2012年11月18日日曜日

国内で運用できない銀行と大手5行の決算

 日本国内の銀行が運用難で喘いでいます。景気後退を背景に、企業の資金需要が低迷する中で、金融機関の間で貸出競争が激化した結果、貸出金利は大きく低下、収益環境は厳しさを増しています。そして、国債へと投資が集中する一方で、IMF、世銀の総会は、日本の金融機関による過剰な国債保有に対して警鐘を鳴らしています。ならば、株式の保有となるわけですが、日経平均株価は、他国の株式市場と比べても、著しくパフォーマンスに低く、今回、保有株式の減損処理の影響もあって、国内大手5行の2012年3月期中間連結決算が3割の減益となりました。
 もっとも、欧米の金融機関のプレゼンスを低下させている国際金融市場においては、国内の3メガ銀行の海外融資の合計は37兆円にも達し、前年から18%と大幅に伸ばしています。しかし、右図が示す通り、全国銀行の預金残高は600兆円近くに達しており、海外での活動は今ところ収益源となっているものの、(海外融資/実質預金)は6%に過ぎず、やはり国内でのしっかりとした運用が求められています。これ以上の国債への投資は、利回りの反転の危険性から、現在の水準からむしろ減少させる必要があるといえます。株式も景気に不透明感が増している中で、底割れのリスクはむしろ高まっています。ならば、しっかりとした貸し出しでの運用ということになりますが、国内での資金需要は、冷え込んでおり、全国銀行の貸出金の残高は2008年の434兆円から2011年には421兆円と減少しています(2011年は前年より増加)。
 2012年11月15日付日本経済新聞朝刊に5大銀行グループの決算に関する記事が掲載されていましたので紹介します。こうして、大手銀行グループの決算内容を比較してみると、業務純益ベースでは三菱UFJ、みずほ、三井住友への集中が進み、りそな、三井住友トラストはやや出遅れ気味となっていることが分かります。通期予想の税引き後利益でも同様な格差がみられます。しかし、私の記憶では、三菱UFJ、みずほ、三井住友ともに100兆円を上回る規模の資産を有しており、その割には利益が出ていない気がします。記事の題目は『5大銀、今期14%減益、株式減損、4〜9月期7000億円超』です。以下引用文。
 『14日に出そろった大手銀行5グループの2012年4〜9月期決算は最終利益が前年同期比31%減の約1兆400億円となった。保有株式の減損処理が7000億円を超え、国債売買による多額の利益計上を帳消しにした。5グループは下期に海外貸し出しを伸ばすなど業績改善を急ぐが、通期でも14%の減益になる見通しだ。
 3メガ銀行に三井トラスト・ホールディングス、りそなホールディングスを加えた5グループの4〜9月期決算が4年ぶりの減益となったのは、保有株式の価格下落が主因だ。
 上位株主となっているシャープやパナソニック、新日鉄住金、関西電力などの株価が3月末に比べ約3〜7割下落。時価に合わせて株式取得時の簿価を切り下げ、損失を出す減損処理を軒並み迫られた。合計の処理額は7110億円と、リーマン危機直後の08年度下期(約1兆700億円)以来の大きさとなった』
 日本の株式市場は、もうダメかもしれません。リーマンショック後、ダウ工業株30種平均が1万ドル、日経平均株価が1万円という時期がありました。その後、ダウ平均は、11月にヘッジファンドの決算などがあるため、ここのところやや軟調気味であるものの、1万2500ドル前後で推移している一方で、日経平均はやっとのことで9000円台になった程度です。今後、米国、欧州で同時に景気後退が進んだ場合、日本の株式は底割れするかもしれません。ならば、国内での貸し出しを増やす必要があります。しかし、貸出金残高はピーク時よりも減少している上、収益に直撃する貸し出し金利は、ここのところ急落しています。
 金融緩和をすれば、資金需要が生まれ、景気が回復するという認識があります。しかし、個々の経済主体の将来への期待心理が良くなくならない限りは、資金需要は拡大しませんし、設備投資へと結びつくこともありません。日本銀行は引き続き金融緩和を進めていく姿勢をとっていますが、金融政策は引き締め時に効果があるのであって、緩和時には余り効果はないと言われています。バブル発生がもたらした金融危機の影響が20年以上もたった今も残っているのです。そして、こうした中で、本来、効果を発揮するのが財政支出です。しかし、政府の債務残高が危機的な水準へと増加する中では、財政支出の拡大は将来の増税を予想して、家計などは貯蓄へと資金を向かわせることとなります。それが、所得の減少を続く中での預金増加であり、結果として需要の減退へと結びつき、需要減→所得減→需要減→所得減といった負の連鎖から抜け出せないのが日本経済であるのです。日本銀行に頼った政策には限界がきており、過度の金融緩和が、金融機関の収益悪化となる貸し出し金利の低下の一因となっているかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿