リトアニアは、歴史的にも大国ロシアに対する警戒感が強いといえます。加えて、ロシアがウクライナへの天然ガス供給を停止するという事態が発生、安定的なエネルギー源を確保することは、リトアニアにとって最優先の課題となっているのです。そして、エネルギー自給率を上げ、ロシア依存からの脱却を目指すことの答えが、新規の原発建設であったのです。工場の経営者などは電気料金の上昇を懸念し、原発建設に賛同しているようですが、大規模な原発事故があった今、国民投票の結果は、原発の安全性に疑問を持っている人々が多数派を占めるという事実を示しています。しかし、この建設を進めていた原発は、エストニア、ラトビアにも電力を供給する予定であり、法的な拘束力がないことから、今回の結果をもってすぐに建設中止に追い込まれることはないそうです。
日本でも、将来のエネルギー政策に対して国民投票を選択することは十分に考えられます。原発ゼロという意見もありますが、企業サイドの言い分もあります。大多数の国民が同意した結果ならば、政府も推進しやすいと思います。こうした中で、再生可能エネルギーの開発は不可欠です。私の個人的な意見ですが、洋上の風力発電がもっとも有力であると思っていますが、もう一つの柱である太陽エネルギーも着実な推進が求められています。太陽光発電の買取価格に関する記事が、『週刊エコノミスト』2012年10月23日号に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『高すぎた太陽光発電の買取価格、安価な海外製電池の流入急増』です。以下引用文。
『日本で「メガソーラー」と呼ばれる発電能力1メガワット(=1000キロワット)以上の大規模な太陽光発電所のプロジェクトが相次いでいる。今年7月から始まった再生可能エネルギーの固定価格買取(FIT)制度で、太陽光は1キロワット時当たり42円という国際的にも高い水準に買取価格が設定されたためだ。ただ、安価な海外製の太陽電池の流入で、必ずしも国内産業の振興につながっているとは言いにくい。買取価格は毎年見直しの対象となるが、急な価格引き下げは太陽光発電の導入量減少につながりかねず、価格見直しで難しい対応を迫られることになる。(中略)米商務省は、10月10日に中国製の太陽電池が不当に安い価格で輸入されているとして、反ダンピング(不当廉売)と相殺関税を課すことを最終決定しました。対象となるのは、中国製の結晶シリコン型太陽電池で、反ダンピング関税は18.32%から最大249.96%となります。米企業の被害が最終的に認定されれば、米国際貿易委員会(ITC)の11月下旬の会合で、実際の命令を出すそうです。一周遅れという感は否めない、日本での固定価格買取制度の開始です。製造業が円高により疲弊してきています。ここは、同制度を国内産業の育成にも結びつけたいところです。従って、中国メーカーなどによる不当廉売を監視するとともに、事実が認められた場合、速やかな対応が求められるでしょう。因に、太陽光発電のFIT制度を導入するドイツでは1キロワット時当たり19円、スペインが同12円、イタリアが同16円となっており、わが国の太陽光発電の買取価格が如何に高いかが分かります。
世界を席巻した中国メーカーも、安泰ではない。現在の世界最大手、サンテックパワーは12年4〜6月期の売上高が前年同期比で4割以上減少した。また、インリー・グリーンエナジーやトリナソーラーも売上高を大きく落とした。サンテックは今年8月、トップ交代を迫られるなど、供給力の急拡大と世界的な需要低迷のバランスが取れず、窮地に立たされている。
そうしたなかで導入されたのが、日本のFIT制度だった。太陽光発電協会によると、FIT制度実施を目前にした今年4〜6月、国内の太陽電池の総出荷量は前年同期比72%増の445メガワットと急増した。このうち、国内の生産量は同43%増の313メガワットと伸びている一方、輸入は3.3倍の132メガワットとさらに急激に拡大している。拡大する日本市場は、苦境にあえぐ海外メーカーにとっても魅力的な市場であり、輸入の多くは安価な中国メーカー製とみられる。今年7月以降はさらにこの傾向は顕著となっているだろう』
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