TIBORとは、いわゆる日本版のLIBORを指し、"Tokyo Inter-Bank Offered Rate"の略で、東京の銀行間取引金利です。この取引で、シティグループ証券、UBS証券において不正取引が行われていたことが判明、2011年12月16日付で行政処分がなされました。両証券会社ともに、一定期間のTIBOR及びLIBOR関連のデリバティブ取引(既往取引の履行に伴う取引等を除く)の業務停止命令と業務改善命令が出ました(詳しくは金融庁ホームページ)。多額の罰金が出てなかったのは実に残念なことです。このことから、LIBORに関する不正行為も最近になって巷を賑わせ始めましたが、金融当局はかなり前から事実を把握していたと考えてもいいと思われます。つまり、それが意味することは、LIBOR、TIBORに関する、この一連の不正取引がともに深刻な事態であるものの、LIBORの方が影響力が大きいということで、話題にもならなかったと思います。
行政処分の内容を読んでいると、シティグループ証券の場合は遅くとも2010年4月頃から、UBS証券の場合は遅くとも2007年3月頃から不正を行っています。不正の対処となったTIBOR(3ヵ月)は東京金融取引所において上場されているユーロ円金利先物取引の対象となっていることから、重大なことと認識、行政処分に至ったのでしょう。もっとも、英バークレイズは、2005年頃からLIBORに対して不正行為を行っていることからも、ロンドンシティでの手口が日本へと伝播、シティグループやUBSでの不正へと至ったのかもしれませんし、意外とLIBORとTIBORともにユーロ円が取引されていることから、金利差において違和感があり、発覚の原点となったかもしれません。米、英の金融当局も2008年には事態を把握しており、これを放置したことから金融機関の不正行為を助長した側面は否めないとのことです。上図は、TIBORレートの日本円とユーロ円3ヵ月の推移を示したものです。2008年9月のリーマン・ショックに遅れること、1ヵ月後にTIBORはピークを付けた後、大きく下落、2010年の後半には0.3%台前半ではり付いている状態が続いています。
せっかく、TIBORの詳細な時系列のグラフが作成できましたので、2007年以降の各年(注)のイールドカーブのグラフを作成してみました。銀行間取引金利でイールドカーブという言葉を使うのはやや違和感がありますが、他に用語が思いつかなかったため、この言葉を使います。右図にみると、2009年のカーブは、他の年と比べて短期から長期までの開きが大きく、Steepであったことが読み取れ、前年のショックの余波が及んだことが分かります。ここで、2012年7月15日山陽新聞朝刊に『欧米銀にカルテル疑惑、ロンドン銀行間金利、不正操作問題』という記事が掲載されていましたので紹介します。私が思うより早く、既に賠償問題が発生しており、邦銀も被告として係争しているそうです。以下記事引用。
『日米欧の大手銀行に対する訴訟も相次いでいる。米証券大手チャールズ・シュワブは昨年、07〜11年に購入した数百億ドルの金融商品に関し「不正操作で人為的に低い収益しか受け取れなかった』として、米バンク・オブ・アメリカやバークレイズなど11行を提訴した。三菱東京UFJ銀行や農林中央金庫が被告となっている係争もある。 米商品先物取引委員会によると、LIBORが影響を及ぼす金融取引の総額は900兆ドル(約7京円)超。世界の国内総生産(GDP)合計の10倍を軽く上回る額だ』LIBOR疑惑は、まだ全貌が解明されておらず、早急な真相究明が求められるところです。とろこで、金融市場、特にインターバンク市場では、金融機関同士の信用があってこその金融市場が成り立つのであって、相互の不信があれば取引は成立しません。これは、バブル崩壊後の金融危機の際、日本の金融機関の間で起こったことで、相手の金融機関の信用が信頼できず、短期金融市場にマネーが円滑に流れず、結果、中央銀行に頼った資金の融通により、日本の金融機関は救われたという経験があります。各国の大手金融機関が関わっていることから、英国のイングランド銀行(中央銀行)もとより、ECB、FRB、そして日本銀行等の金融当局の連携がうまくいかなかった場合、金融危機がさらに深刻化する懸念が出てきています。
(注)各年の6月末時点のデータを使用したもの。
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