衝動買いに近いところもありますが、記事の内容をチェックしていると、まず驚いたのは図表の多さです。しかも、数字入り(つまりデータを加工し、引用することができる)の表やグラフで誌面が埋め尽くされています。ここで、図表等を満載し、よくない意味で、読者の購入意欲を刺激するという編集者の意図があること直感的に感じました。ところが、図表で埋め尽くされている記事の中で、大変興味がそそられる記事があるのに気づきました。それは、経営の話でもなく、投資の話でもありません。その記事は、なんと経済学を勉強したことがある人ならば、知っていなければならない基本的なことであり、かつ現在の日本経済が置かれている状況を簡潔にまとめたものでした。"経済問題を考える"上で大切なことなので、早速に引用させていただきます。引用元は、『週間ダイヤモンド』2011.19特大号の『データフォーカス』という連載記事で、題目は『"双子の赤字"に陥らないために財政健全化と成長戦略の実行を』(注)です。以下引用文です。
『少子高齢化の影響で、貯蓄投資バランスをめぐり、トレンドの大きな変化が始まった。まず、一国全体の設備投資が資本減耗を下回り(国内純投資の符号はマイナス)、純資本ストックは減少に転じた。潜在成長率はゼロ近傍まで低下した可能性がある。次に、国民純貯蓄の符号もマイナスに転じた。民間純貯蓄はプラスを維持しているが、政府純貯蓄の赤字幅がそれを上回った。富の蓄積過程は終了し、取り崩しが始まったのである。一連の動きが2009年に観測されたのは、リーマンショックの影響もあるが、トレンドを分析すると数年先に生じる現象が大きなショックで前倒しされたと推測される。』次に、民間純貯蓄の運用が、財政赤字(国債)・民間純投資(民間純ストック)・経常黒字(対外純資産)であったのが、2009年からは国債への投資が引き続き持続する一方で、収益性の低い国内純資本ストックが取り崩され、収益性の高い対外純資産へと向かったとしている。そして、この結果が、長期金利の低位安定と円高が続いている原因となっているとのことで、上記の資金循環メカニズムの中で経常黒字が維持されていると(河野)は指摘している。
ここで注意しなればならないのは、我が国は、国の残高債務が900兆円であるのに対して、民間の貯蓄残高が1400兆円あるから大丈夫だという論調をよく目にすることです。ストックとフローのことをごちゃ混ぜに語っているケースが多いですね。現在の状況が危機的なのは、本来的な意味でのフローの国内貯蓄で、フローの財政赤字や民間設備投資を賄い切れなくなり、どうしても海外の貯蓄(つまり経常収支の赤字)に依存しなければならなくなるということです。そうなれば、国内金利は急上昇し、さらなるデフレと円安によるインフレーションが日本経済を襲う可能性があるからです。これは、債務残高200%超を経験した第二次世界大戦後のイギリスが物語っています。その後の聚落は、サッチャー政権を登場するまで続きました。
最近、私は経済学の書籍を読むことがなく、新聞の経済欄ばかりで済ましているという生活を日々送っています。この記事を読んだ後、慌てて経済学の入門書を読んで、上記記事の言葉のひとつひとつをチェックしている始末です。やはり、継続的な学問への探求心が必要ですね。
(注)河野隆太郎、BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト
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