2012年11月28日水曜日

驚くべきイングランド銀行の総裁人事

 私は、日本銀行の白川総裁を決して責めているわけではありません。安倍自民党総裁のように過度に金融緩和を日銀に求めるなどは、新しい日銀法が定めらている現在、違和感を感じているくらいです。第1党になり、自民党が政権与党になって、日銀法を改正してから、政府関係者が発言するのならば許される話です。現時点では、政府から日本銀行の独立性の確保は絶対に守らなければならないのです。

 こうした中で、英国では革新的なことが起こりました。それは、イングランド銀行の総裁人事です。今回のイングランド銀行の総裁選びでは、従来の方法から完全に脱却し、新しい人材を外国へと求めた英国のやり方は、画期的であると感じました。これは、白川総裁がダメで、ダメだから外国人にしたらどうかという意見では決してありません。白川総裁は、毅然とした対応で職務を遂行しており、日本銀行はデフレ脱却に向けて全力で努めているのです。従って、白川総裁の人事が云々ということでは決してありません。もっとも、私は、政治が機能不全に陥っている中で、わが国の官僚制度においても外国人を登用してもいいのではないかと考えていました。そして、この英国の中央銀行、イングランド銀行の総裁に、カナダの中央銀行、カナダ銀行総裁で、カナダ国籍を持つマーク・カーニー氏(右写真)の登用を決定したことです。やれば何でもできるということを印象を受ける出来事です。


 2012年11月27日付NHKの「ワールドWave モーニング」の報道では、カーニー氏は英国とは全く無縁ではなく、妻、子どもは英国とカナダの国籍を持っていること、同氏自身も英国に10年間住んでいたことがあり、金融街シティや英国の業界関係者に多くの知人がいるそうです。しかし、最近の金融街シティの暴走振りは凄まじく、バークレイズによるLIBORの不正操作、スタンダード・チャータードによるイランへの不正送金、HSBCのマネーロンダリングなど金融が主力産業である英国にとって致命的な不正事件が相次ぎました。そこで、英国人の中央銀行総裁で、国と金融機関が混乱を起こしたことを踏まえれば、英国の財務省が人材を外国に求めることは、ある程度納得のできることであると同番組では示唆しています。今まで、英国の財務省が、候補者リストを作成し、首相の助言のもと、総裁人事が決定していました。今回は、公募という形をとり、広く人材を求めた結果です。カーニー氏が選ばれた理由には、カナダ銀行総裁に就任した2008年以降、カナダでは金融危機は発生していないこと、金融機関の救済もしておらず、景気後退も米国や英国などと比べて軽微で済んでいるということなどがあるようです。


 今までの流れでは、副総裁を3年近く、イングランド銀行の上級政策立案者を10年努めたポール・タッカー氏が有力視されいましたが、今回の総裁人事は、シティの予想を覆すものとなりました。世界の中央銀行でも格式と伝統を重んじるイングランド銀行ですが、やはりLIBORの不正操作の疑惑が尾を引いたようです。金融の監督側は、この事実を知っていたのか、それとも見過ごしていたのかは分かりませんが、不信の声を払拭する必要があり、異例の人事となったようです。そして、その人選に当たっては、公平性と透明性が求められたのだと番組の解説者は説明しています。ヨーロッパ債務危機が長引く中で、英国も無傷ではありません。失業率の高止まりと成長率の鈍化という問題を抱えているのです。新たな総裁に求められることは多く、ゴールドマン・サックスなど民間などでも努めた経験のあるカーニー次期イングランド銀行総裁の手腕に注目が集まっています。

 それで、私の本音です。私の本音は日本銀行の総裁人事の件ではありません。つまり、日本の政治の不安定さが、これ以上増すならば、人材を海外へと求めてもいいのではないかということを普段から考えていることです。何でも外国人を登用すればいいとは思っていません。ソニーがストリンガー氏を登用したことは失敗です。話によれば、同氏はソニー製品を愛用していないそうです。まず、この点をクリアにした上で、日本通であり、かつ日本を愛してくれる外国人は、世界中に多くいるはずです。大震災後に日本へと永住を決めたドナルド・キーン氏のような人々が日本へと駆けつけてくれればと思っています。自己の利権を守ることばかりに熱心な官僚に、これ以上国を任せれば、国は確実に滅びます。こうした中で、イングランド銀行の英断には、私自身が勇気づけられるところがあります。

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