2012年9月18日火曜日

日本で稼ぐ外資系生保とプレゼンスの低下する「かんぽ生命」

 私は、生命保険は基本的に捨て金だと思っています。だから、掛け捨ての保険にしか入っていません。しかし、簡保だけは例外的に小額ですが契約しており、満期になれば返戻金が手に入りますし、途中で死亡した場合、死亡保険金が遺族の手に入ります。それでも葬式代が出せればという程度の認識であり、私の資産形成の中では極めて小さいというのが実情です。
 もっとも、日本国民全体からいえば、生命保険は大切な金融資産であり、家計の金融資産に占める生命保険のウェートはかなり高いとのことです。しかし、バブル崩壊前は、結構な配当金が出ていましたが、崩壊後は生命保険の配当金は基本的に出ないという認識であり、国民の持っている金融資産が適切に運用されていないと今では考えています。特に、20年物などの超長期の日本国債を生保などが積極的に、かつ独占的に購入することで、むしろ国債の利回りの低下に関与、政府の財政規律を完全に失わせる要因となっています。この一連のブログでも、かつて規律のない財政運営を行っていたスウェーデン政府に対して、スウェーデンの大手生命保険が抵抗したことについて書きました。財政規律を健全化しなければ、この大手生保は、スウェーデン政府の発行する国債は一切購入しないと宣言、慌てた同国政府はこれに従う形で財政規律を取り戻しましたという話です。日本の場合、大手生保といい、かんぽ生命といい、日本国債を積極的に購入し続けており、むしろ日本政府の財政規律を完全に喪失させている存在になっています。
 それでも、特別会計の財源であったかんぽ生命保険の総資産の残高は、2001年の127兆円をピークに減少傾向に入り、2010年には97兆円まで減り、大台の100兆円をついに下回りました。かんぽ生命保険が民営化された後も、減少傾向を示している原因はよくわかりません。しかし、右図をみていると、銀行などが積極的に生命保険を販売し始めた頃とほぼ同時期に、かんぽ生命の総資産が減少し始めた気がします。今後、引き続きかんぽ生命の総資産は減少することが予想されています。これは国債の安定購入策先が少なくなっていることを意味することから、政府は早急に財政規律を回復させることが求められているのです。
 一方で、外資系の日本での活動に関する記事が2012年9月11日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。日本での生命保険の保険料収入のシェアは、国内系58.2%、かんぽ18.7%、損保系3.8%である中で、外資系の生命保険のシェアは19.2%にも達しており、日本では稼いでいるという実態が分かってきました。もっとも、オランダの金融大手であるINGは日本の生命保険事業から撤退する方針を表明、勝ち組と負け組がはっきりしてきた結果ではないかと考えています。記事の題目は『欧米生保、日本が稼ぎ頭。来店型など新販路に対応』です。以下引用文。
 『米アメリカンファミリーや仏アクサなど欧米の保険大手が日本の生命保険事業で収益を稼ぐ構図が鮮明になっている。営業利益全体に占める日本事業の割合は直近で決算で2〜8割。来店型店舗や銀行の窓口販売など新たな販売網に迅速に対応したことが事業拡大につながっている。欧州債務危機の影響で欧米の収益は伸ばしにくく、日本頼みが続きそうだ。(中略)
 日本は米国に次ぐ生保大国。契約者の平均寿命が長いことが高い利益率をもたらしており、欧米の保険大手はアジアの中で日本市場を重視している。外資系の日本のシェアは12年3月期に計19.2%にまで高まり、かんぽ生命保険を逆転した。
 00年までがん保険や医療保険は外資や中小保険会社しか販売できず、外資はこうした分野でのシェアがもともと高かった。国内生保の破綻が相次いだ1990年代後半以降は、破綻生保の受け皿となり、顧客基盤を広げた。外資の存在感が増しているのは国内勢の対応の遅れを示している』
 つまり、日本で稼いだ分は、何らかな形で海外への資金流出となります。ここにも、バブル崩壊の痕跡が残っており、失われた20年が、失われた30年となりそうな、日本の象徴的な存在ともいえます。記事によると、日本は米国に次ぐ、生命保険大国だそうです。米国と日本に共通し、欧州と違うといえば、欧州諸国と比べて、日米の社会保障は決して充実していない点です。将来に対する不安が貯蓄過剰に向かわせている実態がここにもあります。そして、国内の生命保険のプレゼンスの低下は、国債の安定的な消化機能が減退しているともいえます。日本は政府は財政規律の回復に向けた政策を進めるべきであり、残された時間はかなり少ないと言っても過言ではないでしょう。

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