2012年7月2日月曜日

炭素税、資源税に揺れるオーストラリアと日本への影響

世界中には、石油、石炭、鉄鉱石など天然資源に恵まれる国は多くあります。シェールガスに沸く米国は天然ガスの輸出の可能性が出てきています。また、中国も石炭、石油などの天然資源が国内で産出されるのも事実です。ブラジルやインドも鉄鉱石などの資源を国内で多く産出します。もっとも、米国、中国、ブラジル、インドなどの国々は、豊富な天然資源を産出するものの、日本がこれらの国々に多くを依存するということにはなっていません。この理由は、国内産業が発展しており、国内での需要が大きく、外国に輸出する以上に消費を行っており、輸出国であるどころか、逆に資源の輸入国でもあります。この典型的な例は、インドネシアのOPEC(石油輸出国機構)からの脱退です。経済発展を背景にインドネシアでの石油の国内需要が増加、輸出どころではなくなっているのです。
 この点で異なるのが、ロシア、カナダ、そしてオーストラリアなどの国で、これらの国々は、国土面積の割に人口規模が小さく、国内での消費需要が少なく、輸出に回せる余力が大きいことに特徴があります。この中で、日本が依存する割合が大きいのが、オーストラリアです。鉄鉱石、石炭の同国への依存度は高く、輸入総量の6割前後にも達します。さすがに鉄鉱石については、鉄鉱石大国であるブラジルからの輸入は30%にも及びますが、わが国のオーストラリアへの依存度はかなり高いことが分かります。このほか、エネルギー確保の上で、現在、一番重要となっている存在であるLNGも同国への依存度は高い水準にあります。
 同様に、日本への輸入量ははっきりしませんが、多くの資源を産出するのがオーストラリアです。右表は、オーストラリアで産出する鉱物資源の世界シェアを示したものです。埋蔵量シェアが産出量シェアを下回っている鉱物資源、つまり開発が進んでいないと思われるものには、鉛、亜鉛、ニッケル、金、ジルコン、ウランなどがあり、まだまだ開発の余地があるのがオーストラリアの実情であるといえます。
 こうした中で、オーストラリア政府が炭素税、資源税を導入、波紋を呼んでいます。今日は、2012年6月30日付日本経済新聞朝刊からの引用です。記事の題目は『豪、投資への影響懸念。炭素・資源2税あす導入』です。日本企業への打撃を与える懸念もあり、同税の導入にも、オーストラリア国内でも批判が出ています。以下引用文。
 『【シドニー=柳迫勇人】オーストラリアは7月1日、炭素価格制度(炭素税)と鉱物資源利用税(資源税)の2つの大型新税を導入する。欧州債務危機などで企業が環境対策を進める余裕がなくなっている中で、炭素税は二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出量の国際価格より高い水準の負担を設定した。産業界は経済競争力を弱め雇用や輸出、投資環境に悪影響をもたらすと反発している』
 二酸化炭素の排出量取引は、欧州で既に先物で取引されているおり、1トン当たり約800円である一方で、同国が負担を義務づける炭素税は約1,840円と2倍以上となっています。また、資源税は、鉄鉱石や石炭事業で発生する超過利潤にターゲットに課税するもので、実質税率は22.5%にも達しています。今は、需給がやや緩んでおり、天然資源の市場価格も下落傾向がありますが、本格的に景気が回復傾向を示せば、価格転嫁へと結びつき、日本経済への打撃になる可能性があります。しかし、資源確保は経済成長には不可欠です。上図は、オーストラリアに対する投資を示しています。同国への投資は、米英が中心で、2006/2007では日本は第3位でした。その後、中国の投資が拡大、日本は4位へと順位を落としました。オーストラリアは、まだまだ資源開発は進んでいない資源分野もあり、ここは、上記2税による負担増は顧みず、円高という強力な武器をもって同国への投資を積極的に進めることが求められるところです。

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