ロシアは近くて遠い国であるという印象があります。明白な領土問題はあるものの、サハリンなどにある豊富な石油・天然ガスなどのエネルギー資源は、安定したエネルギー供給先の確保と中東依存からの脱却を目指す上で、わが国にとって重要な存在となっています。一方で、輸出市場としての魅力はどうでしょうか。国内産業保護を目的に、ロシアでは日本からの中古車輸入を抑制する露骨な関税の引き上げをしました。極東の中古の日本車ディーラーが困り果てる姿がテレビ画面に映したされ、今でも印象に残っています。この露骨さに辟易します。
しかし、2012年8月22日に、このロシアがについにWTO(世界貿易機構)に加盟しました。この加盟により関税の引き下げや投資環境の整備などが期待され、日本、ロシア間の貿易の一層の拡大が期待されています。2012年8月23日読売新聞朝刊にロシアのWTO加盟に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『WTOに加盟、露「近代化」に追い風。日本、自動車輸出など期待』です。ロシアは危機的な経済状況は脱し、エネルギー価格の高騰を背景に、2012年推計でGDPは2兆ドルに達します。経済規模からみる限りでは先進国への仲間入りですが、内容が伴っていくかは、今後のプーチン政権の出方次第であると思います。以下引用文。
『ロシアがWTOに加盟し、関税率の引き下げや投資環境の整備などを通じて貿易の拡大が期待される。ただ、ロシアがWTOルールを順守するかどうかは不透明で、日露間の経済交流がどの程度拡大するかは見通せない。日本からの最大の輸出品は自動車だ。ロシア市場を重視する三菱自動車は月内に、新型SUV(スポーツ用多目的車)を日本から輸出して先行販売する予定で、関税率の引き下げは「大きな追い風」(幹部)と受け止める。トヨタ自動車が2011年にロシアで販売した新車13万4000台のうち、日本などからの輸出が約12万台を占める。WTO加盟を受け、トヨタ幹部は「新車市場がさらに拡大する」と期待する』
電子機器の平均関税率が8.4%から6.2%へと引き下げられ、自動車以外の分野での輸出拡大も期待されています。もっとも、ロシアへの輸出の6割超は自動車など輸送用機器であり、これらに対する関税引き下げが効果が大きいものと考えられます。
そして、やっぱりロシア、ロシアであることを印象づける報道がJETROのインターネット放送局でされました。放送の内容は、ロシアにおける自動車リサイクル税の導入に関するものです。この税は、乗用車に関していえば、使用年数と排気量に応じて、新車で2万6,800ルーブル〜11万ルーブル(1ルーブル=2.4で約6万円〜26万円)、中古車で16万5,200ルーブル〜70万200ルーブル(同約40万円〜168万円)課されます。中古車に対する税率が高いことに特徴があり、関税の引き下げに伴って、中古車の過剰な流入を抑制し、明らかに自国の自動車産業を保護することを目的としています。
さらに、この税の導入に加え、ロシア通貨ルーブルの下落により自動車メーカーの収益が圧迫されているようです。ルーブル安に関する記事が2012年8月23日付日本経済新聞朝刊に掲載されていました。記事の題目は『新興国の通貨安、収益圧迫』です。記事によると、日産は米ドルを含めた円高により、合計で260億円の利益を押し下げるとしており、うちルーブル安による影響は94億円と全ての通貨の中で最大であるそうです。同社はロシアでの新車販売が2割伸びたものの、ルーブル安で円換算した売上高が目減り、事業の採算性が悪化したとのことです。
リサイクル税、ルーブル安により自動車の輸出が減るという事態に陥れば、ロシアとの貿易額は伸び悩む恐れがあります。貿易の拡大は、相互に利益があります。そして、中国、韓国との関係がぎくしゃくしている中、隣国であるロシアとの関係強化は、日本の国益にとって重要となっています。
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