2012年8月21日火曜日

安全な鉄道での移動と省エネルギー

 2005年4月25日に起こったJR西日本の福知山線における痛ましい列車事故は、私も同じJR西日本を利用する立場から人ごとではないと思っています。経営幹部への裁判が続いていますが、事故後、同社の営業姿勢に対する疑問を持つとともに、駅員の利用者に対する応対などを注意してみてきました。最近では改善はみられるものの、列車の遅延理由、遅延時間の連絡の遅さ、岡山駅から姫路駅まで不便さなど様々な点で不満を感じています。そもそも、私は鉄道好きですので、JR西日本を嫌う理由はないのですが、5年ほど前に「青春18きっぷ」を使って全国を列車で旅行し、JR東日本、東海、北海道、九州、四国を利用してからは、JR西日本のサービスが、他の会社のものと比べて列後していることを実体験しました。昨年当たりからは、山陽本線の車両の色を、品なのない「黄色」に塗りたくり、私みたいな「乗り鉄」だけでなく、「撮り鉄」の人々のひんしゅくを買っています。もっとも、JR西日本の改善努力は認めるところはあり、最近では利用者への対応も良くなっており、九州新幹線の大阪までの乗り入れは経済効果を生んでいます。
 事故は残念なことですが、鉄道による移動は安全であるとともに、環境負荷も最も低い移動手段です。鉄道による輸送は、燃料や原料の輸送手段としてメジャーな船舶をも上回るレベルであり、鉄道を中心に添えた国土開発は、引き続き進めていくべきであると思います。幸い、わが国は世界に誇る鉄道大国です。JR東日本を筆頭に、日本国内には規模の大きい鉄道会社が多く存在します。10年以上も前の記憶ですが、売上高の規模でみた場合、日本の鉄道会社が世界のトップ3に入るとのことでした。また、JRばかりではなく、JR以外の私鉄の規模そのものが大きく、日本の省エネルギーに貢献しているのです。現在、電気の使用制限があることから、本来、エコである鉄道会社に省エネを求めるという事態になっており、電力会社にはしっかりしてもらいたいと感じています。上図は、『週刊ダイヤモンド』2012年8月4日号に掲載されていたデータを元に作成したグラフです。確かに、JR東日本が他を圧倒しているものの、JR以外にもこれだけの私鉄が営業していることが分かります。

 ならば、交通手段は鉄道へとシフトしているのかといえば、決してそうではありません。特に、地方では鉄道路線の相次ぐ閉鎖に伴い、移動の中心は自動車へと移っており、エコを標榜する日本にとって逆行する事態となっています。データがやや古いのですが、右図は国土交通省『国土交通白書』(平成21年版)に掲載されたデータから作成した、地方における移動手段別の輸送人員を示したものです。自家用自動車が鉄道・バスなどを圧倒し、伸びていることが読み取れます。麻生政権による高速道路1,000円の政策が実施される前のデータですので、期近では自動車の比率はさらに高まっていることが推測されます。

 地方経済にとって、鉄道・バスなどの交通インフレは立ち後れているどころか、衰退しているのが実情であり、燃料価格が高騰し続ける中、今後、地方に住むものにとって、移動するという行為に対する経済的負担は大きくなると考えられます。こうした中で、関越自動車道での高速ツアーバスの事故を受けて、運賃の引き上げがや便数の削減が実施・検討されているようです。2012年8月4日付日本経済新聞Web版に高速バスに関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『高速ツアーバス規制強化、安全コストは利用者に。旅行会社、4割が値上げや減便を検討』です。以下引用文。
『高速バスツアー旅行を企画する旅行会社の4割が値上げや運行便数の削減を実施・検討していることがわかった。関越自動車の死亡事故を受けて安全規制が強化され、運行費用が上昇しているためだ。安全性が高まるが、そのためのコストは消費者へ転嫁されるわけで、今後の利用動向に影響が出そうだ』
 地方に住んでいるものにとって、高速バスはコスト的に魅力のある移動手段です。もっとも、鉄道と比べて燃料効率が悪いこと、リスクが高いことから、長距離の移動にバスを利用することはいかなるものかと思います。しかし、自家用自動車による移動は論外であり、民主党政権は、国家目標として環境を挙げています。ならば、鉄道会社の支援に当たり、鉄道料金そのものの引き下げを実施するとともに、地方路線の復活へ向けた施策が期待されるとろこです。鉄道会社にも、航空会社が主に担っている長距離の輸送や私鉄との競争が激しい都市部への投資ではなく、地方での鉄道利用を促進する経営姿勢が求められているのです。

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