2012年7月8日日曜日

わが国での太陽発電の限界と期待される洋上風力発電

わが国では、東日本大震災を契機に、原子力発電に依存したエネルギー供給に関する長期計画に大幅な見直しが迫られています。大飯原発の3号機、4号機の稼働だけでも大議論の末、やっとのところで再稼働に至りました。これから50基にものぼる国内の原子力発電所の再稼働に関して一つ一つ長い議論をしている間にも、40年ともいわれる原子炉の寿命が順次過ぎていきます。このペースでは、再稼働する前に全ての原子炉を廃炉へとしなければならなくなるでしょう。いまや個々の原発の再稼働に関して議論を進める段階ではなく、総論として、稼働させるならば、稼働させる、稼働しないのならば、稼働しないという議論を進めていくことが必要な段階になっています
こうしいる間、再生エネルギーの対応状況で大きな変動が出てきています。再生可能エネルギーの買い取り制度などで、わが国の行政が後手後手に回っている中で、太陽光発電に生産トップであったシャープなどの企業がシェアを落とし、生産量でも中国、ドイツに劣るまでになっています。そして、設置容量でも後塵を拝し世界3位にまで順位を落としているのが、わが国の現状です。右図はIEA諸国の太陽光発電の設備容量を示したものです。力を入れているドイツが他を圧倒している一方、財政危機に見舞われているスペインの健闘が目を引きます。最近では、メガソーラーが新聞紙面、ニュース報道でよく話題になります。私が住む岡山県でも、利用されず放置されていた干拓地でのメガソーラー導入が期待されているそうです。
しかし、太陽光発電は、わが国にとって国土が狭く、夜間に発電できず、天候的にも左右される点で限界があります。これは世界的にも同様なことがいえます。右図は、世界の水力、原子力、風力、太陽光の発電能力の比較したものです。中東や北アフリカなどで本格的な導入が進めば、太陽光にも可能性があることは否定できませんが、最近になって開発が進んだ風力発電にもかなり劣るのが太陽光の発電規模です。今後の再生可能エネルギーの中心は、水力発電は既に開発されつくれていること、同発電は環境な面でマイナスであることから、伸びが期待できず、注目されるのはやはり風力発電ではないでしょうか。
 ここで、英国で、洋上風力発電に関して大きな動きが出ました。もともと、風力発電を地上で行う場合、健康被害などの問題が指摘されていました。風力発電が発する低周波音で体調を悪化させる住民の訴えや、先行して導入が進んだヨーロッパ諸国でも人が住んでいる場所から一定の距離をとらなければ、稼働できないという報道を以前観たことがあります。これに対して、洋上風力発電は、漁業等への影響があるかもしれませんが、期待される分野であるといえます。
 2012年7月5日付日本経済新聞夕刊に英国の洋上風力に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『英、洋上風力に13兆円、発電能力、原発30基分、雇用確保』です。以下引用文。
 『【ロンドン=松崎雄典】英国が官民挙げて世界最大の洋上風力発電事業に乗り出している。13兆円を投じ7000基以上の風車を沖合に設置し、3200万キロワットの電力を発電する。これを軸に2020年時点での英国の総電力需要の約3割を再生可能エネルギーでまかなう計画。英国は、裾野の広い風力発電事業を振興し雇用を創出するとともに、今後の国際規格作りも主導する見通し。日本企業も三菱重工業などが関連機器の納入などで参入に動いている』
 風力発電先進国のドイツよりも、海に囲まれている英国の方が沖合風力発電では有利です。右図は、世界の風力発電導入量の国際比較を示したものです。やはり、国土が広い中国、米国が1、2位を抑えていますが、ドイツは3位と国土面積に割に健闘、原発の廃炉を決定した同国の決意を感じされてくれます。英国はイタリア、フランスとほぼ同規模であり、日本はそれらの国々の3分の1に留まっており、如何に風力発電を軽視していたかがよく分かります。もっとも、1位、2位の中国、米国と比べて、日本や英国には有利な点があります。人が住むエリアから一定の距離を保つ必要がある風力発電の設置は、内陸部に産業の拠点がある米国や中国と比べて、国土の割に海岸線の長い英国、日本は、洋上風力発電設置に有利であり、毀損する国土が少ないのです。わが国も、英国と同様に洋上風力発電にこそ未来があると考えています。

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