現在は、イニシアチブが発表された2009年9月当時とは様変わりし、中長期的のみならず、短期的にもエネルギーのあり方が活発に議論されており、しかもLNGを中心とした化石燃料供給先の確保が重要課題となっています。ここへきて、米国とイランの対立もあって原油価格の代表的な指標であるWTIが1バーレル当たり100ドル前後まで上昇、イランの出方次第ではさらなる上昇も懸念されているところです。
それでは、世界経済やエネルギーシェアは、今後のどのように変化するのでしょうか。まず、世界経済です。IMFの資料によると世界のGDPに占めるEU、米国、日本のシェアの合計は、2008年の61%→2015年の52%へとなり、9ポイント低下することが予想されています。グラフのその他にカナダ、豪州などの先進諸国も入っていますが、おおまかなトレンドはつかめるでしょう。つまり、BRICsや途上国のシェアが高まることです。2010年の予想ですので、昨今のユーロ圏の混乱を考慮すれば、2015年時点のEUのシェアは予想よりも低い水準にとどまる可能性もあります。また、円高でドルベースで考えた日本のシェアは高いものの、財政危機→円安という方向へと進めば、日本もシェアもさらに低下する恐れがあります。
エネルギー消費も同様の傾向がみられます。IEAの資料によるとEU、米国、日本のシェアの合計は2008年の37%→2030年の28%へとなり、11ポイント低下するとされています。GDPと比べて低下幅は大きいですが、これは双方の資料の出所が異なり、比較する年が15年もずれていることが主因です。しかし、GDP、エネルギー消費とも同様の傾向を示しており、ともに先進国のシェアが低下する一方で、BRICs、途上国のプレゼンスが高まることが予想されます。特に、経済発展著しい中国の経済発展の程度及びエネルギーの消費構造の変化次第では、予想を上回る変動の可能性も否定できないでしょう。
郭(2011)(注1)は中国のエネルギー事情を以下の通り示している。以下引用文。
(注1)郭四志『中国エネルギー事情』、岩波新書、2011年。
(注2)資源エネルギー庁『総合エネルギー統計』より。一次エネルギー総供給とは、国内での最終エネルギー 消費を賄うため利用されたエネルギー量を、投入された化石エネルギー源の量や、利用された核エネルギ ー、自然エネルギーの量で間接的に算出したもの。
(注3)インドネシアは、原油生産の低迷から2009年9月にOPEC(石油輸出国機構)から脱退している。
郭(2011)(注1)は中国のエネルギー事情を以下の通り示している。以下引用文。
『中国のGDPは(国内総生産)構成で見ると、第二次産業の工業割合は53%(2009年)を占めており、その中のほとんどが、鉄鋼、石油化学、機械、セメントといった重化学産業である。そして重化学産業は、中国の経済成長の主なエンジンとして、その成長を牽引してきている。工業に占める重化学工業の比重は、1998年の57.1%から2009年には70%以上に上昇している。この重化学産業依存型の経済成長は、エネルギー消費の莫大な増加をもたらした。中国の産業構造がエネルギー多消費型の重化学工業に偏重していることが膨大なエネルギー消費の原因としている。また、戦後の高度成長を体験した日本と同様に都市化及び消費行動の変化により、引き続き膨大なエネルギーを消費し続けることを示唆している。図は、単位GDP当たりの一次エネルギー総供給(注2)の国際比較を示しています。ロシア、インドネシア(注3)など主要な原油生産国は別として、インド、中国は経済規模の割にエネルギー効率が低いことがわかります。中国に加え、インドの経済発展のよってエネルギー需給のバランスが崩れ、再び原油価格の急騰招くかもしれません。
中国のGDP総額は、78年の3654億元から09年には33兆5353億元に増加し、30年余りで92倍まで拡大している。それに伴い、エネルギー消費量は、6億トンから、31億トンにまで増大した』
(注1)郭四志『中国エネルギー事情』、岩波新書、2011年。
(注2)資源エネルギー庁『総合エネルギー統計』より。一次エネルギー総供給とは、国内での最終エネルギー 消費を賄うため利用されたエネルギー量を、投入された化石エネルギー源の量や、利用された核エネルギ ー、自然エネルギーの量で間接的に算出したもの。
(注3)インドネシアは、原油生産の低迷から2009年9月にOPEC(石油輸出国機構)から脱退している。
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