコンの対応が注目されていた』

 右図は、ニコンの売上高と営業利益の推移を示したものです。2013年度の見通しでやっと売上高が1兆円に達するものの、営業利益は900億円程度にとどまっています。この規模の企業に数千億円規模の設備投資を実行するのは不可能であり、インテルによる資金協力は、次世代露光装置の開発には不可欠であると思われます。気になるのは、蘭ASMLに出資する韓国サムスン電子の動きです。機械製造など川上の分野では日本企業は韓国企業を圧倒しており、日本は韓国に対して依然として貿易黒字となっています。サムスン電子による、同分野への進出は将来的には脅威であり、この分野でも韓国企業に破れるという事態は避けたいところです。

 ところで、ニコンが想定する為替レートは、2012年5月10日発表で、1米ドル=79円、1ユーロ=109円となっています。現時点では1ユーロは90円台後半で推移していること、スペインなどの債務問題がまだ決着せず、ユーロ相場の底割れ懸念があることから察して、2013年度の同社の売上高、営業利益は見通しを下回ることも十分あり得ると考えています。右図は、ニコンの地域別の売上高を示したものです。同社の欧州への依存は高く、これはユーロ安の影響が直撃することを意味しています。ユーロ相場次第では次世代の露光装置の設備投資どろこではないというのが実情でしょう。

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