日本の郵便局の事業が上場に向けて動き始めました。かつては財政投融資のシステムそのものの中心に位置し、本四架橋、関西空港など赤字まみれの事業の資金源となってきた郵便貯金、簡易保険が、財政の支援を受けず自立することはいいことでしょう。一般会計という国民の目に常にさらされるシステムから切り離すことで、日本の放漫財政の核心部であった特別会計は、これで民間企業からの資金に頼らざるを得なくなり、競争原理から予算そのものの圧縮へ向かえばという期待があります。つまり、日本郵政は、国に迎合するのですることなく、顧客と株主など、いわゆるステークホルダーに対して全力を尽くす必要があり、上場の意義はそこにあります。もっとも、財政支援により出来上がったシステムや店舗網を使ってのサービスであり、初期条件が異なることから、民営化を一挙に進めることで、銀行、証券など既存の金融機関の圧迫へとつながなければとは考えています。一方で、きっちりと競争原理の働いているのか、金融機関が民業の圧迫と抵抗しているのに対して、佐川急便やヤマト運輸など運輸業界は、郵便事業会社のシェアを奪い、逆に苦戦を強いられているのが日本郵政側であるのが面白いです。
そうした中で、2012年9月の日本郵政の中間決算が11月14日に発表されました。事業別では、かんぽ生命保険が引き続き契約者の減少が響き、減収となったものの、加入時に約束する予定利回りが高い契約が減ったことから増益となりました。一方、ゆうちょ銀行は、郵便貯金の残高が175兆7,967億円と前年同期比で0.5%増加しましたが、低金利下で運用難に陥っており、ここにも過度の金融緩和による弊害が出てきています。そして、問題なのが、郵便事業会社で、郵便物の減少が響き、減収となった上、赤字が続いてるようです。郵便が電子メールへと切り替わり、宅配便などが民間企業にシェアを奪われているのが実情でしょう。今日もアマゾン・ドット・コムで注文したブルーレイが、わが家に到着しました。発注日は前日ですので、驚異的なスピードといえます。因に、運輸業者は佐川急便でした。
日本郵政の上場に関する記事が、2012年10月26日付日本経済新聞Web刊に掲載されていましたので紹介します。日本郵政グループの連結純資産は11兆円であり、3分の2を売却すると最大で7兆円もの売却収入が見込まれています。しかし、株式相場が低迷する中での売却ですので、株主には恩恵があるものの、売却する側の国の収入は減少することになります。東日本大震災の復興財源へと充てられる予定ですが、タイミングがベストであるかはやや疑問が残ります。記事の題目は『日本郵政、2015秋に上場へ、来年にも融資参入。株売却収入、最大7兆円』です。以下引用文。
『日本郵政の株式上場計画が(10月)25日、明らかになった。持ち株会社の日本郵政は2015年秋をメドに株式売却を始める。国の持ち株比率を3分の1まで下げる道筋を示す見返りに、来年4月にも住宅ローンなどに参入する。事業範囲拡大には民間が反発しそうだ。1997年の東海旅客会社(JR東海)以来の国有企業の大型上場で、売却収入は最大7兆円を見込む。日本郵政は26日に下地幹郎郵政民営化担当相や総務省など関係省庁に原案を提示。29日に開く政府の郵政民営化委員会で了承を得たい考えだ。年内に上場準備室を設け、作業に着手する。(中略)郵政株の上場にあたり、今後焦点となるのが赤字の続く郵便事業の立て直しだ。現在は金融2社の黒字で穴埋めしており、民間投資家に郵政株を売るためには郵便事業の収益改善が不可欠となる』
衆院が解散となり、政治に不透明感が増しています。郵政民営化に反対していた議員が、現在、どの党に所属しているのか、さっぱり分からない状態にあります。急激に支持率が低下しているものの、現在、第1党になることが予想されている自民党が議席を伸ばせば、日本郵政は上場は順調に進むでしょう。しかし、国が3分の1の株式を保有する点でやや疑問があります。この保有株式により、ゆうちょ銀行を引き続き安定した国債消化機関にとどめようとする国側の思惑が感じられます。国が保有株式を全て売却した段階で、真の意味で郵政民営化といえます。まだまだ遠いという印象を受けます。
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