一方、わが国は、消費需要が慢性的に弱いと言われています。中国に抜かれたとはいえ、依然として、日本は、世界第3位の経済大国です。今後、急速に進む高齢化に伴い、必然的に消費性向が高まり、世界経済の成長を引っ張るまで存在感が高まればと期待しています。既に、その兆候はあり、貿易赤字となる月が多くなっており、ある意味、海外諸国からみて魅力のある日本市場へと変貌しているところがあります。もっとも、わが国では、所得収支の黒字幅が大きく、経常収支は赤字が定着するにはまだまだ時間を要するとされています。財政赤字が大きいことから、経常収支の赤字化は避けたいところですが、世界経済にとって魅力のある市場となることは、政治的な影響力を行使することもでき、マイナス面ばかりではないと考えています。上図は、日米の実質GDPに占める消費支出の割合を示しています。米国は2001年より上昇傾向にあったものが、2009年にピークを迎えた後、2011年では2009年の水準を上回っていないことが分かります。一方、日本の場合、2002年より低下傾向にあったものが、2009年に大きく上昇、2011年時点では2009年のピークを下回っているものの、比較的高い水準にあるといえます。日本の消費支出は、まだまだ増加する余地があり、貿易赤字が恒常化する可能性は十分にあるといえるでしょう。
こうした中で、米国の小売売上高が、米商務省より発表されました。3ヵ月連続で、前月を下回っており、雇用情勢の悪化懸念から、家計が消費を抑制する傾向が高まっています。米国の消費活動に関連して、2012年7月17日付日本経済新聞夕刊に『米消費失速、景気に影。小売売上高、3ヵ月連続で減少。成長予測引き下げ』の題目の記事が掲載されていましたので紹介します。以下引用文。
『【ニューヨーク=西村博之】米国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費が勢いを失い、米景気への懸念が一段と強まってきた。16日発表の6月の小売売上高(季節調整済み)は2008年以来、初めて3ヵ月連続のマイナスを記録。米国の金融機関は16日、4〜6月の成長率予測を相次ぎ引き下げ、年率で1%前半へ下方修正した。16日の米株式市場は軟調、下落幅は小さかったものの、ニューヨークダウ工業株30種平均、ナスダックともに前日比でマイナスとなりました。翌週の17日の同市場の寄り付きもマイナスで推移しており、米国の株式市場は景気減速に対してネガティブに反応しているようです。ユーロの独歩安が進み、輸出により経済を引っ張るという当初の目論みはすでに破綻しています。合計すれば、世界第2位経済規模を誇る欧州経済が足を引っ張る形で、米国の輸出が思うように伸びず、結果として米国の雇用情勢が改善しないとも捉えることができますが、そもそも巨大な米国経済自身が輸出により成長を持続させることに限界があるといえます。米国経済は、財政支出による景気浮揚には限界があります。それは、財政赤字の拡大が問題視されているからです。ならば、オバマ大統領が主張するように、富裕層への課税強化が、この呪縛から脱却する唯一の手段かもしれません。
米景気への懸念から、16日の米国債相場は上昇(金利は低下)。10年国債の利回りは一時1.44%と、過去最低の1.43%に迫った。
「市場は、小売売上高の数字を米景気が後退局面に入る兆しと受け止めた」(キャピタル・エコノミクス)
米商務省が16日発表した6月の米小売売上高は前月より0.5%減り、「0.2%増」を予想していた市場を驚かせた』
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