この一連のブログの中で、邦銀が復活しつつあることを書きました。その中には、イスラム金融を通じたブルネイへの融資、アジア・太平洋地域での貿易金融でのシェアのアップ、チリの鉱山会社への融資など、特に国境を超えた活躍が目立っています。これは、逆の意味で、国内経済に減速感があり、銀行への資金需要が減退していることが背景にあり、新たな市場を求め、邦銀が海外へと進出するのはやむを得ない選択であると考えています。以前は低い格付けの元で、苦しい経営を強いられていた邦銀ですが、欧米の金融機関の格付けが相次いで引き下げられている中で、ここへきてビジネスチャンスが広がってきています。
まず、協調融資の分野で3メガバンクがシェアを高めている件についてです。特に、3メガ銀行の中でやや元気がない、みずほのシェアのアップが著しいことに注目しています。同社は、システム統合が遅れたことなどで、東日本大震災の時に、大規模なシステム障害を起こしました。その結果、みずほ銀行と持ち株会社であるみずほフィナンシャルグループに対して、金融庁は業務改善命令を出しました。株価も低迷しており、先行きが懸念されていました。しかし、人材面で底力があるのか、この時点での躍進には驚いているところです。協調融資に関する記事が2012年10月22日付日経新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『協調融資、邦銀シェア拡大。1〜9月、3メガで14%に』です。以下引用文。
『複数の金融機関が共同で融資する協調融資(シンジケートローン)の世界市場で邦銀のシェアが高まっている。今年1〜9月にみずほフィナンシャルグループら3メガ銀行が主幹事となった融資額のシェアは14.3%となり、前年同期比3.8ポイント増えた。日本市場が拡大した一方、欧州債務問題のあおりで欧米市場が縮小し、欧米の金融機関がシェアを落とした』
この記事は、トムソン・ロイターが調べた集計に基づくもので、欧州問題で企業の資金需要が低迷、欧州市場が4割減となったこと、米州も2割縮小したことも記述しています。一方で、日本市場は、円高が追い風となり、国内企業による海外企業の買収資金への融資が増えたことや、電力会社による火力発電の燃料調達費が増加したことが背景にあるとしています。同じ調査によるものと思われますが、「プロジェクト融資」の分野でも邦銀が存在感を高めているようです。これに関する記事が2012年10月22日付読売新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『3メガ銀、インフラ融資で攻勢』です。以下引用文。
『3メガ銀行が、鉄道などのインフラ(社会資本)整備や資源開発などの事業に対してお金を貸す「プロジェクト融資」を伸ばしている。今年1〜9月に主幹事としてまとめた融資の総額は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が初めて世界で1位(前年同期は2位)となり、三井住友FGが3位(同3位)、みずほFGが4位(同13位)に入った。欧州危機で欧米の金融機関が市場占有率(シェア)を落とす中、日本の銀行が攻勢をかけている。プロジェクト融資は、事業にかかわる企業に対してではなく、事業そのものにお金を貸す形をとる。発電所や新設のシェールガスなどの資源開発、道路や鉄道などのインフラ整備が主な案件だ。長期間にわたる事業が多いため、銀行にとって採算性の判断などが難しいとされるが、その分、通常の融資より高い金利を付けて貸し出せる』
「プロジェクト融資」の具体的な案件には、三菱商事がカナダのシェールガスの権益を取得して開発を進めている大型プロジェクへの融資、インドネシアやベトナムの水力発電所の建設資金への融資などがあり、円高をフルに生かした行動であるといえます。日本の金融機関は、潤沢な預金を地道に集める一方で、欧州の銀行は市場から資金を調達する割合が高いことに特徴があります。5位に入っているフランスのソシエテ・ジェネラルも市場からの資金調達の割合が高く、信用収縮の中で資金源が乏しくなっていることが予想され、今後は事業を縮小せざるを得ない状況にあると思われます。つまり、邦銀にとって、今がビジネスを広げる、またとないチャンスであり、世界が信用収縮に陥っている中で、与信拡大を行う邦銀の存在は世界経済とってプラスとなっています。
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