2012年8月24日金曜日

クロマグロの総量規制と衰退する日本の漁業

 私の家では、魚料理といえば、サバ、サンマ、シャケが中心です。また、たまに行く回転寿しでは、タイ、ハマチ、イカなどを主に食べるため、マグロ、特にクロマグロの総量規制については、あまりピンとこないところがあります。海外では、資源量が少ない魚種についてはラベルなどを貼り、購入時に消費者に注意を喚起する試みがされているようです。一方、私が住んでいる岡山県は、サワラを食すことで有名です。因に、このサワラは近年、岡山県内ではほとんど獲れず、もっぱら県外での漁獲に頼っています。近くの食料品スーパーの刺身のコーナーには、毎日といっていいぐらいサワラが置かれています。サワラの希少性については、常々考えています。もっとも、サワラの県以外での漁獲量や資源量については全く知らないというのが実情です。サワラの資源量が減少しているのならば、漁獲制限をする必要があり、スーパーや飲食店などの業者は、そのことを消費者である我々に積極的に伝える義務があると思います。
 私の食生活に全く影響がないのですが、クロマグロには漁獲制限があります。一方で、クロマグロの養殖に対しては規制が緩かったため、漁獲された未成魚が養殖業者に出回っていたそうです。この養殖の総量規制に関する記事が2012年8月19日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『クロマグロ養殖、総量規制。新規・規模拡大受け入れず。水産庁、未成魚の乱獲防止』です。以下引用文。
 『水産庁はクロマグロの資源保護を強化するため、養殖用の未成魚の漁獲を規制する。2013年から国内漁場の新規開設やいけすの規模拡大を制限する。未成魚の乱獲で成魚の数が減る懸念が強まっているため、最大の消費国として、未成魚の漁獲量が現状以下に収まる総量規制を導入する。
 太平洋クロマグロの沖合での「巻き網」については、国際的な取り決めで、未成魚の総漁獲量を02〜04年の平均実績未満に制限している。ただ、沿岸での養殖は規制の対象に含まれていない。このため、出荷できる大きさまで育っていない未成魚を養殖場に持ち込むケースが急増している。
 このため水産庁は沖合での漁だけでなく、未成魚の受け皿となっている養殖についても規制をかける。来年9月に全国一斉に実施される漁業権の免許更新時に、新たな漁場の設定や養殖用のいけすの規模を拡大する申請は受け付けないように都道府県知事に要請する』
 今年の夏は、土用の丑の日が、ウナギの供給不足から値上げが相次いだという報道がありました。私は結局、アナゴを購入し、うな丼ではなく、アナゴ丼を満喫したばかりです。魚の養殖業で卵から孵化させて、養殖するという一連のサイクルが確立していない魚種に対しては、ある程度の規制はやむを得ないと思います。しかし、クロマグロの規制に対する抜け穴があることには驚きました。これは、養殖業者等漁業関係者のモラルハザードです。私は、クロマグロばかりでなく、マグロそのものを食することを、今後は自粛するつもりでいます。
 ところで、クロマグロに関連して、わが国の漁業の現状について少しばかり調べてみました。右図は、農林水産省のホームページ掲載のデータから作成した部門別の漁獲量の推移を示したものです。この図から、日本の漁獲量が大きく減少、80年中頃との比較では、半分以下の水準にまでに落ち込んでいることが分かります。この間の漁法の技術進歩を考慮すれば、この減少は、漁業従事者の減少を反映したものではなく、漁業資源そのものの減少であると推測されます。
 健康ブームから世界的に日本食が注目されています。その中心にあるのは、魚料理であるといっても過言ではありません。世界の人々が肉類から魚中心の食生活へとシフトした場合、漁業資源の枯渇は目に見えています。クロマグロに問わず、あらゆる魚種について資源量の調査は常に必要であり、そのことを消費者へ積極的に伝える姿勢が行政側に求められるとろこです。右図はデータが古いのですが、主な国の魚介類の消費量の比較を示したものです。2003〜2005年の平均ですので、中国はさらに増加していることが推測されます。因に、期近の魚介漁の生産量は、世界1億6,284万トン、中国6,047万トンですので、消費量でもかなり増加していることが伺えます。一度失われた資源は回復することはないです。北海道では、かつてニシン漁で沸いきましたが、資源の枯渇により、最近では余り注目されることはありません。最近では、鳥取県の境港でマイワシの漁獲量が激減、水産加工業者への影響が懸念されました。漁業資源の回復で成功したのは、秋田名物のハタハタくらいです。これは、漁業資源の管理の難しさを物語っています。

0 件のコメント:

コメントを投稿