2012年11月12日月曜日

大幅に下方修正される欧州の経済成長率

 米国の大統領選ばかりが注目され、欧州の問題に対する関心がやや薄れた感があります。ユーロ相場も最悪期は脱しており、EU諸国間で様々な合意形成がなされたことから、やや安心感はあります。しかし、欧州債務危機は、2009年10月のギリシャの債務危機に端を発したもので、まさに4年目に突入しようとしています。つまり、長期化の様相を呈しており、文化、経済、民族が多様な国々が統合しようとした、壮大な試みは引き続き試練の場に立たされています。米国の「財政の崖」、中国の成長率鈍化とともに、欧州債務危機により世界経済には先行き不透明感が依然として増しており、全ての問題が速やかに解決されてこそ、成長鈍化というリスクは回避できると考えています。

 今日は、久しぶり欧州に話題を向けてみます。暫定的に設立されていた欧州金融安定化基金(EFSF)の業務を正式に引きづく形で、10月8日に欧州安定メカニズム(ESM)が正式に発足しました。このESMは、財政危機が発生した国々に対して、財政再建の実施などを条件に緊急融資するほか、国債の買い入れや、政府を通じた銀行資本増強を支援するものです。欧州版の国際通貨基金(IMF)とも呼ばれ、支援強化により危機の拡大を抑制する役割が期待されています。もっとも、南欧諸国の失業率は、引き続き上昇傾向にあり、危機は脱していないことが分かります。上図は、ユーロ統計局発表のギリシャ、スペイン、イタリア、ポルトガルの過去1年間の失業率の推移を示しています。4カ国とも上昇傾向にあり、高い失業率がある限りは、財政危機と成長鈍化の悪循環から脱することができないといえます。つまり、失業者の増加は、税収の減少と同時に、失業手当などの財政支出の増加を意味するからです。


 こうした中で、EUから来年の成長率見通しが発表されました。ドイツ、フランスなどは辛うじてプラス成長を維持するものの、5月に発表された見通しよりも大幅に下方修正されています。ギリシャに至っては、0.0%→▲4.2%への下方修正であり、財政削減が予定どおり進まない恐れが出てきています。この成長率見通しに関する記事が、2012年11月8日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『南欧、マイナス成長続く。欧州委、来年見通し。独仏もゼロ%台』です。以下引用文。

 『【ブリュッセル=御調昌邦】欧州連合(EU)の欧州委員会は7日、域内の経済見通しを発表した。南欧では2013年もマイナス成長が続くと見込んでおり、税収減によって財政再建が一段と難しくなる。ドイツやフランスなど域内大国も13年まで0%台の成長にとどまり、ユーロ圏の経済をけん引していくだけの勢いは期待しにくい。
 欧州委はユーロ圏17カ国の実質経済成長率が12年でマイナス0.4%、13年は0.1%と予想した。今年5月の前回見通しに比べてそれぞれ0.1ポイント、0.9ポイントの下方修正。ユーロ圏は13年もほぼゼロ成長にとどまる。欧州委は欧州経済について「荒波の中の航海」と表現した。ユーロ圏は14年に1.4%成長になるとしたが、危機対策次第の面が強い』
 同記事は、スペインの成長率の見通しについても言及しています。13年の成長率は5月見通しの▲0.3%→▲1.4%へと大きく引き下げています。この結果、同国のGDPに対する財政赤字の比率は、3%以内に抑える欧州委との約束を大きく上回り、13年で6.0%、14年で6.4%と予想しています。南欧諸国の成長率の下方修正は、欧州債務危機の最大のリスク要因です。そして、これに巻き込まれる形となった支援する側のドイツやフランスでの成長率の大幅下方修正は、南欧諸国への支援に対する国内の世論が厳しくなり、危機対策が順調に進まなくなることを意味しています。危機対応次第に依存している14年のユーロ圏のプラス成長への回復は難しいのが実情です。

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