2012年11月3日土曜日

M&Aの増加と海外へ活路を見いだす日本企業

 人口が減少し、消費需要も相変わらず弱い日本経済に成長の限界が指摘されています。そうした中でも、企業は常に成長を維持しなければ、生き残れないのが現実です。国内に留まるのならば、競合する他社を蹴散らし、市場シェアを高めるしか、成長の余地はないのです。一方で、海外へと目を向ければ、引き続き高い成長を維持している世界市場が、日本企業の目の前に広がるのです。NTTドコモは、かつて米AT&Tワイヤレスに対して1兆円も出資し、iモードを海外へと広めようとしました。結果、この試みはうまくいかず、現在では国内での市場拡大を目指そうとしています。しかし、国内市場には、契約数を伸ばしているKDDI、ソフトバンクが控えており、NTTドコモは国内市場でも苦戦を強いられています。
 やはり、円高が進んでいる現時点で大型投資に踏み切ったソフトバンクの選択が正しかったのかもしれません。海外企業の買収は難しいのが実情です。長期的な視点にたった評価が求められるところです。また、企業自らの利益だけでなく、最近の買収では、資源、エネルギー開発、穀物など投資先が多様化している上、日本経済にとって必要な資源を適宜獲得できる業種が多いことが注目されます。これは、未来の日本の国益にかなった買収であり、後々に評価される企業買収となればと思っています。上図は、財務省発表の対外直接投資の推移です。流出と流入の差であるネットのマイナスが、資本の流出(対外直接投資の実行)を示します。円安が進んでいたものの、リーマーン・ショックが起こった年にグロスの流出が最大となり、それに伴いネットの資本の流出も最大となりました。やはり、日本企業の海外直接投資の誘因には、海外での需要拡大が不可欠であるといえます。
 この海外企業のM&Aに関する記事に2012年10月28日付山陽新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事には、M&Aの対象は欧米企業が多かったのですが、ここへきて経済成長を続けるアジアなど新興国の需要を取り込む事例が増えているそうです。記事の題目は『海外M&A22年ぶり最多。1〜9月、364件。円高、国内市場縮小で』です。以下引用文。
 『日本企業による海外企業の合併・買収(M&A)が、2012年1〜9月に前年同期比7.4%増の364社に上ったことが27日、M&A助言会社レフコ(東京)の調べて分かった。1〜9月では22年ぶりに過去最多を記録。国内市場の縮小を背景に海外に事業展開する企業が増加した。長引く円高も海外投資には追い風になっている。(中略)
 レフコはM&A戦略の立案や調査、仲介などのサービスを通じ、顧客企業の経営戦略を支援する事業を手掛けている。同社がデータを保有する85年以来、1〜9月の最高は90年の359件。バブル経済が終わりを迎えつつあり、企業が余剰資金を使った海外投資に躍起になっていた時期だった。
 1〜9月の金額ベースでみると、12年には22.9%増の4兆9900億円。08年の6兆1412億円、06年の5兆1181億円に次ぐ過去3番目の水準となった』

 同記事は、豊富な資金量のある大企業ばかりでなく、地方の有力企業による買収も目立っていることを示唆、海外投資の質に変化がみられるのです。しかし、改善に兆しが見られない日中関係が懸念材料になっています。その中で、中国に進出しているスーパーマーケットチェーン、平和堂が話題となっています。中国の人々の「平和堂で買い物をしたい」とニーズと、職を失った中国人社員が必死になって店舗を再建しようとする姿が、テレビ画面に何度も映し出されました。日中の経済のつながりは思った以上に強いと感じました。一連の日本企業に対する暴力行為は、一部の人々による暴挙であり、中国の人々の大多数が日中関係の進展を期待しているものと信じたいです。日本企業も中国に多額の資金を投資しており、日中間の良好な関係なくして、アジア・太平洋地域の発展はないと確信しています。

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