2012年8月13日月曜日

スペインの不動産バブルの崩壊と失業率

 最近では、スペインの不動産バブルが崩壊したという報道や新聞記事をよく目にします。この影響を受けて、スペインの銀行が多額の不良債権の抱えるに至りました。スペイン政府は、スペインの大手銀行であるBankiaに公的資金を注入、銀行部門の再建に窮しているとのことです。そして、この政府による銀行への資本注入は、さらなる同国の財政赤字の拡大を生み、結果としてスペイン国債を多く保有するスペインの銀行の資産が劣化、銀行経営をさらに悪化させるという悪循環に陥っています。この悪循環を断ち切るため、6月29日のユーロ圏17カ国首脳会議で、安全網であるESM(欧州安定メカニズム)を使って各国政府を経由せず、銀行へ直接資本注入することに合意しました。これを受けて、スペインの国債はやや持ち直したのですが、2012年8月4日時点で10年物の利回りが6.77%と危険水準である7%を少しばかり下回っています。しかし、一進一退という事態が続いており、根本的な問題解決には、ECB(欧州中央銀行)と協力するとともに、欧州各国政府の強い指導力の発揮が期待されるところです。
 こうした中で、スペインのバブル崩壊に関する記事が『ニューズウィーク日本版』2012年8月8日号に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『スペインに増殖する「死の町」』です。この記事には、多くの写真が同時に掲載されています。その中には、人の住んでいないカスティーリャ・ラ・マンチャ州の住宅開発地区、資金難で2009年に頓挫したサッカークラブ「バレンシアCF」のホームスタジアムの工事現場、建築途中の廃墟が立ち並ぶアンダルシア州マラガの写真があり、いずれも衝撃的なものです。スペインの不動産バブルが如何にすごかったのかを痛感させてくれる写真と思います。以下引用文。
 『2000年代前半、スペインの銀行は好景気と規制緩和の波に乗って誰にでも金を貸し、熱狂的な建設ラッシュを巻き起こした。郊外のプール付きの邸宅は「スパニッシュドリーム」ともてはやされ、地中海沿岸では巨大リゾート施設の建設計画がいくつも進行。スペイン国内の06年の住宅着工件数は、フランス、ドイツを合わせたより多い76万件に達した。
 だが08年の経済危機で住宅バブルがはじけると、すべてが一変する。ローンを払えない多くの人々が家を手放し、国内各地でゴーストタウンが出現。不動産価格の暴落で銀行は巨額の不良債権を抱え、救済の手を差し伸べざるを得ない政府の債務は膨れ上がる一方だ』
 スペインの不動産バブルの凄まじさは、同国内だけでの需要かどうかがやや疑問に残るところです。ニューズウィークの記事で記述されている年間76万戸は、日本とほぼ同水準の着工数です。日本の総人口が約1億2,800万人(2010年)であるのに対して、スペインの総人口は4,600万人(2008年)です。約3分の1の人口ですから、やや多すぎるとという感は否めないです。つまり、根拠となるデータはありませんが、ドイツ、フランス、イギリスなどスペイン以外の地域の人々がスペインの不動産を買い漁ったのではないかという疑念が生じています。これが事実ならば、欧州各国はスペインの救済に共同で対処する義務があると思います。
 これはともかく、この不動産バブルに伴い発生した建設ブームは、スペインの人々に多くの雇用の場を提供したことも事実です。建設部門における雇用者数のデータは、残念ながら2005〜2008年までのものしかありません。しかし、2006年、2007年と建設部門における雇用者数が増加するのに伴い、スペインの失業率は低下傾向を示しています。しかし、雇用者数が2008年に減少したのに伴い、2008年から失業率は明らかに上昇し、現在に至っていることが上図から分かります。現時点での雇用者数はさらに減少していることが推測され、これに伴い25歳未満の若年労働者の失業率が急上昇するという結果を招いたといえます。若い人々の失業は、国家としての損失です。日本にも言えることですが、若者が、将来に対する夢を持ってこそ初めて国家の運営が健全に保たれるのです。

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