2012年2月6日月曜日

欧州銀の負の影響

欧州の銀行が好調なアジア経済にマイナスのと影響を与えようとしています。日本の銀行は、主に調達した預金を元手に、融資や証券等に資金を融通し、利益を得ています。それに対して、欧州の銀行は、預金ではなく、債券、CPの発行や銀行間の取引ににより資金を調達している割合が高いことに特徴があります。Bloombergの資料(注)によれば、欧州の銀行の預金依存度で50%を下回っているのは、コメルツ銀行(独)、クレディ・アグリコル(仏)、バークレイズ(英)、ソシエテ・ジェネラル(仏)、BNPパリバ(仏)などがあり、日本でもその名が知られる銀行ばかりです。昨年、倒産したデクシア(ベルギー)に至っては30%を下回っていたようです。内閣府『世界経済の潮流2011年下半期世界経済報告』にデクシアに関する記述がありましたので引用します。以下引用文。
『こうした中、11年10月にフランス・ベルギー系の銀行デクシアが実質破綻に追い込まれた。デクシアは南欧諸国等向けの与信を多く抱えているが、11年7月に行われたEU金融機関に対するストレステストには合格していた。しかも、景気悪化シナリオ下でもTier1比率が10.4%と合格基準(5%)を大きく上回っていた。それにも関わらず破たんしたのは、資金調達環境が急速に厳しくなったからであるとみられる。デクシアの資金調達構造をみると、他行と比べて預金への依存度が低い。デクシアは短期で資金調達して長期貸出に回していた模様だが、インターバンク市場環境等の急激な悪化により資金調達が出来なくなったと考えられる』
日本の銀行でも経営破綻はあり得ない話ではありませんが、直前のストレステストを余裕でクリアしていた銀行がいきなり破綻ということはレアケースであると思います。どちらかといえば、悪い噂が一般市民の間にも流れており、他行と比べて定期預金等に高い金利を提示している銀行がつぶれたケースはあります。やはり預金の依存度が低い銀行は、いざという時の資金調達ができないため、市場に混乱がある時期はバランスシート以上のリスクを抱えていることを示しています。
ここで、小額ですが、私もユーロ建て外貨MMFを持っており、運用先が気になりましたので調べてみることにします。右表が某証券会社の目論書に掲載されているユーロMMFの投資先のリストです。上記の記述した預金比率の低い銀行であるバークレイズ、ソシエテ・ジェネラル、BNPパリバなどが登場していますので驚きました。投資比率は最大でEDF(フランス電力公社)の5%強ですが、ほかの運用先は4%前後となっています。以前、米国の電力関連企業であるエンロン社が倒産した際、比較的安全だとされているMMFが損失を抱え、元本割れの可能性が出たことがあります。この表をみると、いくらMMFといえどもリスク商品であることを痛感させてくれます。先日、2012年1月24日付日本経済新聞朝刊に欧州の銀行のリスクがアジア経済に与える記事が掲載されていましたので引用します。題目は『欧州銀リスク、アジアに影、融資や債券投資残高120兆円』です。以下引用文。
『欧州債務危機の余波が世界経済をけん引しているアジア経済を下押しする懸念が出ている。欧州銀行の融資や債券投資に占めるアジア新興国の比率は高いうえ、アジア新興国の輸出額に占める対欧輸出比率は1割を超える。年明けの市場では緊張が和らいでいるが、自己資本増強を迫られる欧州銀の資産圧縮などで再び危機が表面化すればカネとモノの両面でアジアに波及するリスクは残る。
国際決済銀行(BIS)のデータから、国際金融における欧州銀の存在感を計算してみた。世界全体の国境を越えた与信残高(融資と債券保有の合計、昨年6月末)は32兆ドル(約2,500兆円)を超え、6割にあたる19兆ドルは欧州銀だ。ほぼ欧州連合(EU)圏と重なる欧州先進国向けが10兆ドル弱を占める』
これは、欧州の銀行が自己資本比率を高めるため、資産圧縮を積極化すれば、欧州に依存しているアジアや南欧諸国は資金面でタイトとなることを示しています。結果、金利上昇などをもたらし、経済成長が抑制される懸念があります。右図は、国外・域外からの与信に占める欧州銀の割合を示したものです。アジア諸国ばかりでなく、ロシア、ブラジル、インドなどBRICs諸国も欧州銀に依存していることがわかります。同様に日本も欧州銀行から与信の割合は40%と決して低くはなく、わが国の株式市場が構造的に外国投資家の動向に左右されることを踏まえれば、日本への影響も否定できないでしょう。ここへきて米国経済がやや回復の兆しがでているものの、ドル安による輸出回復が成長要因に含まれています。つまり、今の米国には世界経済のけん引するまでの力は欠けているようです。従って、欧州銀の不安定化により比較的順調な推移していたアジアを中心とした新興国の経済が失速すれば、世界経済にかなりのダメージを与えることが予想されます。
(注)内閣府『世界経済の潮流2011年下半期世界経済報告』、pp106-109、2011年。

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