2011年12月31日土曜日

貿易収支と経常収支

最近、私は貿易収支、経常収支の動向を気にしています。巨額の財政赤字を賄うには、家計部門、企業部門、そして海外部門による資金余剰であることが必要です。消費税の税率引き上げが、民主党内で14年4月に8%、15年10月に10%と決定され、ほっとしているところです。あくまで、これは民主党内での決定であること、やはり政府部門の増税だけでは不十分であることを考慮すれば、これからも国債の市中での円滑な消化には、上記いずれかの部門での資金余剰がどうしても必要でしょう。以下は国民経済計算における恒等式で、記号は、Iは民間投資(企業の設備投資や家計による住宅建設)、Sは家計、企業の貯蓄、いわゆる民間貯蓄、Gは財政支出、Tは税収、EXは輸出等、IMは輸入等をそれぞれ示しています。

               (I-S)+(G-T)+(EX-IM)=0

 国民経済計算において民間部門(I-S)、政府部門(G-T)、海外部門(EX-IM)の貯蓄の過不足の合計は、統計的な約束ごとをベースにして恒等関係になるということを示したものです。政府部門が大きな貯蓄不足に陥っていますので、どうしても民間部門、海外部門の貯蓄超過によって賄わなければないないことを意味します。そして、式のなかで、将来的に民間部門、政府部門を合計したものがプラスになれば(つまり貯蓄不足になれば)、恒等式が成り立つためには、海外部門がマイナスにならなければないないのです(輸入等の超過)。
 事実、高齢化が進んでいることで家計部門の貯蓄は期待できません。企業部門の貯蓄も投資機会さえあれば将来の成長を促す原資となるため、一時的な余剰に過ぎないでしょうし、本来企業部門は貯蓄不足であるべきです。また、消費税増税をしたからといって政府部門が簡単に貯蓄超過になるとは考えにくいことを考慮すれば、最後は海外部門に期待することとなります。これには、恒常的な貿易収支の赤字と、国債の消化が海外からの資金流入に依存することを意味します。
 それでは、実際の統計はどのような状況になっているのでしょうか。リーマンショック直後の2008年末に海外需要の減少に起因し、貿易収支が赤字となっています。2011年に入ってからは3.11による生産停止や円高の定着による輸出の減少に起因し、やはり貿易赤字となっています(正確には貿易赤字となっている月が多い、貿易黒字の程度が縮小している)。2011年からの貿易赤字は、リーマンショック後の貿易赤字とは本質的に異なります。2012年に入っても同様な傾向が定着するならば、いずれは経常収支も赤字化します。そうなれば、どうしも海外投資家による我が国の国債への投資が必要となることを意味します。来年がポイントになるかもしれませんね。

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