2012年5月6日日曜日

さらば、エルピーダメモリー

かつて、DRAMは日本の産業のコメともいわれた時代があった。その後、韓国のサムスン電子の躍進、日本企業は追い落とされ、日立製作所とNECのDRAM事業を統合、反撃の旗印となるべき存在であったのが、このエルピーダメモリーだった。今回、入札に成功したのは、米国のマイクロン・テクノロジーであることは、非常に皮肉なことです。サムスン電子が日本企業と消耗戦ともいえる技術競争を展開している中で、やや一歩遅れた技術を使用し、シェアを拡大したのが、マイクロンであった。つまり、所詮汎用品であるDRAMには、そんな進歩的な技術は必要とせず、同社は最先端を追わないで、技術的にこなれた頃に進出するというマーケッティングを展開しました。結果、日本企業は、韓国と米国の企業に挟まれるという形で疲弊し、エルピーダメモリーの倒産にまで至った。もっとも、韓国の2強であるサムスン電子とSKハイニックスの存在は大きく、市場シェアの6割以上を獲得、マイクロンが入札に応じたのも、同社のシェア低下が背景にあると思われます。
2012年5月6日付日本経済新聞朝刊に、このマイクロンによるエルピーダメモリーの買収に関する記事が掲載されていました。記事の題目は『エルピーダ、米マイクロンが買収へ、今日決定、支援総額3000億円』です。以下引用文。
 『会社更生手続き中のエルピーダメモリーは5日、米半導体大手マイクロン・テクノロジーを支援する企業にする方針を固めた。マイクロンによるエルピーダの買収額は2千億円超、設備投資の肩代わり分を含めた支援総額は3千億円弱になる見通し。日本政府は公的資金を投じていったん救済したエルピーダは、経営破綻を経て外資の手に渡ることになる。かつて日本勢が世界を席巻したDRAM市場から、最後の国内メーカーが姿を消す』
右図は、2011年のDRAM市場の世界シェアを示しています。この合併でマイクロンは2位に躍り出ることになります。もっとも、半導体製造の分野は裾野が広いです。シリコンウェハーでは信越化学が、半導体製造装置では東京エレクトロン、ニコンなどのメーカーが活躍しており、最終生産工程がなくなっただけだともいえます。そして、米インテルが製造するCPUの微細加工が22nmまで進化、それらの要求を満たすために上記の企業は研究開発を進めていることから、日本国内から半導体製造に関する技術が完全に喪失することはないでしょう。サムスン電子がDRAMやフラッシュメモリーの分野でシェアを拡大しようとも、インテルが売上高で1位の地位は不動です。
 今後は、微細加工の面ではASICでは余り期待できないかも知れませんが、ハードディスクに代わるSSDの需要は確実に増大しており、フラッシュメモリー大手の東芝が生き残れば、日本の半導体製造は大丈夫だと思います。

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