2012年11月7日水曜日

大手金融機関にみる"too big to fail"の終焉

 私は、金融機関の規模の経済性はあると考えています。金融機関にとっての規模の経済性とは、その資産規模が大きくなればなるほど費用に占める固定費のウェイトが低下することを意味しており、経済学でいえば、限界費用が右肩下がりとなることを示しています。そして、金融機関にとっての固定費とは、システム投資、支店網など整備を指し、この費用が莫大であるため、他業態の企業からの参入が困難であるのです。
 一方で、コスト低下を狙った金融機関の再編は著しいといえます。日本でもバブル経済前後には、大手金融機関は都市銀行13行、長信銀3行、信託銀行7行あったのものが、現在では、三菱UFJ、みずほ、三井住友、りそな、三井住友信託の5つの金融グループにまで集約されていす。しかし、経済的な合理性のもと、経営統合を進めた場合、費用は確実に低下するものの、ひとたび不良債権を抱え、経営不安が高まれば、銀行規模に起因する経済全体に与える影響は大きく、速やかなる公的資本の注入など救済措置が必要となってきます。そして、事後的な措置よりも、むしろ金融庁などによる事前の監査を徹底化することで、大手金融機関に経営不安が絶対に起こってはならないのだという視点にたつことが求められています。バブル経済崩壊以降に発生した金融不況は、各々の金融機関の規模が現在よりも小さく、破綻処理が比較的スムーズにいったのです。現在の三菱UFJ、みずほ、三井住友の資産規模は、国民総生産からみてもかなりの規模となっており、国による救済を阻むものとなっています。
 こうした中で、世界の大手金融機関28行に対して、さらなる自己資本の増強が求められることになりました。金融機関に関する新たなる自己資本比率規制に関する記事が、2012年11月3日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『世界28行に自己資本新規制、3メガ銀 1〜1.5%上乗せ』です。以下引用文。

 『主要国・地域の金融監督当局で構成する金融安定理事会(FSB)は1日、世界の28巨大金融機関に適用する自己資本比率の上乗せ幅を公表した。日本の3メガ銀行は三菱UFJフィナンシャル・グループが1.5%、みずほと三井住友が1%となり、各行は上乗せ規制が完全に適用される2019年までに基準を満たす必要がある。金融危機の再発を防ぐ目的で作られた規制の適用値が固まり、上乗せ幅の大きい欧米銀も対応を迫られることになる。
 国際的な金融機関は13年から「バーゼル3」と呼ぶ新自己資本規制によって、19年までに段階的に普通株を軸とする「狭義の中核的自己資本比率(コアティア1)」を7%にする必要がある。
 今回公表された上乗せ規制は、経営不安に陥れば世界的な金融システムリスクを引き起こしかねない巨大銀行に限って、16年から「バーゼル3」よりも1〜2.5%の上積みを求めるもの。対象銀行は19年には比率を8〜9.5%にしなければならない』


 結局のところ、この規制強化は、大手金融機関は潰せないという考えが根底にあると思います。つまり、"too big to fail"です。しかし、資産規模の大きい金融機関ほど、高い自己資本比率が求められるのならば、これ以上の経営統合はないことも意味します。現時点では、さらに、この考えを一歩進める必要があるといえます。それは、世界経済にとってのいまや最大のリスクは金融システムの機能不全であり、そもそも大きくなり過ぎた金融機関の解体を目指す段階に入っていると考えてもいいでしょう。肥大化する米国の金融機関に関する記事が、2012年11月4日付朝日新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『巨大銀行強まる解体論。巨大損失、相次ぐ不祥事。税金救済に批判強く』です。以下引用文。

 『「大きすぎる金融機関は解体・分割せよ」。こんな声が米国で強まっている。大統領選の結果が行方を左右しそうだ。
 ある「大物」のテレビ出演が今夏、話題を呼んだ。米シティグループの元最高経営責任者(CEO)で、総帥といわれたサンフォード・ワイル氏。生番組で「銀行と証券が同じグループにあるのは、おかしい。巨大総合金融は解体すべきだ」とまくし立てたのだ。
 ワイル氏は、1998年、当時の大手で銀行中心のシティコープと、保険や証券中心のトラベラーズ・グループを合併させ、巨大金融をつくった張本人だ。その口から解体論が出て、ウォール街は騒然とした。
 解体論を唱えるのは、同氏だけではない。米議会では、銀行の経営規模を制限する法案を模索する動きが出ている。ダラス地区連銀などの金融当局も分割論を唱え始めた。
 90年代以降、米金融業界は再編を繰り返してきた。「多彩な業務をすれば経済の活力につながる」という考え方から、規制緩和が進み、銀行や証券の垣根を越えた合従連衡が宇相次いだ』
 この背景には、2008年9月のリーマン・ショックで、預金を取り扱っている銀行が、証券業務にのめり込み、結果として巨額な税金を投じて救済されたことがあります。これに加え、最近では英バークレイズによるLIBORの不正操作、JPモルガン・チェースによるデリバティブ取引による巨額の損失計上が発覚するなど、巨大金融機関に対する風当たりは強くなっています。新自己資本比率の適用は、はじめの一歩です。巨大金融機関の成立を阻止するには、一定資産以上の規模を有する金融機関を解体する直接的な手段か、もしくは、上記よりもさらに高い自己資本比率を課し、金融機関同士の合併のメリットを全くなくすかです。これは、金融機関側のモラルハザードを生む、いわゆる"too big to fail"にかかわる問題であり、今後、各国の金融規制・監督する当局側の対応が気になるところです。

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