2012年7月28日土曜日

規模の小さい日本の製薬会社、統合の必要性があり

今後、わが国では高齢化が進み、医療費への支出の増大が予想されます。通常ならば、製薬会社からみた場合、市場の拡大が期待されるものの、これ以上の政府支出の増大には制約があることから、引き続き薬価の引き下げが進められ、逆に製薬会社の売上高や収益が圧迫される可能性が高い。2012年4月12日付『知らなかった薬価の引き下げ』のブログでも、薬価の引き下げについて書きました。有望な薬を持たない製薬会社は、薬価の引き下げの影響の直撃を受けることになります。このため、国内市場だけに頼るのではなく、海外市場の開拓が製薬会社が生き残る上で不可欠な要素となっています。しかし、海外には規模の大きく、競争力のある製薬会社が多数存在、わが国トップの武田薬品工業でも、売上高ランキングで12位の規模に過ぎないのが実情です。
2012年7月22日付朝日新聞朝刊に製薬会社に関する記事が掲載されていましたので紹介します。キーワードは、「がん新薬」「新興国」で、記事の題目は『がん新薬、開発激化。大型薬、特許切れ新戦略』です。以下引用文。
 『製薬各社は1990年ごろから、高血圧や高脂血症など患者が多い生活習慣病を中心に大型新薬を次々開発し、巨額の利益を得てきた。だが近年、そうした薬は飽和状態だ。しかも10年前後から大型薬の特許切れも重なり、戦略の練り直しを迫られた。 新たに開発の重点領域になってきたのが、生活習慣病より患者数が少ないが、有効な薬が乏しかった分野。特に、各社がそろって注力するのが「がん」だ。 厚生労働省の08年の調査では、高血圧性疾患の患者は797万人、糖尿病が237万人。がんは152万人で、胃や大腸など部位ごとに分かれている。「ホームランを狙うのでなくく、ヒットを多く打つ戦略」(大手製薬会社)に出た。(中略) 業界のもう一つの大きな動きが、経済成長著しい新興国への進出だ。 先月、武田薬品工業は世界約70カ国の拠点から幹部ら約270人を米シカゴに集め、大規模な販売会議を開いた。長谷川閑史社長が「武田の今後10年の成長を牽引するのは、先進国でなく新興国。売上高の伸びの半分近くを新興国市場で創出する」と語りかけた。(中略) 米調査会社IMSの予測では、11〜16年の日米医薬品市場の伸びが年1〜4%なのに対し、新興国17カ国は年平均11%を超える。特に中国の市場は15年ごろに日本を抜き米国に次ぐ世界2位になると見込まれ、国内各社が重点を置く』
 国内での薬品市場でも、外資系製薬会社の存在感は大きく、国内の製薬会社は必然的に海外市場へウェイトを置く必要があると思います。そうした中で、日本の製薬会社の規模が、海外の製薬会社と比べて小さいことが問題となっています。右図は、同じ記事記載のデータから作成したものです。トップ5には米、スイス、フランスの企業がランキング、日本の製薬会社は10位にも入っていないのが現状です。日本の企業はどうして統合が進まないのかが不思議です。家電、自動車などの輸出企業でも共通した点です。海外の企業では、国境を超えた合併も日常茶飯事です。競争力回復には、まず、製薬の分野でも、国内企業での合併を速やかに進めるとともに、海外企業との合併を容認、規模の経済性を追求することが求められます。

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