2012年2月23日木曜日

ユーロ相場の本格的回復になるか

21日に、ギリシャの追加支援策がやっと合意されました。それを受けてか、円に対するユーロ相場がやや持ち直しています。22日には一時的かもしれませんが、1ユーロは106円台へと突入しています。このユーロ高は、追加の金融緩和を決めた円の独歩安ではなく、ドルに対してもユーロは上昇しています。
 右図は、今年に入ってからのユーロの対円、対ドル相場を示したものです。東京市場の終値ベースですが、1月16日に記録した対円では97.22円、対ドルでは1.2661ドルを底に大幅反転しています。一時は、悲観的な観測が強く、1ユーロ=90円程度まで下落する可能性も示唆されたのですが、ようやく落ち着きを取り戻したようです。
 今回の合意は、EU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)の間で取り交わされたもので、これで昨年10月に続く2度目のギリシャへの金融支援となります。これで、各国政府や民間の債権者は、前回の合意内容よりも、大きな負担を強いられることとなります。この合意には、ギリシャの債務危機の抜本的な解決はできないという判断が背景にあります。合意形成の過程で、ギリシャの政府債務の名目GDP比率は、2020年時点で129%にとどまるとの推計があり、さらなる負担増を求め、交渉が難航したことが伺えます。
 右表が、ギリシャ向け第2次金融支援の主な内容です。名目GDPに対する比率は、現時点で160%とされており、それを120%するための労力が如何に大きいかがよくわかります。これだけのことをしたとしても、依然として120%です。イタリアの同比率119.6%を上回っていることに驚きを感じます。ギリシャの債務残高は、2011年第3四半期時点で3,472億ユーロ(ユーロ統計局発表)で、1ユーロ=106円として日本円換算すると36兆8千億円です。この規模の債務の処理で、これだけの問題が発生しているのですから、1,000兆円にものぼる日本の債務残高は処理不可能な水準であるといえます。幸い、日本の場合、現時点では国際的なスキームを組む必要はなく、債権者である国内の投資家に負担してもらうだけですから、国際問題へと発展することは極力回避できます。わが国政府によるすみやかな対応が求められるとろこですね。
 因みに、2012年2月22日付日本経済新聞の記事には、私が知らなかったデータがありました。それは、民間債権者が保有しているギリシャ国債の額面ベースでの保有額です。記事によれば、保有額は約2,000億ユーロにも達し、実にギリシャの政府債務の6割弱にも及ぶことです。債務危機が発生してから、中央銀行によるギリシャ国債の購入があったことから、当初の割合はもっと大きかったことが推測されます。今回の合意により、50%から53.5%へと負担率がアップされたことにより、民間の負担は1,000億ユーロから1,070億ユーロへと拡大したことになります。要は、ギリシャの債務危機は、そもそもは民間の問題であって、それに巻き込まれる形で、EU、ECBなどが対応に迫られているのが実情なのでしょう。ギリシャ政府による不正な会計処理があったという事実はありますが、リスクを考えず、ギリシャのような国に無節操に投資を続けた民間債権者のモラルハザードこそが、ギリシャ債務危機の根本的な問題だったといえます。
 この合意で、3月20日に145億ユーロの国債償還を控えるギリシャの債務不履行(デフォルト)は避けられると予想されています。しかし、第3次の支援はないというのが、ドイツの本音です。第3次支援が必要という話となれば、ギリシャのユーロ離脱、そしてギリシャのデフォルトが現実味を帯びてきます。

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