2012年5月21日月曜日

原油依存のロシア経済

長年、投資のことを考えている人や投資を実際に行っている人ならば、ロシアといえば、1998年の財政危機を思い出す方々が少なからずいるのではないでしょうか。当時、ロシア政府が発行する債券は、リスクが高いことから長期から短期へと極端に比重を移し、どうにかして資金繰りをしていたということを記憶しています。結局は、1998年8月17日に同国政府は対外債務の90日間の支払い停止を宣言、この影響は世界へと飛び火しました。これにより、米国のヘッジファンドであるLTCM(Long-Term Capital Management)が破綻、一部ですが西側の投資家に打撃を与え、同社の経営に参加していてノーベル経済学賞受賞者が批判の対象になったことが知られています。その後、ルーブルは大幅に下落、ロシア経済はほぼ壊滅という状態となりました。
国債のデュレーションが徐々にですが短くなっている日本のことも気になりますが、今日はロシア経済の現状について少しとばかり書かせていただきます。ここのところのロシア経済は、石油・ガスなどの天然資源の価格の高騰など背景に躍進しています。さすがに、2008年9月のリーマン・ショック以降、マイナス成長となっていますが、2010年に入ってからは順調に経済成長を続けているようです。最近では、イランの核問題に起因する原油価格の上昇もプラスへと寄与、低成長に苦しんでいる日米欧とは事情が異なります。もっとも、過度な石油やガスなどの天然資源への依存に対しては、ロシア自身危機感を抱いており、医薬品、高度化学、複合・非金属材料、航空産業、情報技術、ナノテクなどを有望分野として位置づけ、産業構造の多様化もしくは先進技術分野の育成を目指しています。
現在のロシア経済を説明している記事が『週刊エコノミスト』2012年5月1・8合併号に掲載されていましたのでご紹介します。記事の題目は『ロシア、原油依存体質から抜け出せず、目新しさに欠ける経済政策』です。以下記事引用。
『ロシア経済は、リーマン・ショック後の09年こそGDPは8%近くのマイナスとなったが、00〜08年までは年平均7%程度、10年からも4%台のプラス成長を続けた。
こうした近年のロシア経済は、原油価格の上昇に強く支えられてきた。近年、ロシアの名目GDPの約3割は輸出によって占められ、その輸出の約6割は原油および原油との価格連動性が高い石油製品と天然ガスによってロシアの交易利得(交易条件の改善によって生じる利益)が増加する。交易利得の増加により、内需が増加し、その一部が国産の財・サービスに向かうことで国内生産の増加がもたらされるという好連鎖が起きていた。逆に、09年のように原油価格が急落した場合には、GDPも急減する』
こうした中で、原油とともに利益をもたらしていた天然ガスに強敵が現れました。それは、米国で産出される非在来型天然ガス、シェールガスの存在です。すでに天然ガスの価格は下落傾向にあり、ロシア経済に影響を与えかねないまでになっています。ここ数年、ロシアは欧州と天然ガスの供給で対立してきました。そこで、ロシアが目をつけたのが、中国や日本などのアジア諸国でした。もっとも、わが国がロシアの天然ガスへの依存を今以上に高めることは危険であると思います。急な供給停止という危険があるからです。市場経済が進んだといっても、ロシアは大統領が好き放題している国です。エクソンモービルに投資をしても大丈夫だと思いますが、一方でガスプロムへの投資はお勧めできません。これがロシアだと考えています。
 右表は、上記記事に掲載されていたロシアの連邦予算と石油・ガス収入の現状と今後の見通しを示したものです。原油価格が1バレル当たり100ドル超の状態でも赤字となる予想となっています。財政赤字のGDPに占める割合は決して高くはありませんが、想定される原油価格が100ドルを見込んでいるという点でやや危ういという気がします。自動車など国内産業の育成に力を入れているロシアの報道をみたことがあります。この時に、日本から輸入された中古車の関税を大幅に引き上げるなど露骨な政策変更により極東の経済が混乱するという旨報じられていました。立ち直ったとはいえ、ロシアは、まだまだソ連時代の因襲や負の遺産を打破できていない気がします。

0 件のコメント:

コメントを投稿