2012年7月19日木曜日

過大な公共投資と深刻化する都市高速の老朽化問題

わが国は、1970年代前半に発足した田中内閣の元、日本列島を高速道路や新幹線など高速交通網で結び、地方の工業化を促進するとともに、過疎や過密、そして公害の問題を同時に解決する施策が実施されました。これは、いわゆる日本列島改造論というもので、長期間にわたって過剰な公共投資が行われ続けてきました。この結果、財政状況は著しく悪化し、名目GDPに対する政府の借金は200%超にも及び、世界の国々の中でも最悪の水準となっています。
 そのつけを払うため、消費税が2014年4月に8%へ、2015年10月に10%へと順次引き上げられる方向で国会にて活発な議論がされています。経常収支が慢性的に赤字の国ならば仕方がないという考えも出てきますが、消費活動がそうでなくても弱い日本経済にとって、消費抑制的な税制はマイナスであるといえます。まずは税収増を目指すのならばならば、所得税の累進性の強化、国民総背番号制の導入による所得の把握を進めるべきです。そして、支出面では、公務員給与の年俸化を議論するとともに、公共事業のさらなる圧縮が求められるとろこです。
 もっとも、公共事業は毎年削減されており、名目GDPに占める割合は低下しているのが実情です。右図は内閣府発表の『国民経済計算』による、公的固定資本形成の推移を表しています。図からは公共投資は毎年着実に減少し、名目GDPに対する比率も低下傾向にあることが分かります。しかし、私の主張は、北海道、北陸、九州で新幹線を延長する整備新幹線の計画も白紙に戻すべきであり、新規に実施されるあらゆる公共事業を撤回してでも、公共事業の抑制を図るべきであるというものです。そして、公的機関が行う公共事業は、既存に存在するインフラの補修に重点を置いたものに留めるべきであり、新規のものは一切認めないという方針を打ち出してもおかしくはない水準にまで、わが国の財政状況は悪化していると考えています。
 こうした中で、都市高速道路の老朽化に関する記事が2012年7月16日付毎日新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。同記事から首都高速、阪神高速ともに開業から40年以上を経過しており、補修が必要な箇所が雪だるま式に増えているという実態が分かりました。記事の題目は『都市高速、要補修箇所13万カ所、老朽化、阪神4年で3.6倍』です。以下引用文。
 『全国に六つある都市高速道路で補修の必要な損傷箇所は約13万カ所に上ることが毎日新聞の取材で分かった。いずれも管理会社・公社も「すぐに大規模な道路や高架橋の損壊につながることはない」としているが、首都高速は4年間で約1.9倍の9万6600カ所(09年度)、阪神高速は約3.6倍の2万9000カ所(同)に急増。老朽化や交通量の多さから急速に痛みが進んでおり、補修が追いついていない状況だ(樋岡徹也)』
 急速な高齢化に伴い福祉・医療部門における人員不足が顕在化する中で、大切な補修とはいえ、これら部門に人員を割く余裕はないのが、わが国の現状です。しかし、私が住んでいるエリアでも、新しい道路の開通や下水道の整備事業が着実に進んでおり、公共事業の勢いにストップがかかっているようには思えません。全国には、6つの都市高速があるほか、全国の高速道路網を取り扱っている旧道路公団が保有する高速道路網、そして本州と四国を結ぶ本四架橋などがあります。これらの維持・管理費は、利用者の料金から徴収されますが、国道、県道、市道など一般の道路や架橋は国や地方の財政によって賄われることとなります。
 とろこで、私が好きな映画に、リチャード・ドレイファス主演の『陽のあたる教室』(原題"Mr.Holland's Opus")があります。教育予算の削減の元、最後には音楽と演劇の授業がカットされるという米国の教育現場の実情が描かれている、感動的な人間ドラマを綴った映画です。このまま行けば、わが国でも同様な事態が起こりうるのではないかと考えています。

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