2012年9月30日日曜日

新日本製鉄と住友金属工業の経営統合と厳しい現実

 ついに、大型の企業統合が実現しました。粗鋼生産、国内1位の新日本製鉄と同3位の住友金属工業が2012年10月1日に経営統合します。これで、世界第2位の粗鋼生産量を誇る鉄鋼メーカー、新日鉄住金が誕生するとともに、各国間の貿易が拡大する傾向の中で、国内での寡占化の問題ではなく、これは、国際競争力の維持を意識した統合であり歓迎すべきことでしょう。これ以外にも、多くの分野での日本企業も徹底的に経営統合を進めるべきでしょう。公正取引委員会も国内市場での寡占・独占の問題を第一に考えるのではなく、国際競争力を維持できるかどうかを第一に考えた施策を求められているのです。予断ですが、このブログを書くまで知らなかったのですが、三菱重工業と日立製作所の経営統合はガセネタだったようです。
 しかし、新会社、新日鉄住金には厳しい船出が待ち受けています。待ち受けているのは、鉄鋼最大手のアルセロール・ミッタル(注1)(ルクセンブルク)ではありません。最大の強敵は、中国鉄鋼メーカーでの過剰設備であり、中国鉄鋼メーカーの設備の稼働率の低下から鋼材価格は下落しているようです。1トン当たりの鋼材価格は、5月比で大きく下落、日本で▲10%(▲はマイナス)、欧州は▲17%、米国は▲10%、インドは▲19%と軒並み下落、そして中国に至っては▲20%ものマイナスを記録しています(注2)。他社との競争はともかく、この世界的な過剰設備に起因する鋼材価格の下落が、鉄鋼メーカーの最大のネックとなっているのです。中国の粗鋼生産量は、いまや世界の40%以上を占めることから、世界経済の減速がもたらす鋼材価格の下落は、今後も続くものと予想されます。

 新日鉄住金に関する記事が2012年9月28日付読売新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。この記事の中で、少しばかり気になった部分があります。それは、電磁鋼板に関するものです。電磁鋼板とは、発電所やモーターなどに使われる高度な技術を必要とする鋼材で、日本企業が強みを持つ分野だそうです。その技術を、OBを通じて不正に流出したとして、新日鉄は今年4月に、韓国ポスコを提訴したとのことです。また、韓国企業か、という印象です。アップルとの訴状合戦でもいえますが、人の技術を盗むばかりで、自らの力でもって新しく、かつ革新的な技術をつくる文化が、きっと韓国には根付いていないのでしょう。同国は、先進国グループに入る依然の問題であり、中国で平然と流通するコピー商品と同レベルの企業文化しかないのが現実です。記事の題目は『新日鉄住金、厳しい船出。中韓勢と競争、見えぬ海外生産』です。以下引用文。

 『10月1日に新日本製鉄と住友金属工業が統合し、鉄鋼業で世界2位の新日鉄住金が発足する。世界一の鉄鋼メーカーとなった新日本製鉄誕生から42年。2度目の大再編で誕生する新会社は粗鋼生産量で2倍のアルセロール・ミッタル、ほぼ同規模の中国、韓国勢との競争にさらされており、直面する課題は多い。(経済部 山下福太郎、秋山洋成)(中略)
 今年4月、鉄鋼業界をとりまく経営環境の変化を象徴する出来事が起きた。
 新会社の最大の取引先であるトヨタ自動車の主要な取引業者で作る業界団体「協豊会」に、海外の鉄鋼会社として初めて世界第4位の韓国ポスコが入会した。同会はトヨタの資材調達担当の経営陣と情報交換ができるメリットがある。トヨタと新日鉄は互いに業界の雄として、鋼材価格の交渉を続けてきたが、ポスコの台頭は今後の価格交渉に微妙な影響を与える可能性がある』
 もともと過剰な高品質の鋼材を必要としない新興国の自動車向け鋼材はともかく、日本国内の造船重機大手の三菱重工も中国や韓国の鋼材を使い始めているそうです。これに加えて、中国の鉄鋼メーカーの過剰設備です。鋼材価格の引き下げなど要求など、新日鉄住金は、設立当初から苦戦を強いられることが予想されます。一方で、企業規模の拡大は、鉄鉱石や原料炭の輸入において主導権を握ることができます。もっとも、ヴァーレ、リオティント、BHPビリトン鉄鉱石大手などが提示する鉄鉱石価格は下落しているとされており、現時点では、原料調達の面で企業統合の優位性を発揮する可能性は低いといえます。ならば、道は一つです。新日鉄住金が進むべき道は、絶え間ない技術の革新を追求することです。欧州、中国、韓国などの企業に技術情報を渡し過ぎた今、遅すぎるともいえますが、革新的な技術をつくり続けていた企業文化は残っています。新日鉄住金が、苦境を生き残り、新たなステップへと向かうことが期待されます。
(注1)記事によれば、アルセロール・ミタルという表記もあり。
(注2)2012年9月13日付日本経済新聞朝刊より引用。

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