グラフの見方を説明します。まず、単位である1枚は1万通貨単位を示します。レバレッジをかけている取引ですので、実際の投資額は分かりませんが、例えば米ドルで10倍のレバレッジならば、米ドル1枚の投資は実際には1000米ドルだけですみます。そして、売り建玉とは、外貨の売り建をしていることで、その逆は逆です。米ドルで考えた場合、1枚の売りをすることは、1万米ドル相当の外貨の売りをかけていることを表します。そして、この時、レバレッジ10倍ならば、1000米ドルのみ投入だけでいいことになります。仮に1米ドル=100円から1米ドル=90円となったならば、100万円-90万円=10万円の利益が発生、10万円の投資額が20万円となって戻ってくることになります。FXは先物と基本的に同様ですので、米ドル相場が下落し、その時に売りを建てていれば、利益はプラスになります。私は、もっぱら現物投資ですので、基本的に相場が下がって儲かるということはありませんが、FXは相場が下落していても儲けることができるというのが最大の特徴です。
グラフから読み取れるのは、対円では、全ての通貨で、買い建玉枚数が売り建玉枚数を上回っていることです。つまり、外貨が日本円に対して上昇した場合、利益が出るというロングポジションにあるいうことです。上記で有益な情報であると書いたのは、FX取引には必ず反対売買が発生するということです。つまり、買い建玉が売り建玉を大きく上回っているということは、将来の外貨売りを示していることになり、円相場の急落はないことがわかります。どの水準で購入したかという詳しいヒストグラムが手に入れば、より詳しいリサーチができると思います。
『週刊ダイヤモンド』2011.11.26号で、野口(注)が政府・日本銀行による10月31日付けの為替介入に否定的な見解を示し、介入はFX取引を行っている投機家たちを利するだけであると、かなり強めの論調でコメントを寄せています。以下記事の一部引用です。題目は『5時間で300億円超! FX投機で空前の利益』です。
『私は、これまで 「FXは危険な投機だからやめた方がよい」と言い続けてきた。しかし、政府がこういうことをやってくれるなら(為替介入のこと)、話は全く別だ。仕事などほっぽらかして、一日中為替動向に全身全霊を投入したらよい。そして、日本政府が介入に踏み切ったと見たら、ただちにドル買い注文を入れる。
「市場は介入を警戒している」と報道されている。とんでもない。全世界のFX投機者は、日本政府が次のぼろ儲けの機会をいつ提供してくれるかと、一日千秋の思いで待っているのだ』私も現物投資が原則ですので、FX取引に対しては否定的です。事実、外貨の相場が上がると見せかけて、外国人投機家は逆に投機的な円買いをして、FXの反対売買が自動的にかかるシステムが対応できないほどの円相場の急上昇をもたらすということが現実に起こっています。この結果、FX取引者に証拠金以上の損失を与え、逆に円の投機売りをした外国人投機家は莫大な利益を手にするという手法があるそうです(これを「ロスカット狩り」という)。野口の記事は、本質的には政府・日本銀行による無意味な介入を批判したものだと思います。しかし、自国通貨高に悩まされていたスイスが、スイスフラン高を阻止できたのと違って、現在の円高水準は厳しいです。スイスは、スイスフラン高に対して無制限の介入を実施すると宣言したことで、スイスフランの独歩高を阻止したそうですが、日本の場合、主要通貨の一翼を担っているだけに、このような為替介入ができないということがネックになっています。
(注)野口悠紀雄、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問。
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