上記の記述は、2012年7月24日付NHKの報道番組「ワールドWave トゥナイト」で報じられたもので、格付けが引き下げられた場合、今後、ドイツ国債の利回りの上昇など直接的な影響以外に、2つの懸念が出ていることを示唆しています。一つは、ドイツの高い格付けを背景に、ユーロ圏の基金は、比較的低い金利で債券を発行、資金を調達している現状があります。引き下げが現実となれば、それら債券の利回りが上昇、調達コストの大幅な増加が見込まれることです。もう一つは、負担の増大への抵抗感から、ドイツによるユーロ圏諸国に対する支援拡大への世論の反発の拡大が予想されることです。ドイツ政府は、短期的なリスクばかりが強調されており、長期的な見通しについての言及がないと反論しているものの、国債利回りの上昇を見る限りでは、ムーディーズの見方が市場を支配しているようです。ドイツは、2013年秋に総選挙があります。米大統領選と比べて時間的には余裕があるものの、事態が長引けば与党敗北という結果になりかねません。ドイツ政府は、世論を気にしながらの支援拡大という難しい対応を迫られているのです。
2012年7月24日付日本経済新聞夕刊にドイツ国債に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『独国債「弱含み」に、米ムーディーズ、引き下げ』です。この記事には、米国や日本の国債が買われ、利回りが低下しているとの記述がありましたが、2012年7月24日日本時間の午後11時時点では、日米の利回りは逆に上昇しています。以下引用文。
『【ニューヨーク=西村博之】ユーロ圏の先行きに再び不安が高まっている。23日の米市場では米国債相場が上昇(金利は低下)し、10年物利回りは一時1.4%を割って過去最低を付けた。スペインなどの財政懸念が再燃し、元本割れの危険が少ない米国債に資金が流れ込んだ。一方、同日夕には米格付け会社のムーディーズ・インベースターズ・サービスが、ドイツなどの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた』米国債の利回りの低下は、結果として日米金利差の縮小をもたらすことで、円高を誘因します。ユーロに対しては当然として、日本円は米ドルに対してもやや高めに推移しています。しかし、これは投機的な資金が絡んだ結果の円高であるともいえ、物価水準から考慮した為替レートからは乖離していると推測されます。ムーディーズによる格付けの一覧が準備できませんでしたので、参考ですが米S&Pによるヨーロッパ各国の格付けを示したのが上表です。ムーディーズにより「ネガティブ」とされたのは、上記のドイツ以外にも、オランダ、ルクセンブルクなど最高位のAAAを受けている国々です。因に、日本はAA-で、米国はAA+です。名目GDPに対する政府債務の割合を考えても、ドイツの財政状況は良好であり、ドイツ国債の格付けが実際に引き下げらた場合、財政状況の悪い米国や日本の国債が引き下げとなっても不思議ではないと思っています。
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