2012年2月8日水曜日

拡大するM&A

円高を背景に大型のM&Aが相次いでいる。2012年12月29日付日本経済新聞朝刊に、2011年の日本企業による海外企業の買収が相次いでいる旨の記事がありました。規模順に抜粋するだけでも、武田薬品工業によるナイコメッド(スイス製薬、金額1兆1086億円)、三菱商事によるアングロ・アメリカン・スチール(チリ銅山、同2050億円)、キリンHDによるスキンカリオール(ブラジル・ビール、同3038億円)などの海外企業の買収があったとのことです。円高の中、海外企業は割安となっていますので、今こそがチャンスだと思っていますので、この流れは歓迎すべきでしょう。そして、この国内企業の買収劇により円高が抑制されているのではないかとのこと別の記事で指摘されていました。
 ならば、この国内企業による海外企業の買収は、国際収支統計の中でどの部分に現れてくるのかが気になるところです。財務省のホームページに「国際収支Q&A」がありましたので、その部分を引用します。以下引用文。
(1)「投資収支」とはなんなんですか。
投資収支は居住者と非居住者との間で行われた金融資産負債の取引を計上する項目であり、「直接投資」「証券投資」「金融派生商品」「その他投資」から構成されます』
以上の記述から、直接投資は国際収支統計の投資収支に現れていることとなります。そして、直接投資に関するものもありましたので、引き続き引用します。以下引用文。
(a)「直接投資」とはなんなんですか。
直接投資とは、ある国の投資家が、他の国にある企業に対して永続的な経済関係を樹立することを目的に投資するもので、直接投資関係(出資割合10%以上)を設立する当初の取引(株式等の取得)及び、その後の直接投資家と直接投資先の企業間で行われる全ての取引(増資、資金の貸借)が計上されます。
また、直接投資における「資産」と「負債」の区分は、直接投資家の居住性によってなされており、直接投資家が居住者である場合は、「対外直接投資(資産)」、非居住者である場合は、「対内直接投資(負債)」に計上されます。このように区分した上で、投下資本の形態により、「株式資本」(直接投資企業の株式や支店の出資持ち分の取得等を計上します。)、「再投資収益」(直接投資企業に留保された未配分収益のことをいい、一旦直接投資家に配分されたあとに、その直接投資家によって再び資本投下されたものとして計上します。)、「その他資本」(「株式資本」と「再投資収益」以外を指します。居住者(非居住者)による海外(国内)不動産の取得・処分などが含まれます。)に区分しています』
以上の記述で、直接投資というものの定義がよくわかりますね。投資収支には、「直接投資」以外に「証券投資」「金融派生商品」「その他投資」がありますが、データを見つけることができませんでしたので、直接投資と大きな乖離はなく、トレンドは概ね一致していると思われる投資収支と経常収支の推移を表したグラフを作成してみました。
図表(注1)から、2003年、2004年の例外を除き、経常収支と投資収支を一致した動きを示しています。企業が直接投資を行ったことにより、円高を抑制することができたという論調が同日の日本経済新聞朝刊のコラムにありました。しかし、投資収支が資産・負債の貸借取引であることから、為替に対してはニュートラルではないかという疑問が残ります(私はやはり経常収支の黒字こそが円高の要因であると思っていますので)。私の勉強不足もありますので、これ以上の言及は避けます。もっとも、グラフを作成して初めて分かったのですが、2003年と2004年の投資収支の黒字化(グラフではマイナス)(注2)の原因が気になりますね。特別な要因があったと考えられますが、資料不足でわかりません。趨勢的に円高が進んでいることから直接投資のトレンドに大きい変動がないとすれば、証券投資等で何か大きな出来事があったのかもしれません。
(注1)わが国の場合、通常、投資収支は赤字であり、経常収支との比較を考慮し、投資収支の赤字を黒字に置き換えてグラフ上表記しています。
(注2)このデータについては、『経済財政白書2011年版』、『日本経済2011-2012』(ミニ白書)の両方にてチェックしました。

0 件のコメント:

コメントを投稿