長かった米大統領選挙がついに決着が付きました。現職オバマ大統領の続投が決まり、決まった瞬間から米国の若い人々からの歓喜の声が聞こえてきました。NHKの報道では、若者の一人にインタビュー、大学卒業後の医療費負担が軽減されることから、オバマ大統領による医療改革を賞賛していました。テレビ画面を観ている限りでは、若者からは支持がオバマ大統領を支えたのではという印象を受けます。
一方で、選挙人の数ではオバマ大統領が、ロムニー候補を圧倒していますが、得票率では、オバマ大統領50%、ロムニー候補48%と僅差であったことが明らかになっています。このことから、この選挙は、米国社会を二分したともされ、混迷する時代の到来を予感させるものであったことが徐々に明らかになってくるでしょう。議会では、下院で野党、共和党が議席の過半数を維持しており、法案の成立には、民主党、共和党両党の協力が不可欠です。両党の対立が先鋭化した場合、米国経済は、いわゆる「財政の崖」へと突入することになります。対立した米国社会を修復するには、時間を要しますが、残された時間は2ヵ月しかありません。世界経済にとって最大の懸念材料となっている米国の「財政の崖」が注目されています。
同様に、赤字国債法案がいまだに議会を通過していない日本経済も「財政の崖」ともいえる状態となっています。地方自治体などでは、11月の予算の枯渇に備え、対応を急いでおり、支出の抑制にも入っていることが一部で伝わってきています。財政支出の抑制が、景気の悪化傾向が進んでいる、わが国経済をさらに後退させる懸念が出てきているといえます。こうした中で、内閣府による景気動向指数が10月6日に発表されました。一致指数が6ヵ月連続で低下、景気が後退局面に入った可能性が高いことが示唆されました。景気動向指数に関する記事が、2012年11月7日付朝日新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『景気4年ぶり後退か。指数、6ヵ月連続下落』です。以下引用文。
『内閣府は6日、企業活動の現状を示す経済指標が弱まっていることから、景気が後退局面に入った可能性が高いとする判断をまとめた。後退局面入りは2008年2月以来、4年ぶりとなる。6日発表の景気動向指数(9月速報)のうち、景気の現状を示す「一致指数」(05年=100)が91.2となり、前月を2.3ポイント下回った。前月割れが6ヵ月続いており、景気の判断を前月の「足踏みを示している」から「下方への局面変化」に引き下げた。来月公表される一致指数も前月を下回れば、景気が後退していることを事実上認める「悪化」に引き下げられる見通しだ。こうした判断は暫定的なもので、政府が「景気後退期」と正式に認めるには11ヵ月分のデータが必要で、1年以上かかる。ただ、民間エコノミストの間では、景気は今春を「山」に、すでに後退局面に入っているとする見方が多い』
右図は、特にマイナスの寄与度が大きい耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、鉱工業生産財出荷指数の3指標を取り上げてグラフ化したものです。2005年を100とした指数ですので、今回の景気拡大期は、リーマン・ショック直前と比べて低い水準にとどまっており、回復感に乏しいものであったことが伺えます。唯一のプラスであった大口電力使用量も、前年の節電要請の反動によるものかもしれません。景気の「山」を今春とする民間エコノミストの見方は適切であると思います。財政状況が厳しいものの、赤字国債法案を可決させ、政府は「財政の崖」を速やかに克服するべきであり、財政が足を引っ張るのではなく、少なくとも財政が中立的である経済運営に努めるべきでしょう。
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