2012年1月23日月曜日

鉄は国家なり

産業革命以降、「鉄は国家なり」といわれ、鉄の生産量こそが国力そのものであるされて久しいです。私の記憶では、生産量第1位の地位にのぼりつめたのは国は、イギリス→ドイツ→米国→日本→中国の順で移り変わっています。日本が1位の時期がかつてあったこと、現在の米国と中国の経済規模の差があることを考慮すれば、時の経済力1位の国とは必ずしも一致していませんが、国の経済の勢いと鉄の生産は一致するようです。日本では鉄は「産業のコメ」(注1)ともいわれ、経済成長に必要なインフラ整備に不可欠な資源と位置づけられています。急速にインフラ整備を進めている中国の生産量が、現在世界最大であるのは理解できます。さらに、日本とは異なり、人口の絶対数で多い上、国土も日本の30倍近くあることから、鉄の需要や生産は日本とは比べられない規模となるでしょう。
2012年1月21日付日本経済新聞朝刊に「日本の粗鋼生産」の速報値が発表されていました。それで、早速、日本の粗鋼生産の推移を調べてみました。リーマンショックの翌年である2009年の大幅な減少は、世界経済の低迷による需要減少によるものです。一方、2011年の減少は、円高とタイの洪水による輸出減少に、3.11の東日本大震災による生産停止というサプライサイドの要因が加わったものです。私が知っている限りでも、震災による影響で、新日鉄の釜石製鉄所、住友金属鉱業の鹿島製鉄所、JFE傘下の東北スチール(注2)などが操業停止に追い込まれました。これに、タイの洪水と急速に進む円高が加わったことになります。まさに、ダブルパンチですが、前年比1.8%の減少にとどまったのは、確認したわけではありませんが、中国への輸出が順調だったからではないでしょうか。
 それでは、2012年の見通しはどうでしょうか。最大のトピックスは、日本での業界1位と3位である新日本製鉄と住友金属工業の合併です。合併比率は、新日本製鉄1に対して、住友金属工業0.735です。新日鉄にとって高すぎるというイーメジでしたが、住友金属工業の株価に現れていない技術力を評価した上での比率だそうです。この結果、新日鉄は特損を計上しているようです。
そして、中国の需要がどうなるかです。欧州危機はともかく、中国経済は引き続き絶好調のようです。中国財政省発表の2011年の国と地方を合わせた中国財政収入が前年比24.8%増加したという記事が、2012年1月21日付日本経済新聞朝刊に掲載されていました。企業所得の増加を背景にしたもので、これは、税収増による国の財政政策の余地がまだまだあることを意味しており、日本の粗鋼生産にはプラスに寄与すると思います。上記のグラフは、日本と中国の粗鋼生産の推移を指数化したものです(注3)。中国における粗鋼生産の規模のもさることながら、その伸び率も凄まじさを教えてくれます。鉄鉱石の価格が高騰していますが、やはり中国の需要拡大が主因ですね。
(注1)鉄が「産業のコメ」といわれるのに対して、銅は「産業の血管」といわれる。
(注2)東北スチールは電炉メーカー。
(注3)2003年における日本の粗鋼生産を1として算出。

2 件のコメント:

  1.  同じ鉄鋼メーカーでもブランド力のある日立金属のようにアカぬけてほしい
    がな。

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  2. 島根大学の客員教授である久保田邦親博士らが境界潤滑(機械工学における摩擦の中心的モード)の原理をついに解明。名称は炭素結晶の競合モデル/CCSCモデル「通称、ナノダイヤモンド理論」は開発合金Xの高面圧摺動特性を説明できるだけでなく、その他の境界潤滑現象(機械工学における中心的摩擦現象)にかかわる広い説明が可能な本質的理論で、更なる機械の高性能化に展望が開かれたとする識者もある。幅広い分野に応用でき今後48Vハイブリッドエンジンのコンパクト化(ピストンピンなど)の開発指針となってゆくことも期待されている。

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