2012年11月19日月曜日

スマートフォン、タブレットの躍進による業界の変動

 スマートフォンやタブレット端末がいくら普及しようとも、企業ユーザーを中心にパソコンの需要はなくならないと考えていました。しかし、マイクロソフトのウィンドウズ8が発売されてから、考えを改めました。それは、同OSの発売により、タブレット端末とパソコンの区分が曖昧となったからです。タブレット端末にキーボードを付ければ、パソコンとなり、パソコンからキーボードを外せば、タブレット端末になるからです。アップルも同様のことを考えており、現在、Macに使用されているインテルのCPUを自社設計したチップに切り替え、スマホとタブレットとの親和性をより高めたパソコンの発売を目論んでいることがネット上の記事ですが掲載されていました。これは、アップルがA5、A6と新たなCPUを設計するなかで、自らの設計能力に自信を高めていること、やはりインテルが提供するCPUは高価であることなどが背景にあると思います。

 そうした中で、インテルの業績悪化と株価の低落が深刻となってきました。もっとも、パソコンの需要の低迷は、景気後退を背景に企業ユーザーで伸び悩んでいること、一般の消費者でウィンドウズ8の発売を待ってから購入という買い控えが生じたことによるものでしょう。ならば一時的な問題であるともいえます。しかし、クアルコムなどのスマホ関連の半導体を製造する企業の業績は好調であること、ウィンドウズ8がタブレット端末側から攻め込み、ならばCPUもインテル以外を採用という事態も現実味を帯びてきています。インテルにとっては予断を許さない状況にあるといえます。これからは、同社も真剣にスマホやタブレット端末用のチップを製造することも想定するべきであり、変化の激しいIT業界の負け組になることも十分にあります。


 2012年11月10日付日本経済新聞朝刊にインテル、クアルコムの業績に関する記事が掲載されていましたので紹介します。この記事を読んでいて驚いたのは、売上高、最終損益ベースでは、クアルコムは、世界最大の半導体メーカーであるインテルと遜色のない決算を出していることです。10分の1といった規模ではなく、3分の1程度まで肉薄しており、インテルが手を打たなければ、逆転も十分にあるといえるでしょう。記事の題目は、『米半導体、スマホで明暗。クアルコム、インテルに迫る時価総額』です。以下引用文。

 『【シリコンバレー=奥平和行】米半導体業界で、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)など携帯情報機器への取り組みが業績の明暗を分ける傾向が鮮明になってきた。7〜9月期はパソコンの頭脳に当たるMPU(超小型演算処理装置)で約8割の世界シェアを握るインテルが減収減益に陥る一方、クアルコムなど携帯向けに強いメーカーが業績を伸ばした。(中略)
 米調査会社IDCによると、7〜9月期の世界出荷台数はスマホが前年同期比46%増の1億8110万台、タブレットが同50%増の2780万台と大幅に増えた。パソコンは景気減速による買い控えに加えてスマホやタブレットとの競争激化が響き、同9%減の8779万台。パソコン陣営への逆風が強まっている』
 しばらくの間は、パソコンはなくならないでしょう。それは、スマホ市場を開拓したアップルのiPhoneですら、最終的なデータの管理にはパソコンが必要だからです。iTunesでの楽曲管理ばかりでなく、ある程度のデータはクラウド上に保存できるとはいえ、大切なバックアップデータを作成するにはどうしてもバソコンを使わなければなりません。それでも、メールやホームページのチェックだけですと、むしろパソコンよりもスマホの方が便利です。一台の端末で、音楽が聴けて、ビデオクリップを観ることができ、写真を撮ることもできるのは、スマホだけです。予想される未来は、肝心な作業はパソコンで、それ以外の作業はスマホといった具合に、棲み分けが進むか、それとも、OSの一体化が進み、カテゴリーの区分ができないくらい融合が進むかの2つでしょう。
 しかし、インテルにとってマイナスであるスマホやタブレット端末の興隆は、日本企業にとってプラスであることには間違いないでしょう。IGZOの液晶パネルに期待を寄せるシャープのみならず、スマホの部品は、微細加工を得意とする日本企業の独断上である上、ここにきて素材分野でも日本企業の活躍が期待されています。2012年11月11日付日本経済新聞朝刊に、スマホの素材で活躍する日本企業に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『スマホ素材、日本が攻勢。クラレや住友化学』です。以下引用文。

 『国内素材大手がスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)などに使われる高機能材料を強化する。クラレは鮮明な動画の表示に必要なフィルム材を量産。住友化学は高速の無線通信などに使う半導体材料の生産能力を25%増やす。世界で3兆円市場とされる電子部品向け高機能材料では国内素材大手が高いシェアを持つ。米アップルをはじめスマホ端末では中国や韓国製が世界を席巻しているが、素材分野では技術力を持つ日本勢が国内で生産、輸出する構図が鮮明になってきた。(中略)
 (韓国や中国に)対して(日本企業は)素材分野では長年培った技術力を背景に世界で高いシェアを誇っており、アップルやサムスン電子などスマホやタブレットに広く採用されている。最近では端末の高機能化や軽量化のため素材に求められる性能も高まっており、素材大手は成長市場開拓の好機とみて事業拡充を急ぐ』

 スピードを速くするには、CPU、メモリー、HDD、SSDをスピードアップすれば問題は解決するのがパソコンです。一方、スマホには、スピードはもちろんのこと、省電力化、軽量化、頑強さなどを同時に満たすことができる部材が必要とされます。これを満たす部材には緻密さが求められるのでしょう。その結果、スマホやタブレットでは、日本企業が製造する、きめ細かな部品や素材が独壇場となっています。アップルのiPhoneを購入すれば、日本企業が潤うという状況は、iPhoneユーザーの私にとって嬉しいことです。

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