2012年11月27日火曜日

スマートフォン市場の拡大とその影響

 年末に近づき、ここ1年間、書き込んだブログを振り返った時、スマートフォン関連のものが多いという感覚があります。ブログのタイトルが『経済問題を考える』ですので、一つの事象にとらわれず、総花的かもしれませんが、当初は様々な方面について言及するはずでした。しかし、スマートフォンが、新聞紙面で話題とならない日はないほど、当たり前の存在となっている上、様々な産業分野へと影響を与えようとしています。その結果、スマホ関連の話題が多く、この一連のブログはやや偏ったという印象を受けます。
 現在、私は金融取引、ネット通販、音楽・映画のダウンロードをスマホを通じて行っています。また、以前は書店で購入していた経済財政白書など官公庁の各種資料もPDFファイルでスマホやタブレット端末へとダウンロードして読んでいます。そして、企業の決算発表、株価、新聞記事なども全てスマホでチェック、メールの送受信もスマホでやっています。パソコンは、このブログを作成する時に立ち上げる程度で、さすがにグラフの作成や長文の作成にはパソコンの方がまだまだ適していると思います。この点が改善されれば、パソコンいらずという時代は、着実に近づいているといえます。さすがに企業ユーザーは完全にパソコンを排除することはできず、企業ユーザーのみがパソコンを使用しているという時代の到来が予見されます。もっとも、ブログを作成している最中でも、パソコンのサブディスプレーとしてiPod TouchやiPadを積極的に利用しており、非常に重宝しています。これらのモバイルデバイスの存在があったからこそ、このブログを作成するに当たっては、ペーパーレスが実現できました。
 以前は、外へ出かける時は必ずレンズ交換式のカメラ(いわゆる一眼レフ)を持ち出し、交換レンズも6本程度準備しました。それを全てスマホに置き換えることは決してできません。野鳥の写真を撮る時は望遠レンズ、風景を撮る時は広角レンズ、花や昆虫を撮る時はマクロレンズといった具合にレンズを使い分けをしなけば、決していい写真を撮ることはできないのは変わらない事実です。もっとも、昨年の10月末に北海道の旭岳へ登山した時は、iPhone4をカメラ代わりに使い、まずまずの作品が撮れたという気がします。上の写真は、iPhoneではないのですが、キャノンのPowershotG9で使って、旭岳の頂上付近から撮影したトムラウシ山です。逆光ですが、雲海の上からのショットです。

 その後、iPhoneは、4S、5とバージョンアップし、カメラの性能は着実に高まっているのです。その結果、デジカメの世界販売に異変が生じています。レンズ交換式カメラがむしろ増加傾向を示している一方で、コンパクトカメラは出荷台数は減少へと転じています。デジカメの販売台数に関する記事が、2012年11月23日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は、『デジカメ販売1000万台減、大手6社、スマホ普及響く』です。韓国、中国、台湾などの海外勢に圧倒されている中、日本企業に唯一圧倒的なシェアを握っているのが、デジタルカメラです。この分野で、スマホ台頭によるラダイムシフトに対応できなかった場合、デジタルカメラ、特にコンデジというカテゴリー自体が消滅する可能性は否定できないでしょう。以下引用文。

 『キャノン、ソニー、ニコンなどデジタルカメラ国内大手6社が2012年度の販売計画を一斉に下方修正した。減少幅は合計で1050万台と前回計画比で1割減。11年度比でも4.5%減と、一転して2年連続の減少となる見通し。高度なデジカメ機能を搭載したスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の普及に加え、世界的な景気減速や中国での不買運動も逆風となっている。日本勢が強いデジカメの分野でも今後、高機能品へのシフトなど戦略再構築を迫られそうだ。
 デジカメはデジルタ家電が苦戦する中でも日本勢が世界で圧倒的な優位性を持ち、電機・精密業界の「最後の砦(とりで)」とされる。日本勢以外の大手は韓国サムスン電子ぐらいで、富士フィルム、パナソニック、オリンパスを加えた国内6社の世界販売シェアは11年度で73%を占める。
 日本勢の強みはレンズやファインダーの光学技術や撮像素子と呼ばれるセンサーの開発力などにある。各社は技術力を生かしたレンズ交換式デジカメなどを強化し、事業再構築を急ぐ考えだ』
 iPhone4S/5の撮像素子は、ソニー製の800万画素の裏面照射型CMOSセンサーを使用しています。このセンサーは、光があたる部分の面積が広いことから、ダイナミックレンジが広く、また、高感度時のノイズも少ないとされています。デジカメ分野の市場が縮小しても、フェースブックやYouTubeの関係で撮影するというニーズはむしろ増加していると考えられ、高機能のレンズと撮像素子の技術を持っている限りは、日本企業のプレゼンスは低くはならないでしょう。従って、絶え間ない技術開発が、デジカメ主要6社には求められるといえます。

 そして、スマホ時代の到来の中で、もう一つ影響を与えるているのは、全国に光回線を提供するNTTです。昨日、NTTからの電話セールスがあり、わが家も1GBと光回線の導入ができることが判明しました。利用料金も引き下げられるようです。これは、スマホやモバイルルーターで十分あると考える人々が増えており、既存の光回線を解約するケースが続出していることが背景にあります。しかし、モバイルルーター等には月間でのパケット使用制限があることから、私は既存の光回線の契約を解除する考えは全くありません。企業間の競争の結果、料金の引き下げと回線速度のアップという「果実」を得ることができるのです。素晴らしい時代の到来だと思います。光回線引き下げに関する記事が、2012年11月21日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『NTT光回線値下げ。戸建ては月額3000円台へ』です。以下引用文。

 『NTT東日本、西日本は光回線サービスの料金を大幅に下げる。戸建て向けの月額料金を現行基本料金より約3割安い3600〜3700円台にする。スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)を通じてパソコンなどをインターネット接続する利用者が増え、光回線の契約者数は伸び悩んでいる。スマホと割安に併用できるようになれば、家庭のネット利用環境向上や通信料負担の軽減につながる。(中略)
 スマホ向けの高速携帯電話サービス「LTE」では光回線並の最大毎秒100メガビットのサービスも登場。通信の安定性は光回線が優れるがネット接続をスマホで済ます利用者が増えている。NTT東西の2012年度の純増数は約130万契約(11年度約150万契約)にとどまる見込み。
 NTT東は今回の値下げを新規顧客向けの2年限定の割引としている。ただ光回線の解約を防ぐには既存顧客対策が欠かせず、今後既存顧客向けの追加値下げに踏み切る可能性がある』
 モバイル向けの高速通信サービスである「Xi(クロッシィ)」側も、値下げに入りました。しかし、この料金引き下げは、同時に月間のパケット量の限度引き下げという制約がついています。月間の制限は、8割のユーザーは対象外になるパケット量だそうですが、スマホしか持っていない利用者にとっては死活問題です。やはり、家には安定した回線である光回線、屋外ではモバイルルーターを使うというネットライフがベストであるという印象を受けます。
 カテゴリーキラーであるスマホの普及は、今後、様々な分野へと影響を与える可能性があります。カメラメーカーやNTTは直撃を受けた恰好となりました。これ以外にも、電子書籍の普及により、新聞、雑誌、書籍を販売する業態が衰退する可能性があります。また、映画のレンタル、CDショップへの影響も大きいでしょう。パソコンメーカーや任天堂の業績も悪くなっています。来年には、新たなサービスがスマホで登場するはずです。ネット社会の主役へと躍り出たスマホが、今後のネットのあり方を形づくるという時代が到来したのです。

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