2012年9月25日火曜日

シャープの経営危機、地域経済に与える影響は甚大

 これまで、このブログの中では、シャープの経営危機は、ある意味、国内の企業統合が進むことで、パナソニック、ソニーなどの他の家電メーカーにとってプラスであることを書いてきました。このプラス要因とは、もちろんシャープが持つ優れた技術力が他国に流出しない範囲であり、台湾の鴻海グループによる買収などの恐れが出てきた今では、マイナス面が大きくなってきたといえます。シャープによる自力再建が不可能ならば、速やかなる公的資金の注入などの施策も求められるところです。エルピーダメモリでの失敗は、常に国際的な競争が晒される製造業の企業再生が、日本航空など規制業種の再建と比べて格段に難しい作業であることを物語っています。
 そして、ここへきて問題となってきたのは、シャープの業績悪化に伴う地域経済に対する影響です。同社だけにいえることではありませんが、例えばマツダ、三菱自動車の経営状況が、広島、岡山両県に与える影響はかなり大きいように、シャープも特定の地域に影響を与える可能性が出てきました。以下は東京商工リサーチホームページ掲載のシャープの工場の主な立地場所です。
2012年9月24日付読売新聞朝刊に、シャープの業強悪化が与える地域経済に与える影響に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『シャープ不振、取引先に波及。全国8500社、受注減で人員削減も』です。以下引用文。
 『シャープの業績悪化に対する不安が取引先企業に広がっている。一部の企業はシャープからの受注減で人員削減に踏み切った。全国に広がる取引先は、経営再建の行方を固唾をのんで見守っている。
 東京商工リサーチによると、シャープ本体とシャープの連結子会社(13社)と直接、間接的に取引している企業は国内で約8500社に達し、従業員数は合計約420万人に及ぶ。
 シャープ製携帯電話の組み立てなどを受託している電子機器メーカーのタカヤ(岡山県井原市)は8月末に希望退職の募集を始め、9月15日までに従業員(約750人)の約4分の1にあたる176人が応じた。昨秋から受注が激減し、昨年11月と今年4月には2工場を閉鎖した。「受注回復のめどが立たない」との判断だ。
 シャープに部品を納入してきた大阪市内の樹脂製造会社の経営者は「シャープが開発中だった案件を中止したと聞いた」と不安げだ。受注減とシャープの事業縮小に対して「難局を乗り越えれるのか」と動揺を隠せない』
 シャープの経営危機の余波が大きいのが、主要工場が集中立地する地域であり、広島県、三重県、奈良県に加え、大阪府です。広島県、三重県、奈良県は県全体の経済規模に比して、かなりの数のシャープの従業員が存在しており、直接、間接的な影響が大きいものと予測されます。一方、大阪府は、従業員数も多いことながら、一次仕入れ先が東京都の次に多く、連鎖倒産、従業員の減少のダブルパンチを受けることとなります。
 政府による公的資金の注入や産業革新機構などによる再生プランの策定が急がれるところです。しかし、厳しい国際競争に晒されている製造業の再生は、公的資金を注入して業況が回復した今の銀行や日本航空とは事情は異なります。回復できたのは、銀行、日本航空が典型的な規制業種だからです。債務をカットし、年金をカットすれば、自ずと業績は回復するのです。製造業の場合、時間が待ったなしであること、革新的な再生プランの策定が求められるから難しいのです。もっとも、革新的な再生プランが思い浮かぶのならば、他の企業が既にやっているでしょうし、プラン策定に関わっている当人自らが事業展開を行っているかもしれません。世界の有力な製造業の責任者たちは、他社を出し抜く革新的にプランを常に考えながら行動する、プロの中のプロです。だからトップ企業のトップになったのです。自分がトップをつとめてない企業の再生を手がける公的機関など勤めるはずがないのが実情です。エルピーダの失敗はそこにあり、シャープが後を追わないことを切に祈っています。やはり、ルネサスエレクトロニクスにもいえますが、株価が低迷している中で厳しいのですが、株式交換などの手法を使った国内の企業単独による買収がベストでしょう。

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