2009年、国連総会の場で鳩山首相が二酸化炭素排出量の25%の削減を公約し、世界各国の総会参加者から拍手喝采を受けてから3年が経ちます。2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う原発事故の発生と、その後の原発再稼働の停止により、この公約は不可能になりました。かつて、景気回復が遅れ、デフレ経済が進むものの、環境に優しい日本経済を、私は誇りに思っていましたし、同首相は国の進むべき方向は明確に示していたと賛同をしていました。
それでは、現在の日本経済に対して何を誇りに思うのかと問われると、返す言葉がないのが実情でしょう。財政赤字は世界に例をみない水準ですし、変な機能ばかりついたガラパゴス化した製品ばかり発売する日本企業にもかつての勢いはありません。政治は完全に機能不全に陥っています。そして、エコ先進国と呼ばれた日本は、天然ガスなど化石燃料を大量に輸入し、将来におけるエネルギー政策も策定できずにいます。国土が狭く、地震が頻発する日本にとって原発を推進することは、そもそも不可能であったのです。確かに、原発の再稼働に反対する人々の気持ちはある程度理解できます。しかし、即刻、原発ゼロという政策は現実的に不可能であること、そして原発のそば住む人にとってはマイナスであるものの、二酸化炭素の排出は確実に抑制できることから、原発再稼働へと向けた政策には一理あります。上図は、国別の二酸化炭素排出量を示しています。2009年時点で、中国が1位となっており、新興国の排出量規制なくして、地球温暖化の問題は解決できないのです。中国を排出量削減の枠組みに取り込むためにも、日本の排出量削減は不可欠です。
こうした中で、COP18が11月26日から12月7日までカタールの首都ドーハで開催されます。25%といったほぼ不可能な目標を掲げて参加する予定の日本は、どのような扱いになるのでしょうか。環境省は年内をメドに新目標を掲げるとしていましたが、衆議院の解散、総選挙で頓挫する事態に陥っています。エネルギー政策の基本をどうするのかも問われるべき選挙となっているものの、2年近くたった今でも策定ができていないのは、政治の機能不全に他ならないと思います。COP18に関する記事が、2012年11月22日付朝日新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『COP18、温室ガス25%削減、見直し作業遅れ。政府、目標変えぬ方針』です。以下引用文。
『政府は、26日に開幕し地球温暖化対策を話し合う気候変動枠組み条約締約国会議(COP18)に向けた基本方針を固めた。脱原発路線への転換で事実上達成できなくなった今の温室効果ガスの排出削減目標を、取り下げずに交渉に望む。見直し作業が遅れたためだが、原発増設を前提とした従来目標を維持するあいまいな姿勢が、日本の発言力を低下させる恐れもある。今の目標は「排出量を2020年に90年比で25%削減」。主要国が意欲的な目標を掲げる条件つきで、09年に当時の鳩山由紀夫首相が国際公約として打ち出した。しかし、原発事故を受け政権が9月に「30年代に原発ゼロ」のエネルギー戦略を決め、原発頼みだった削減目標も行き詰まった。10月には野田佳彦首相も達成が厳しいと認めた。しかし、政府はCOP18には、「25%削減目標」を維持したまま臨む方針だ。月内に関係閣僚委員会で正式に決める。この目標をめぐっては、環境省は当初、エネルギー戦略決定後に見直しを急ぎ、COP18で新目標を示すことを検討。しかし戦略決定は9月にずれ込み、政権が原発再稼働の方針をあいまいにしたことで、20年時点で原発をどれだけ動かすかなどを検討する経済産業省の作業を遅れた』
政策決定が後手に回っているため、このような状態で首相がCOP18に参加することになりました。何も決まっていない国の首脳に対して、他国の首脳はまともに相手をしてくれるのでしょうか。普通の商取引でも、相手がいくらで売るのか明確にしていない商品に対しては、買う側は購入の意志を示しにくいといえます。むしろ、会議への不参加もあり得るのではないでしょうか。東日本大震災の復興事業にも遅れが目立っています。何も決定できない状況で、かつ総選挙の結果次第では、消費税率の引き上げなど今まで決めてきた重要な法案も覆されかねません。何を決めるのかだけが政治ではありません。政治には、それ以上にスピードが求められるのです。
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