2011年12月23日金曜日

労働分配率の低下

昨日、BSのプライムニュースを視ていたら、国民所得の分配について興味深い報道がされていました。ここ数年、企業サイドから、労働者の賃金の抑制という要求され続きました。結果、国民所得に占める労働者サイドの取り分である労働分配率は50%台強であるものの、低下傾向にあります。ならば、その反対側にある企業利益は増加しいるものと考えられますが、国民所得に占める割合は、労働分配率と同様に低下傾向にあります。名目GDPが減少していますので、必然的に労働者所得、企業所得とも減少していることとなります。
 このような状況下、国民所得に占める割合を高めているのは、減価償却費です。減価償却費は、過去行われた設備投資に対して発生するものですが、事実上企業の利益と変わりません。キャッシュフロー計算では営業活動に伴うキャッシュに分類され、企業の内部留保となります。営業利益の中の費用項目ですので、法で定められている範囲内では、税金の課税対象外になります。これが労働分配率及び企業利益への分配率を圧迫させる要因であるということです。上記グラフの注意点は雇用者所得及び企業所得は同系列であるのに対して、企業の資本減耗は別系列でかつ定義不明であり、企業会計でいう減価償却費とは異なる。
 しかし、ここで少し考えてみると、減価償却費の増加要因となった設備投資が適切であったかどうかという問題が残ります。液晶パネルに代表される過大な設備投資しかりです。主要な輸出産業である家電、自動車、携帯電話、パソコンなどの業種は、競争相手である韓国とは異なり、メーカーがひしめき合っています。この状況下、過剰な設備投資が行われ、利益率を低下させたということは否定できないでしょう。この結果が労働分配率の低下であり、雇用者所得の減少をもたらした一因であると考えられます。これが事実ならば、設備投資の意思決定という、企業経営者のスタンスや能力に問題があったのであり、その失敗を結局、弱い立場にある労働者サイドに負わせたことにも解釈できます。企業はより生産性を高める努力を進めるべきであり、努力の方向性は他の企業の猿まねをするのではなく、独自性の追求が求められます。


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