こうした中で、内閣府が6月9日に2012年5月の機械受注統計を発表しました。同統計は設備投資の先行指数ともなるもので、今後の景気動向を先取りできる上で注目されています。2012年7月9日付日本経済新聞夕刊に、この機械受注統計に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『機械受注14.8%減、5月、基調判断は据え置き』です。以下引用文。
『内閣府が9日発表した5月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」は前月比14.8%減の6719億円となり、2ヵ月ぶりに減った。前月に化学工業などで大型案件が集中した反動減が主因だ。内閣府は機械受注の「緩やかな増加傾向がみられる」とした前月の基調判断を保った。ここでやや疑問に思ったのは、機械受注統計は何故前月比との比較で増減を判断するのかです。前年同月比での比較でいいのではないかと思い、右図を作成しました。前年同月比でも民需(船舶・電力を除く)は、前月の9.1%増から7.1%減へとマイナスへと転じており、2010年2月の4.4%減以来のマイナスとなっています。
内閣府は「季節調整の計算など、技術的な要因で実態よりも弱い数字が出ている」とも分析した。ただ5月の減少率は市場予想(2.9%)を上回り、比較可能な2005年4月以降で最大の幅を示した』
もっとも、これが景気の単純な先行指数であるだけならばいいです。しかし、機械受注はむしろ2009年末からは前月比でプラスを続けており、欧州債務危機が再燃する中でも、過剰な設備投資が行われている可能性も否定できない状況になっています。そこで、経済産業省発表の鉱工業生産指数の中の製造工業の稼働率指数の推移を追ってみました。リーマン・ショック後、大幅に下落した稼働率指数は、2012年に入ってからも、2005年=100とした指数で90台前半にとどまっており、同ショック直前の105超の水準を大きく下回っています。いくら、機械受注が強く、設備投資が今後順調に推移するという予想があったとしても、稼働率が上がらなければ意味がありません。無駄な設備は、結局、減価償却費を通じて企業の営業利益の減少をもたらします。日本国内には、付加価値が高いコアの部分だけを残し、海外への投資比率を高めることが大切です。空洞化が進もうとも、企業が倒産してしまえば終わりです。ある意味、この円高はチャンスです。海外企業の買収にしても、海外での工場立地にしても割安で行えます。まず、目先の収益の回復が日本企業に求められるところです。
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