2012年9月29日土曜日

環境への負荷が大きい石炭火力発電への回帰

 今年は、北極海の海氷面積が過去最小となったことが判明しました。宇宙航空研究開発機構が9月20日に発表したデータによれば、マイクロ波放射計が観測した北極海の海氷データを解析した結果、今年の海氷面積は、8月24日に421万平方キロメートルに縮小、それまでの観測史上最小記録を更新したそうです。そして、その後、海氷面積は減少を続け、9月16日には349万平方キロメートルまで縮小しました。北極海の資源開発は航路の開通などで盛り上がっていますが、一方で地球温暖化の危機は確実に進行しているといえます。今年の米国、ロシア、ウクライナ、インドなど穀倉地帯の干ばつ被害は、深刻であり、これも地球温暖化の影響によるものと考えてもいいでしょう。


 こうした中で、日本政府は石炭火力発電所の新増設の再開について本格的に検討に入ったようです。私としては、今更石炭火力への回帰はいかなるものかと思っています。地球温暖化への影響を第一に考えた場合、石炭よりも天然ガスの方が環境に優しく、シェールガスの採掘が本格化しており、今後の低価格の天然ガスが手に入る可能性も出てきており、埋蔵量が豊富であること以外は、石炭の優位性は全くないといえます。石炭火力に関する記事が2012年9月25日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『石炭火力の新増設再開、政府検討、環境評価見直し』です。以下引用文。

 『政府は環境への負荷の大きさから難しくなっていた石炭火力発電所の新増設を認める検討に入る。年内にも発電所の環境影響評価(アセスメント)を見直し、どのような場合に建設を認めるかをわかりやすくする。アセスの審査期間も短くし、民間事業者の投資を促す。東京電力は当面、原子力に代わる電源として石炭火力を新設する方針で、来年にも新たな基準の下でアセスを申請する見通しだ。
 経済産業省と環境省が近く発電所のアセス見直しで協議の場をつくる。年内にもアセスの指針の大枠を固め、来年中の実施をめざす。
 具体的にはどのような環境性能の設備ならば認められるのか、二酸化炭素(CO2)排出量の取引でカバーできるのかといった点を明確にする。審査を通った過去の事例も示し、事業者の参考にしてもらう。ただ、環境省は石炭火力の容認には慎重な姿勢で、議論は曲折も予想される』

 今後の原子力発電の比率に関して、国民的な同意が得られていない中で、すぐさま石炭火力への依存を高めることはできません。原子力発電の停止により、電力事業者の財務体質は弱体化しており、無駄な投資をすることは許されていないのが実情でしょう。国家のエネルギー政策は、社会保障のあり方や橋りょう、道路などの整備などと比べて優先される課題です。エネルギー政策で失敗して滅んだ国は、過去に多くありますし、米国や中国などもエネルギー政策を国家戦略の最優先課題にしています。上図は、経済産業省資源エネルギー庁作成の『エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)』(2011年)掲載のデータから作成したグラフです。日本の1次エネルギーに占める石炭の割合は22%と、アメリカ、ドイツと同水準、英国、フランスと比べてかなり高くなっていることが図から読み取れます。2009年のデータですので、原発は稼働しており、エコ大国と言われた日本が、石炭の依存が高いことには驚きました。この比率を高めるということは、時代の流れに逆行しているともといえ、速やかなるエネルギー政策の決定が求められるのです。

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