韓国のサムスン電子の躍進は、目を見張るものがあります。米国で最も有力とされる企業の一つである米アップル社と正面から特許権で争うなどすることは、今の日本の企業には不可能かもしれません。ソニー、パナソニックなどのブランド力も、サムスン電子に劣っているとされており、凋落する日本経済を象徴する状況であると思います。
これは、ウォン安による恩恵があり、円高さえ克服できれば、日本企業は自ずと復活してくるともいえます。右表は、韓国ウォンの対米ドル相場の推移を示したものです。リーマン・ショック前は1米ドル=900ウォン強だったものが、2008年には1300ウォン弱まで下落、2012年8月では1100ウォン強でやや落ち着いている感があります。絶好調ともいえる韓国経済には、死角がないかと思えば、実は経常収支は黒字が定着する一方で、依然として対外純負債を抱えていることが分かりました。この点について言及している記事が、『週刊エコノミスト』2012年10月16日号に掲載いましたので紹介します。記事の題目は『リスク選好強まればウォン高に、日系輸出企業にとってチャンス』です。以下引用文。
『韓国は日本と同じように輸出主導で経済を支えているため、韓国の経済構造は日本と似ているように考えてしまいがちだが、実は大きく異なっている。韓国の経常収支は日本と同様黒字だが、日本と違って韓国は対外純負債国である。日本が世界最大の純債権国であるため、韓国の対外純負債が小さいように見える。だが対名目国内総生産(GDP)では10%前後の純負債となっており、金額としては世界最大の対外純債務国の米国の16%程度と比べてもそれほど小さいとは言えないだろう。このことは、世界経済や金融資本市場が不安定化した時、ウォンは売りにさらされやすい脆弱な通貨であることを意味している。逆に対外純債権国の通貨である円は、こうした時には買い戻されやすい通貨である。日本では韓国はウォン売り介入を頻繁に行って、ウォンを割安に維持することにより自国の輸出競争力を高めているとの見方が根強い。だが、韓国中央銀行の介入姿勢は他のアジア諸国と比べても強いわけではない。韓国は前述の通り対外純債務国、つまり海外からの資金調達に頼っているので、自国通貨を押し下げるというインセンティブは本来あまり強くない。ウォンが下落すると海外から調達している国内の主体が損失を被る可能性があるためである』
輸出を大きく伸ばし、韓国経済は力強い回復を示し、加えて経常収支が恒常的に黒字化、外貨準備高も相当の額になっています。1997年に発生したアジア通貨危機の二の舞を踏むことは決してないと考えていましたが、依然として潜在的なリスクはあることには驚きました。また、円と比べてウォン安が進んでいることは分かりますが、日本経済での物価が下落する一方で、韓国経済はインフレ傾向にあります。2008年には5%を上回るまで消費者物価指数が上昇、インフレ率の差により、購買力平価でみた日本円と韓国ウォンの差は、時間経過とともに縮小することになります。ウォン安が過度に進んだ場合、物価上昇ばかりでなく、輸出企業にとってもマイナスの影響があるようです。ウォンが対米ドルで50ウォン上昇した場合の影響についての記事が、2012年11月4日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『ウォンの研究。為替政策、国内に異議』です。以下引用文。
『「ウォン高が営業外(損益)で5700億ウォン(約400億円)の悪影響を及ぼした」。サムスン電子の李明振(イ・ミョンジン)専務は10月26日の2012年7〜9月期の決算発表で、こう発言した。サムスン電子など多くの韓国企業にとってウォン安が心地よいのは間違いない。(中略)一方で、足元のウォン高傾向に胸をなでおろす企業も少なくない。例えば鉄鋼大手のポスコ。通貨高は鉄鉱石などの原料輸入コストを引き下げるが、製品出荷先は国内が多いため、売価への為替の影響は少ない。ウォン相場が年平均で1ドル=1108ウォンから1058ウォンまで50ウォン上昇すると企業業績はどうなるか。韓国のウリ投資証券などがまとめた試算ではサムスン電子の純利益は2兆760億ウォン減るが、ポスコは6610億ウォンの増益要因になる。ウォン安は韓国企業にとってプラスに働くとは限らないことを示している』
最近では、韓国では格差是正が叫ばれています。それは、サムスン電子に代表される輸出企業の恩恵を受けることがない人々のことです。サムスン電子など有力企業に就職できるかどうかで、置かれている立場が大きく異なるのです。特に、これから就職しようとしている若者などは就職難で苦しんでいる姿を、ニュース番組を通じてよく目にします。これは、華やかな大手輸出企業とは違い、韓国の一般の人々が置かれている状況はかなり厳しことが伺える事実であるといえます。
文中日本と韓国は輸出主導とありましたが、日本のGDPに占める輸出の割合はアメリカに次いで低い割合であり、輸出主導とはいえない。三橋貴明氏の本でも読んでたしかめてください。
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